1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。姉妹サイト〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

救いを求める女たち 後編

夫を殺すダナイデス
〈夫を殺すダナイデス〉

アイスキュロス作『救いを求める女たち』
ダナオスの50人の娘たちを、「ダナイデス」といいます。

「思案はすませた」と言っておきながら、どうにも煮え切らないペラズゴイ王。

ペラズゴイ
「争いは避けたいが、
祈る者をないがしろにするとゼウスの怒りも恐れ多い。
ダナオス殿、祈りの証であるこの若木の枝を
神々の祭壇に置いてこられるがよい。
わしの従者と一緒にな。
立場の弱いものに好意を抱き助けたいと思うのが世の習い。
市民も受け入れてくれるはずだ」
ダナオス
「王のお心は誠にありがたい。
かような保護者を見出せたのは、何よりの幸せ」

ダナオスは従者とともに退場。
その後、ペラズゴイ王もダナオスの娘たち(ダナイデス)に祭壇がある境内で休むよう言いおき退場。
しばらくして、ダナオスは戻り、娘たちに告げた。

父ダナオス
「アルゴスの民は、私たちに自由な市民として移住してよい、
何人にも侵されず、無理やり連れていかせぬ、と言いてくれた」

安堵するダナオスの娘たち。
が、ついにアイギュプトスの息子たちの船が近づいてきました。
ダナオスは敵の船を確認すると、助けを求めに市に出かけました。

ダナイデス
「縁組を迎えるなら、死神が来ればよい、初夜を迎える前に。
追っ手がもう、船から陸に上がってきた」

しばらくして、アイギュプトスの伝令使登場。

伝令使
「さあとっとと、船に行け。このろくでなしの乞食女」
ダナイデス
「お前たちは、本当に主人とともに嵐の海に沈めばよかった」
伝令使
「吠えたり、騒ぎ立てたりしないで、さっさと船に行け」
ダナイデス
「ああ、神さま、ゼウス大神さま、
この者たちを向こうへやってくださいませ」
伝令使
「さあ、境内から出てきて、さっさと船へ行け。
様ないと、髪をつかんで引きずっていくぞ」

しばらく同じやり取りが続いて、アイギュプトスの伝令使が実力行使し、彼女らの髪をつかもうとした時、ペラズゴイ王が従者を引き連れて登場。

ペラズゴイ
「こら、何をしようというのか。我がアルゴスの国で、外国の者が」
伝令使
「自分のものを自分の船に連れ帰るだけだ。ナイルの神を崇めてな」
ペラズゴイ
「この国はギリシャの神を崇めている、ここでの無礼は許さん」
伝令使
「なんてことを言う、客への礼儀をわきまえていないとは」
ペラズゴイ
「当たり前のことを言っている。神前を荒らす者は客とは認めん」
伝令使
「それは、アイギュプトス様の息子に言え。
我ら伝令使は一部始終を伝えるのみ。なんと伝えれば良いか。
いったい誰に従姉妹を奪い取られて戻ってきたと」
ペラズゴイ
「お前に名乗る必要はない。市民たちが一致して決めたことだ。
娘たちが、承知の上でついていくならばよし。
だが、娘たちを無理やり引っ張っていくのは許さぬ」
伝令使
「では、戦いが始まるぞ。勝つのは我らだがな」
ペラズゴイ
「そちらこそ、我らの力を身にしみて感じて後悔する」

アイギュプトスの伝令使は退場。

ペラズゴイ
「娘たちよ、みんな安心して広い都へおいでなさい。守りも固い市の中へ」

そう言い残し、ペラズゴイ王と従者は退場。
ダナオスは、市へ向かう娘たちに注意を促した。

父ダナオス
「娘たち、アルゴスの方々に、
そしてオリュンポスの神々に祈りを捧げなさい。
そして、都へ行き、命よりも慎みを大事にするよう、
けっして街の若者の淫らな誘いに乗ってはいけない」
ダナイデス
「父上、わかっております。
私たちの女の熟れた果実を慎み深く隠します。
ゼウス様、どうか
アイギュプトスの息子たちとの縁組がなりませぬよう、
勝利を私たちにお授けください」

ヒュペルメストラとリュンケウス。ダナイデス
〈ヒュペルメストラとリュンケウス。ダナイデス〉

第2作『アイギュプトスの息子たち』(消失)
第3作『ダナオスの娘たち』(消失)

どんな理由かわかりませんが、50人の息子と50人の娘は結婚することになります。が、ダナオスは娘たちに短刀を持たせ、初夜の秘策を授けます。父の言いつけ通りに、ダナオスの娘たちはアイギュプトスの息子たちを殺します。しかし、ただ一人、長女ヒュペルメストラだけは長男リュンケウスが処女を守ったので、殺さず逃がしました。

ヒュペルメストラは父ダナオスに捉えられますが、後に許されリュンケウスと結婚します。この二人の孫アクリシオスがペラズゴイ王家に代わり、新たなアルゴス王になります。その娘がダナエーで、ペルセウスの母です。

なお、ヒュペルメストラを除くダナオスの娘たちはリュンケウスに殺されたとも、何かの賞品として与えられたとも伝えられています。また、ダナオスの娘たちは夫殺しの罪で、冥界で穴の開いた甕(かめ)に水を汲む罰を未来永劫受けています。

【救いを求める女たち 前編】へ

前のページへ 次のページへ