1話5分で読めるギリシャ神話

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〈喜劇〉女の平和 後編

リューシストラテー
ビアズリー〈リューシストラテー〉

男ボイコット作戦の誓約をしたリューシストラテーたちは、アクロポリス(アテーナイの中心地)を占拠しました。このアクロポリスのパルテノン神殿には、1000タラントンの軍資金が蓄えられていたからです。(1タラントン=数千万円)

そのお金を戦争に使われてしまったら、スパルタにとっては脅威です。スパルタのラムピトーは使わせないことを賛同の条件にしました。その後、男ボイコット作戦を指揮するために母国スパルタに帰りました。

(アクロポリス、プロピュライア門前)
10人最高参議官の一役人が、アクロポリスにやってきました。軍船を作る軍資金をとりにきたのです。

役人は言いました。
「女は家の中のことをしていれば良い」
「政治は男の仕事だ」
「門を開けないと、ひどい目に遭わせるぞ」

リューシストラテーたちは、反論しました。
「男のだらしなさったら何?女は出産して子どもを戦争にとられ、戦争の間、女は年をとり、女の良い時期を無駄にし、老いさらばえてしまう」
「年をとっても、男は若い女と再婚できるが、女はできないで寂しい一人やもめ」
こうして、役人はやり込められて、報告に帰っていきました。

一週間もすると、アクロポリス城内で最大の問題が起こりはじめました。女たち自身が我慢できなくなったのです。逃亡を図ったり、嘘をついて家に帰ろうとするものが続出。中には、お腹に兜をいれて妊娠したと言い、医者の元に行かせてくれと言う女まで出てくるしまつ。

「なんということ!女の方がスケベーなのだ!」
そこで、リューシストラテーはゼウスの神託を披露して、なんとかこの場を治めようとしました。
「ツバクロども(女)がヤツガシラ(男)を逃れて1つところに集まり、金精鳥(男)から離れていれば、凶事は去って上のもの(男)を下にするであろう」

女たちが神託を聞いている時、ミュリネーの夫キーネシアースが、子供を連れてやってきました。
目だけギョロギョロして、やつれた顔をしています。ただ下半身だけはテントを張って元気そのもの。

キーネシアース「ミュリネーはどこだ!」と、門の上に問いかけます。
ミュリネー(門の上)「わたしはここにいます」
キーネシアース「なぜ、一週間も家に帰らない。子供がかわいそうだ」
ミュリネー「かわいそうだけど、悪いのはお父さんよ」
キーネシアース「降りてきてくれ、ねぇ、子供のために」
ミュリネー「今、降りていきます」
キーネシアース「あぁ、あいつは若くなってますます魅力的に見える」

ミュリネーは門から出てくると、子供を抱きよせます。
「さぁ、ママのキッスよ。可愛い子」
キーネシアース「どうして、こんなことをするんだ。女どもの言うことを聞いて」
手を取って抱きつこうとするが、ミュリネーに払われる。
キーネシアース「家に帰ってくれ、神聖な男女の儀式もしていないじゃないか」
ミュリネー「平和を結び、戦争をやめない限り、いやですよ」
キーネシアース「そうするよ、だから寝よう」
ミュリネー「子供の前でですか!」
キーネシアース「おい、マネース(家の奴隷)、子供を家に連れて行ってくれ」

マネースが子供を連れて去っていく。
キーネシアース「子供は帰った、早く寝よう」
ミュリネー「ここでですか」
キーネシアース「いや、あっちの洞(ほこら)で」
ミュリネー「では、ベッドを持ってきましょう」
キーネシアース「ベッドなんかいいから、このまま地べたで」
ミュリネー「大切なあなたを地べたの上で寝かすなんてできません」
ベッド(マットレス程度のもの)をとりに門の中に入る。

キーネシアース「あぁ、たまらねぇ」
ミュリネー、ベッドを持ってきて
「早く横になって、わたしも脱ぎますから。あら敷物がないわ」
キーネシアース「敷物なんかいらない」
ミュリネー「裸のベッドの上じゃひどいわよ」
キーネシアース「キッスしてくれ」
ミュリネー、キッスして門の中へ。
キーネシアース「うわ〜、たまらね〜。早く戻ってきてくれ」

ミュリネー、敷物を持ってくると
「はい、敷物。横になって、わたしも脱ぐわ。あら、枕がない」
キーネシアース「枕なんかいらない!」
ミュリネー「わたしは、いるわ」(門の中へ)
キーネシアース「あぁ、おれの一物はおあずけをくらった犬だ!」

この後「掛け布団がない」「香油がない」などと、ミュリネーはキーネシアースをジラしにジラして
「休戦に投票してください」
と言って門の中へ入ってしまいました。
キーネシアース「おお、ゼウスよ。ああ苦しい」(退場)

その後、アテナイの代表、スパルタの代表、ギリシャ各地の代表の男たちがアテナイのアクロポリスに集まってきました。どこの代表も顔はやつれはてていますが、下半身はピンとテントを張っています。キーネシアースと同じように、男たちは、もはや「やること」だけで頭がいっぱい。もはや戦争どころではありません。

そして、リューシストラテーが中心となって、休戦条約を結ぶことになりました。

アリストパネス「女の平和」より。