1話5分で読めるギリシャ神話

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メーデイア中編[エウリピデス作]メーデイアの計略

この私を弱い女、おとなしい女などと思ってはいけません。敵には容赦がなく、親しいものには情を尽くすのです。
子供を殺すのは、情と言っているメーデイア。ついに、メーデイアの計略が語られます。それを聞いたメーデイアに同情する街の女たち(コロス)は、止めるよう言います。しかし、「そうするのが、夫を苦しめる一番の道」と言ってのけるメーデイア。

モーガン作メーデイア
イーヴリン・ド・モーガン〈メーデイア〉

クレオン
明日の日が出た時、そなたと子供たちが国境のこちらにいたら死罪だぞ。どうせ、1日だけでは恐ろしいこともできないだろうからな。
(クレオン、退場)

メーデイア
胸に思う事がなかったら、クレオン王のご機嫌をとったりなどするものか。この1日に3人(メーデイアと子供2人)の仇、クレオン王と娘、夫イアソンを亡き者にしてやろう......。ただ、どんな復讐をするか、迷ってしまう。
その後、私はどこに身を寄せればいいか、考えなくては。そして、今こそ勇気を出す時なのだ。

(イアソン、登場)

メーデイアの苦情とイアソンの弁解

イアソン
クレオン王に雑言など吐かねば、追放を招くこともなかったのに。
それでも、お前の身を案じ、こうしてやってきたのだ。
メーデイア
おお、極悪の極悪人、恥知らず!
私がどれだけ、あなたに尽くしてきたか。
あなたがアルゴー船に乗って私の故郷コルキスにやってきた時、数々の至難を助けたこと、あなたの故郷イオルコスであなたの悪徳な叔父ベリアス王を彼の娘に殺させたことなどなど、もうお忘れになって。
子供もあるのに、私を捨てて王の娘と結婚するなんて。私は、この先どこへ行けばいいのでしょうか。
イアソン
アルゴー船の遠征に関しては、名もない辺境の地から、このギリシャという大都会に連れてきてやったではないか。
クレオン王の娘を娶るのは、イオルコスを追われた我らが後ろ盾を手にし、安心してここで暮らせることを考えてのこと。そなたを嫌いになったからではない。新らしい子ができれば、そなたとの子ともども一族郎党みな助け合うことができるではないか。これが、間違ったことであろうか。
女というものは、とかく自分の目の前のことしか考えぬだな。

コロスの長コロス:メーデイアに同情する街の女たち)
イアソン様、見事なお理屈ですこと。それでも、奥様を捨てるのは正しいことではありません。
メーデイア
もし、悪いことと思っていないのなら、なぜ最初に私を納得させてから、縁組をすればよかったのでは。
イアソン
話したとて納得してはくれまい。この縁組は、女に惹かれたからではない。そなたと子供のためを思ってのこと。
メーデイア
悲しい暮らしなら、豊かな生活などいりません。
イアソン
これ以上の話し合いは無駄だな。何か私のもので欲しいものがあれば何でもさし出そう。
また、知り合いにも何か手紙を書こう。異国に行っても役立つはず。
メーデイア
悪人からの贈り物など、助けは余計なお世話です。
イアソン
我を張って好意を受けぬ。いっそう辛い目を見るだけになろう。
(イアソン、退場)

メーデイア
ミてらっしゃい、いやとおっしゃるような縁組にしてやるから。

アテナイのアイゲウス王の救いの手

(アテナイのアイゲウス王、従者を連れて登場)

アイゲウス
これは、メーデイア殿。ご機嫌いかがですか。
メーデイア
これはアイゲウス様、お久しぶりです。どちらからお越しになりました。
アイゲウス
アポロン様のご神託を伺っての帰りです。
メーデイア
なぜ、またアポロン様のご神託を。
アイゲウス
どうすれば、子宝を得られるかと。よくわからぬ神託でな
故郷の家へ着くまでは『革袋の突き出た口を、ほどいてはならぬ...』と。
そこで、この地のピッテウス殿に意味を伺おうと思ってな。

ピッテウスは神託の意味を理解し、アイゲウスを酔わせて自分の娘アイトラーと寝させます。するとその夜、アイトラーのもとにポセイドーンもやってきて、アイトラーはポセイドーンの子テーセウスを生んだとされます。

ところで、メーデイア殿、お顔がやつれているようだが......
メーデイア
ああ、何から話せば良いのか......
じつは......夫イアソンが、別の女を妻とするのです。

その上、私と子供はこのコリントスの地から、今日限りで追放の身。
アイゲウス様、あなたに一つお願いがあります。
どうか、この不憫な私たちをあなたの国で迎えてくださいませんか。
それに、私は子宝が恵まれる薬も処方できますし、きっとお役にたてます。
アイゲウス
いいでしょう、子宝のためにも。
ただし、そなたを私が連れ出すことはできぬ。立場があるからな。そなたの方から、アテナイに来て欲しい。さすれば、良い待遇をし、けっして誰にもそなた達を引き渡しはせぬ。
メーデイア
ありがとうどざいます。ご無事なご旅行を。
私は思うことを済ませ、望みを遂げてから、あなたの国に参ります。
(アイゲウス王、従者を連れて退場)

メーデイアの計略

メーデイア
これで、行く所も決まったし、私の計略をみなさま(コロス)にお話ししましょう。
誰か召使をやって、夫イアソンにここへ来てもらいましょう。そして、

今はもう、あなたの心がよくわかりました。
私をお捨てなさっって、クレオン王家とのご縁組みも私や子供のためとよくわかりました。
などと、しおらしいことを言って、子供たちをここに居られるように頼むのです。

これが計略です。クレオン王の娘を殺めるためなのです。
子供たちには、薄衣の打掛と黄金の冠をもたせ、追放を免れるよう娘の元へ送ります。
この贈物を身につけようものなら、娘の身に触れた人ともども命を落とします。
そのような毒を贈物に塗っておくからです。

ああ、しかし、この先は話す気はせぬ......
次には、我が子供たちまで手にかけようというのだから。
この地に残った我が子を、誰の手にも、夫の手にも渡すことはできない......
こうして、私は子殺しの罪を逃れてこの地を去っていくのです。

この私を弱い女、おとなしい女などと思ってはいけません。
敵には容赦がなく、親しいものには情を尽くすのです。

コロスの長
そんなことはなさらぬよう、お止めいたします。我が子をお手にかけるというのですか。
メーデイア
そうするのが、夫を苦しめる一番の道。
コロスの長
あなたご自身も、惨めな女となりましょう。
イアソン
構いませぬ。私の心は決まったのです。今更、何を言っても遅いのです。
(召使に)さあ、行って、イアソン殿をお連れしておくれ。
(召使、去って行く)

メーデイアと子供たち
アンリ・クラッグマン〈メーデイアと子供たち〉

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