1話5分で読めるギリシャ神話

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コロノスのオイディプス 前編[ソポクレス作]

オイディプス王といえば、スフィンクスの謎〈朝は四つ足、昼は二本足、夜は三つ足で歩くものは何か〉を解き、その後実の母と夫婦になり、2男2女をもうけます。
その事実を知ったオイディプス王。自ら両眼をえぐり、テーバイを追放されます。付き添うのは、二人の娘アンティゴネとイスメネ。彼らの放浪は、目を覆うほどの悲惨な姿。
しかし、オイディプス王にはアポロンからの最後の神託があったのです。

コロノスのオイディプス
〈コロノスのオイディプス王と娘アンティゴネー〉

オイディプス、運命の地コロノスに

オイディプス
娘よ、我らが着いたこの土地は、何という町であろうか?
アンティゴネ
町を囲む城壁と塔は、まだ遠くにございます。アテナイは知っていますが、ここがどこかは存じません。長い道中でしたので、この石にお座りください。

(コロノスの男、登場)
アンティゴネ
他国のお方、ここがなんという町なのか教えてください。
コロノスの男
その前に、その座からどいてくれ。お前は慈みの女神たち(他国では「復讐の女神」)の禁制の場所にいる。
オイディプス
ならば、おれはどかぬ。その名前こそ、俺の運命の合言葉だ。この地はなんというところか。
※アポロンより、オイディプスは慈みの女神たちの神域で苦難の旅は終わると知らされていた。オレステスを追ってアテナイに来た復讐の女神が、恵みの女神になったのです。
→ 慈みの女神たち 前編[アイスキュロス作]−オレステイア三部作−

オレステスと復讐の女神
ギュスターブ・モロー〈オレステスと復讐の女神〉

コロノスの男
この地は、騎士コロノスにちなんだコロノスという。
オイディプス
なんという王が支配しておられるのか。その人の名は?
コロノスの男
テセウス王という。先代アイゲウスのお子だ。
オイディプス
誰か王に使いをやってくれるか。わずかばかりの親切をかけてもらえるように。
コロノスの男
では、私が町の人たちにそなたたちのことをどうするか聞いてこよう。その間、ここを動かぬようにな。
(コロノスの男、退場)

アポロンが告げたオイディプスの運命

オイディプス
おお、慈みの女神たちよ。アポロンは、かつておれにこう宣うた。
さすらいの終わる土地、そこで、おれは畏怖すべき女神たちの座、宿りの場所を見出すであろう。おれの不幸な生涯を閉じるべきはそこだ。おれを受け入れてくれた者には恵みを、おれを追った者、おれを送り出した者には破滅をもたらす。地震、雷、あるいはゼウスの稲妻が、その徴として現れるだろうと。
アンティゴネ
しいっ!あすこに年寄りたち(コロス)がやってきます。
(オイディプスとアンティゴネは身を隠す)
コロス
我らは女神たちの御名さえ口にするのを恐れているのに、ないがしろにする男が来たという、だが、どこにもおらぬが......。

(オイディプス、アンティゴネに手を引かれ現れる)
オイディプス
俺が、その男だ。
コロス
おお、見るも恐ろし、聞くのも恐ろい身なりをしている。
オイディプス
どうか、盲のおれを無法者とみなさないでくれ。
コロス
お前は、森の中、神聖な場所に入りすぎている。まずはそこから出てから話すがよい。
アンティゴネ
お父様、土地のしきたりどおりにせねばなりませぬ。
オイディプス
それでは、手をかしてくれ。
コロス
哀れなお人よ。お前の素性、名前を聞かせてくれ。
オイディプス
おれが誰であるかは、尋ねないでくれ。
コロス
なんだと。
オイディプス
恐るべきは素性。
コロス
話せ。
オイディプス
ラブダコスの一族の、哀れなオイディプス......。
コロス
お前があの人か?ならば、出て行け、立ち去れ、この土地から。
アンティゴネ
父に我慢がなりませぬなら、せめてこの不幸な娘を憐れんでください。
神の定めからは、逃れるすべはないのでございます。
オイディプス
父と母はおれの足にピンを刺し、おれを殺そうと山に捨てた。そんなおれが、知らずに父を殺し、実の母と交わり、子をもうけてしまった。この所業、実はおれが被害者なのだ。
この嘆願者を助けてくれ、アテナイの名に恥じぬよう。アポロンの神託により、この国の人に利をもたらす者として来たのだ。
コロス
神託なら、お前の述べた言葉は、うらやまねばならぬ、おれは、この地の支配者にその判断を委ねよう。あなたの名を聞けばな。
オイディプス
この地の主人はどこにいるのだ。おれの名は誰が知らせるのだ。
コロス
道中は長い、あなたの名は知れ渡っているのだから、支配者にもすぐ伝わろう。
アンティゴネ
おお、ゼウス様。なんと申しましょう。
オイディプス
アンティゴネよ、どうしたのだ。
アンティゴネ
あちらから、目を輝かして妹のイスメネがやってきます。
オイディプス
なんと、まことにイスメネなのか?
アンティゴネ
私の姉妹、もうすぐ声でわかります。

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