1話5分で読めるギリシャ神話

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救いを求める女たち 前編

ダナオスの娘たち
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス〈ダナオスの娘たち〉

アイスキュロス作『救いを求める女たち』

ダナオスとアイギュプトスは双子の兄弟。ゼウスに連れ去られたイーオーの子孫です。ダナオスには50人の娘(ダナイデス)がおり、アイギュプトスには50人の息子がいます。

アイギュプトスの息子たちはダナオスの娘たちに求婚。
しかし、身内の者を夫にするのを避けたい一心で、ダナオスと娘たちは断りました。それに腹を立てたアイギュプトスの息子たちは、実力行使に出ようとします。

ダナオスと娘たちはそれを察知して、ギリシャの遠い故郷アルゴスに向けて逃げ出しました。アルゴスはイーオーの故国です。それを追うアイギュプトスの息子たち。

海岸近く神々の像が並ぶ高みの神殿。
ダナオスの娘たち(ダナイデス)は神に救いを求める者のしるしとして、白い羊毛の房をつけたオリーブの杖を持っています。

ダナイデス
「ゼウス様、
父ダナオスと私たち一行を守ってくださいますように。
私たちは悪いことをして罰を受け、
故郷を追放になったものではなく
身内の者を夫にするのを避けたい一心、
アイギュプトスの息子たちとの無理強いな結婚を忌み嫌って、
ここにやってきました。
追っ手のアイギュプトスの息子たちが、
海で嵐に出会い、最後を遂げますように」

父ダナオス登場。
娘たちにこの国の支配者がやってくることを告げ、異国での振る舞いに注意する。

父ダナオス
「真実のこもった言葉と節度をもって、思慮深い面持ちで述べること。
くだくだしい饒舌は慎むこと。
お前がたは他国から逃れてきて
人の助けを求める弱い立場にあるのだから」

アルゴスの領主ペラズゴイ登場。
娘たちの集団の素性を確かめるべくやってくる。

ペラズゴイ
「外国の衣装をまとい、
誰の案内もつけずにどこからやってきたのか。
その杖は神にすがる者のしるしだな」
ダナイデス
「はい。あなた様は神職の方でしょうか、
それとも領主様でしょうか」
ペラズゴイ
「私はペラズゴイ。この国アルゴスの王だ。
そなたたちは」
ダナイデス
「私たちはアルゴスのイーオー様の子孫です」

ペラズゴイ
「なんと、信じられないことを言う。
よく説明してくれ」
ダナイデス
「ゼウス様とイーオーの子がエパホス。
その子がリビア、その子がベロスで私たちの祖父です。
ベロスの子が父でダナオスといいます。
そして、叔父がアイギュプトス。
私たち姉妹は50人おります。
叔父アイギュプトスにも50人の息子がおります」

ペラズゴイ
「しかし、なにゆえ、この地にまいって、
神々に祈っているのか」
ダナイデス
「アイギュプトスの息子との身内の縁組を嫌ってのことです」
ペラズゴイ
「一族どうしで結婚すれば、一族の力が増すのではないか」
ダナイデス
「結婚すれば、アイギュプトスは
私たちを奴隷のように扱います。
どうか、アイギュプトスの息子たちが要求しに来ても、
私たちを差し出さないでください」

ペラズゴイ
「それは大変な申し出。
新たな戦いにならなければ良いが。
私としては、まず先に全市民にこのことを知らせ、
協議せねばなにもできぬが」

ダナイデス
「あなたが王、あなたが国家ではありませんか」
ペラズゴイ
「あなたがたを守れば、
その相手アイギュプトスの息子と言ったかな、
彼らと争いになる危険がある。
しかし、願いをないがしろにもできない。
そなたたちを助けるか、助けないか、
途方にくれるばかり、恐ろしさに肝が冷える」

ペラズゴイは慎重派で、決して自分では決められぬ優柔不断の王であった。
一度館に帰り、ふたたび現れると......

ペラズゴイ
「思案はすませた...いや全く、私はかような争いは
避けたいと思っている...
私としては何らかの対処を決断するより、
あずかり知らぬで済ませたいが...」

煮え切らぬペラズゴイ王に対して、ダナオスの娘たちはきっぱりと言いきりました。

ダナイデス
「どうか私たちの最後の言葉をお聞きください。
新しい絵馬を奉納してから、首を吊りましょう」
ペラズゴイ
「何を言われるか。私を責める気なのか」
ダナイデス
「申し訳ありませんが、あなたのお考え、決断を
はっきりさせたかったのです」

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