1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

〈喜劇〉女の平和 前編

女の平和
ビアズリー〈リューシストラテー〉

明け方、アクロポリス(アテナイの中心地)城門の前。
アテナイの若く美しい婦人が立っていました。リューシストラテーである。彼女は「ある決意」を胸にギリシャ中の女の代表を待っていたのです。

アテナイの婦人カロニーケー登場。

「リューシストラテーさん。怖い顔してどうなさったの?」
「私は女のために心を痛めているのに、みんな来やしない」
「まぁ、ご婦人方は朝はいろいろ忙しいのよ」
「そんなことより、大事な話があるのに!」
「それはなんなの、私たち女を集めたその大事なこととは?」
「いく晩もいく晩も寝ずに考えた計画なの!
ギリシャの平和が私たち女の肩にかかっているのよ」
「まぁ、私たちの肩に。心細い肩ね」

アテナイのミュリネーその他の女たち登場。
続いてスパルタのラムピトー、コリントスの女たちも登場。

ラムピトー「誰がいったいこの集まりを招集したのですか?」
リューシストラテー「私です、大事な話があります」
ラムピトー「なんのために?」
ミュリネー「その大事なことってなんなの?」

リューシストラテーは話はじめた。小アジアのミーレートス人がアテナイを裏切ってスパルタについたこと。アテナイとスパルタとの戦が絶えないことなどなど。
「もし、私がこの戦争を終わらせることを発見したら、みなさん、人肌脱いでくださる?」
ミュリネー「すぐにもこのマントを脱ぐわよ」
カロニーケー「体を半分差し上げますわ」
ラムピトー「平和が見えるなら、私は高い山にだって登ります」

リューシストラテー「男たちに平和を結ばせようと思うのなら、清浄に身を保たなくてはなりません」
カロニーケー「何から清浄に保つの?言ってよ」
リューシストラテー「あなた方やる?」
一同「やりますって、死んだとしても」

「それじゃ言いますわよ、私たちは清浄に身を保たなければなりません、男たちから。
おや、どうして顔をそむけるの。口がへの字でいやいやしてる?
顔色が変わりましたわよ、あら、どうして涙ぐむの?
やる、それともやらないの?」

ミュリネー「やなこった、戦の方がまだましだわ」
カロニーケー「私もまっぴらごめん」
リューシストラテー「さっき言ったことは、みんなウソ?」
カロニーケー「ほかのことならいいけれど、火の中だって。男からなんとかよりましだわ」
リューシストラテー「あなたはミュリネー?」
ミュリネー「私も火の中組」
リューシストラテー「私たち女は、みんなスケベーばかりね」

リューシストラテー「スパルタのラムピトーさんは?」
ラムピトー「女が男なしで一人でいるのはむずかしい。けど、今は平和が必要!」
リューシストラテー「ラムピトーさん、大好き!」

カロニーケー「男から身を清浄に保ったら、やだやだ、だけど、ほんとに平和になるの?」
リューシストラテー「誓います。スケスケの肌着を着て、丸見えの私たちを見たら、男はいきり立ちます。ところが、それに応えなければ、男たちは大急ぎで休戦条約、間違いなし」
ラムピトー「あのメネラーオスだって、ヘレネーのお乳を横目でちらっと見ただけで、刀を投げ出しちゃうしまつ」

「さぁ、みなさん誓約しましょう!」

かくして、女のセックス・ボイコットが成立。
はたして、その結末は......

女の平和(後編)▶