1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

慈みの女神たち 前編

オレステスと復讐の女神エリニュス
モロー〈オレステスと復讐の女神エリニュス〉

【アイスキュロス作:オレステイア3部作の第3作】

〔デルポイの社、奥殿の扉の前〕
巫女
「私が奥殿へ入っていくと、清い神石の辺りに、罪に汚れた男が、赦免を求めていた。
だが、その男の前に、奇怪な姿の女たちが眠っているのです。いえ、女ではありません。世にも醜いゴルゴンです」
〔巫女退場。奥殿が開くと、オレステスと復讐の女神エリュニス(以下「コロス」がまどろんでいる。〕

〔アポロン神とヘルメス神、現れる〕
アポロン
「オレステス、決してそなたを見捨てまい。苦難から逃れられる手段を講じつかわそう。殺せとそなたに説き勧めたのは、この私であるから」
オレステス〔目を覚ます〕
「アポロン様、間違いはよもや、なさらぬことと、存じ上げております]
アポロン〔ヘルメス神に〕
「この若者の護衛をしてくれ」
〔ヘルメス神、オレステスを率いて退場。アポロン神も消える〕

クリュタイメストラ〔亡霊として現れる〕
「まったく、眠りこけているとは!
私は息子に殺されたんだよ!オレステスは逃げて行ってしまったじゃないか!」
コロス
「う、う〜、う、う〜」
クリュタイメストラ
「黄泉の女神たち、あなた方を呼んだのは、このクリュタイメストラなんだよ!」
コロス
「う〜、あ〜、起きるんだ、さぁ、今すぐ起きて追っかけよう」
クリュタイメストラ
「はやく追っかけてって、息の根を止めとくれ」〔消える〕
コロス
「取っ捕まろ!、捕まえろ、アポロンめ、母親を殺した男を、盗みとってったんだね、神さまのくせに」
アポロン〔ふいに、現れる〕
「出て行きなさい、さあ私の命令だ。万事がその忌まわしい姿に相応なのだ。血をすする獅子の洞窟こそ、かような者の棲家にふさわしいもの」
コロス
「これは、まあ、ゼウスの御子さま。話を聞いてくださいまし。万事があなた一人のお仕事、全責任があるのですから」
アポロン
「理由を述べさせてやろう」
コロス
「母親殺しをご託宣なさったのは、あなたですから」
アポロン
「父の仇を討てと言ってやった。そして、ここに逃れるてくるようにな。お前たちには、ここは似つかわしくはない」
コロス
「母親を害めた者の後を追うのは、私たちの務め」
アポロン
「では、夫を殺した妻は、どうしてくれるのだ」
コロス
「その罪は、身内の者を殺めたのとは違いましょう」
アポロン
「お前たちは、片方の罪だけ、オレステスを追い回すだけなのか!いずれパラス・アテナが決着をつけるだろう」
〔コロス:復讐の女神たち、オレステスを追いかけて退場〕
アポロン
「私はあの子を守り、罪も払ってやろう」
〔アポロン社殿の中に入る〕

〔アテナイのアクロポリス。オレステス登場、アテナ像の前にひれ伏し〕
オレステス
「アテナ女神さま、アポロン神のお指図でまいりました。女神さま、裁きを受ける覚悟ですでございます」
コロス〔登場〕
「オレステス、お前を生きながら、冥土へと引っ立ててやろう。母親殺しの報いの罰に、いろんな苦難を受けるようにね」
オレステス〔復讐の女神たちを無視して〕
「私の穢れは、アポロン神の奥殿の火で潔められました。その清らかになった口によって、アテナさまにお願いいたします。私の護り、助け手として、御来迎を」
コロス
「とんでもない。寛大なアテナさまでも、お助けはなさるまいよ。おまえは、生きながらの私たちへのご馳走だね」




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〔アテナ女神、舞台の天上に現れる〕
アテナ
「遠方から、助けを呼ぶ声を私は聞いた。そこの異形のものども、お前たちは何者だ。また、私の像に祈る者は」
コロス
「ゼウスの御娘さま、人を殺めた者を追い立てているのです。実の母親の殺害者になった者ですから」
アテナ
「それは、理由があってのことか、誰かの恨みを恐れてのことか」
コロス
「どこに、母親殺しをさせるほどの理由がありましょう!」
アテナ
「それはお前たちの言い分、反対の見方もあろう」
コロス
「では、十分吟味なさって、正しい裁きをつけて下さい」
アテナ〔オレステスに向かい〕
「外国の者よ、身の上を述べてから、今の咎めに言い訳するがよい。私の社にて嘆願するのであれば」
オレステス
「アテナ女神さま、私の出身はアルゴス、アガメムノン王の息子オレステスと申します。父は神々のご加護により、イリアスを壊滅しました。が、帰ってきて、なんと妻である私の母とその情夫に殺害されました。私は逆らうこともできねアポロン様のご託宣により、その二人を殺しました。そのため、そこの復讐の女神たちに追われているのです」
アテナ
「この問題を双方とも納得させるには、至極厄介なこと。私としても処置しがたい。さすれば、この殺害の裁判官を私が選び、裁きの庭をもうけよう。双方ともそのための証拠など準備するがよい」

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パラス・アテナ
〈パラス・アテナ像〉オーストリアの議会前