1話5分で読めるギリシャ神話

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オイディプス王の娘アンティゴネの短い生涯

アンティゴネ
フレデリック・レイトン〈アンティゴネ〉

アンティゴネは自分の楽しみを持たず、母になる喜びを持つ前に死んでしまいました。オイディプス家の呪いとしか言いようがありません。セクハラの言葉に象徴される女性が強い今の時代には、こんな女性良くも悪しくもいません(私の知る限りですが)。

ソポクレスの三部作と言ってもいいオイディプス王関係から、アンティゴネの生涯を見てみましょう。

①オイディプス王
この劇には、アンティゴネは出てきません。が、呪われた家系が語られます。
②コロノスのオイディプス
父オイディプスと放浪して、アテナイのコロノスにたどり着いたところから劇は始まります。
※時系列的には、アイスキュロス作「テーバイ攻めの七将」が入ります。
③アンティゴネ
彼女の性格が、くっきりと現れます。

父オイディプスと放浪するアンティゴネ

テーバイのライオス王とは知らずに殺し、スフィンクスの謎〈朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものは何か〉を解き、後ライオス王の妃イオカステを妻としたオイディプス王。イオカステは、なんとオイディプスの実母であった。

テーバイに飢饉が起った原因が、ライオス王の殺人者が捕まっていないことであった。その真相が明るみに出た時、イオカステは首をくくり、オイディプスは自ら目を刺して盲目となり、テーバイをライオス王の殺人者として追放となった。追放を避けることができたかもしれなかったが、オイディプスの息子たちは手を差し伸べなかった。

オイディプス王】参照

そんな父オイディプスに付き添って諸国をさまよったのが、娘アンティゴネです。最後に着いたのが、テセウス王のアテナイ近郊のコロノスの森でした。この森は、かつて復讐の女神(エリーニュス)が慈しみの女神(エウメニデス)となった神域でした。

慈みの女神たち】参照

父オイディプスと娘アンティゴネ
〈父オイディプスと娘アンティゴネ〉Pinterest

オイディプス王とアテナイ王テセウス

オイディプス父娘がコロノスにたどり着いた理由は、オイディプスがアポロンから苦難の旅がエウメニデスの神域で終わると知らされていたからです。
オイディプスは語っています。
「(エウメニデスの神域で)不幸な生涯を閉じるべき場所はここだ。おれを受け入れてくれた者には恵みを、おれを追った者には破滅をもたらす」
アテナイのテセウス王は、オイディプス父娘を受け入れます。

弟が王になっている故国テーバイを攻める決意をした兄ポリュネイケス

そこに現れたのが、オイディプスの息子ポリュネイケス。彼は故国テーバイを弟エテオクレスと派遣を争い敗れ、アルゴスの宮廷に逃れていました。そこで挙兵し「故国テーバイを奪回するか、破壊するか」攻め込む直前でした。そんな彼は、オイディプスのアポロンのお告げを知り、父を受け入れれば、この戦いに勝てると父を迎えに来たのです。

しかし、ポリュネイケスは父に拒否されます。テーバイ攻めを知ったアンティゴネは、兄に止めるよう説得しますが、失敗に終わります。ポリュネイケスは、兄弟刺し違える運命を受け入れていたからです。

その後、テーバイのクレオンも同じ目的でオイディプスを訪ねます。クレオンは娘アンティゴネとイスメネを取り押さえ、帰国を迫りましたが、オイディプスは拒否し、テセウスに娘たちの救出を頼みます。テセウスはクレオンがアテナイの国境を出る前に追いついて、アンティゴネとイスメネを取り戻しました。

もはや、兄弟同士の争いを止めるものはなく、ポリュネイケスは6人の将とともに7つの門を持つテーバイに攻め込みました。テーバイの6つの門は、無事守られました。が、第七の門で戦ったポリュネイケスとエテオクレス兄弟は刺し違いました。

ポリュネイケスを弔うアンティゴネ
ニキフォロス・リトラス〈ポリュネイケスを弔うアンティゴネ〉

アンティゴネ、布告に反し捕まる。

この時、エテオクレス王の後を継いだクレオンは布告を出します。
「市を守ったエテオクレスはしきたり通り埋葬されるが、攻め込んだポリュネイケスの死体を弔ってはいけない、犬や鳥の餌にしたままに放置せよ。破ったものは死罪に処す」

この布告に逆らったのが、コロノスから故国テーバイに帰ったアンティゴネ。彼女は妹イスメネにも、兄ポリュネイケスの弔いを手伝うよう説得しましたが、イスメネは布告を破ることはできないと断りました。アンテゴネは一人で、兄ポリュネイケスの死体に砂かけ弔いました

死体の見張り役はクレオン王に叱咤されたことから、死体の砂を払い、誰が砂をかけにくるか様子を見ていました。アンテゴネは再び兄に砂をかけているところで、見張り役に捕まりました。彼女が捕らわれた後に、妹イスメネも捕まりました。クレオンは、姉妹をともに罰しようとしました。イスメネは姉と運命をともにしようとしましたが、アンティゴネからは「私一人がやったこと」と拒否されてしまいます。

天の掟か? 人間の法か?

クレオンは、アンテゴネを死罪にするのではなく、洞窟に閉じ込め、そのまま死なせるつもりでした。そんな父に対してアンティゴネの許嫁である息子ハイモンは神の摂理、民の本心はアンティゴネに同情していると説得します。が、クレオンは、突っぱねます。
「他人の意見で国を治めねばならないのか、国というものはその主権者に属するはずだ」
テーバイの預言者テイレシアスもクレオン王に助言しますが、かつてのオイディプス王と同じように耳をかしません。

なすすべもなく、ハイモンはアンテゴネの洞窟を訪ねます。
「嗚呼〜、ああ〜」と叫び声をあげました。
そこに、最後には長老たちから説得されたクレオンもやってきました。彼は息子ハイモンの叫び声を確かめるべく、洞窟に急ぎます。

そこにあったのは、アンティゴネとハイモンの死体でした。ハイモンがやってきた時、すでにアンティゴネは首をくくっていました。ハイモンは嘆き、剣で自身を刺していたのです。また、息子ハイモンの死を聞かされた母エウリュディケ(クレオンの妻)は、無言のまま館に入ると自害しました。

「ああ、なんという不吉を、私の思慮は生んだか」
クレオンは叫びます。