1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

縛られたプロメテウス 前編

プロメテウス
ギュスターヴ・モロー〈プロメテウス〉モロー美術館

アイスキュロス作「プロメテウス」3部作1作。
(「火を運ぶプロメテウス」「解放されるプロメテウス」は消失)

(ステキュアの荒野、聳え立つ岩山のふもと。権力と無言の暴力ヘパイストス、プロメテウスを引ったてて登場)

権力
ヘパイストス、父神の指図どおりに、勤めを果たさなければなりません。あらゆる技の源である火の輝きを、あいつは盗んで人間どもにやったのだから。
ヘパイストス
どうにも気が進まないのだ。が、やるしかあるまい。プロメテウスよ、一度鋼の枷(かせ)に縛られては、二度と自由にはならないぞ、なんとか和解を申し出ることができないか。
権力
何をぐずぐずしてるんです、父神ゼウスの仰せですぞ。ゼウスの他には、自由な者はいないのですからね。
ヘパイストス
分かっている。何も言い返すつもりはない。
権力
さっさと、こいつに枷をかけてやりなさい。ぐずぐずしているのを父神が見たら大変ですぞ。
(ヘパイストス、プロメテウスの手足、胴体を岩山に枷でくくりつける)

権力
プロメテウスよ、ここで威張り返っているがいい。 前から知恵を働かす者なんてお前を呼んでいるのは、まったくデタラメなことなんだ。自分のことさえ、前から知恵が及ばないんだから。
(権力と暴力は嘲笑いながら、ヘパイストスは黙ったまま退場)

プロメテウス
よく見ておいてくれ、どのような辱めに
身を切りさいなまれつつ、永劫の歳月を
私がこれから苦悩に過ごしていくかを
・・・
私は何を言っているのか。何もかも未来のことを
私ははっきり知っているのに。
何一つ思いがけない禍いが来るわけはないのだ
・・・
火の源を盗み取り、
ウイキョウの芯に満たして人間に渡してやった
あらゆる技術を人間に教え、多くの便利さをさずけた
その罪を、今しも私は償っているのだ
・・・
ゼウスの敵として、ゼウスの宮殿に伺うほどの
あらゆる神々からも疎んじられている
あまりにも人間どもを、愛しすぎたというので

はて、高い空は、軽やかな羽ばたきの音に
ざわめきたってきて、怖い気もする

アテーナのもとプロメテウスの人の創造
ジャン・シモン・ベルテレミー〈アテーナのもとプロメテウスの人の創造〉ルーヴル美術館

コロス(プロメテウスの叔母にあたるオーケアノスの娘たち)空より登場。プロメテウスは、ティーターン神族イーアペトスとオーケアノスの娘であるクリュメネーとの子。アトラスとは兄弟になる)

コロス
怖いことはございません、親身な者の群れですもの。プロメテウス様、恐ろしさに、私たちの眼は涙であふれます。新しい掟でもってゼウス様が無法な力をおふるいになり、昔の偉大なティーターン神族をけおとしてしまいました。
プロメテウス
私を再び必要とする時が来よう。覇者の地位を奪われるという、新しい謀計を私に明かしてもらうためにだ。
コロス
あなたは本当に剛毅なお方。この苦難にも一向にめげず、自由な口をおききになります。
しかし、ゼウスは宥めすかしもできない厳しい性の心をお持ちゆえ、御身の上を気づかうのです。
プロメテウス
ゼウスのことは分かっている。しかし、あのことのために、仲直りと友愛とを私にのぞんでこよう。
コロス
その次第をすべて、私たちに打ち明けてください。
プロメテウス
クロノス派ティーターン神族とゼウス派オリュポス山の神々の戦いの時、私は最善の策を仲間(ティーターン神族)に勧めたのだが...かつて、力で勝りかつ暴力を振るう者より、計略で敵を制する者こそ勝利を得ようとガイアより教わっていた。彼らに言って聞かせたのだが、てんで耳をかそうともしなかった。だから、ガイアとともにゼウスに与することにしたのだ。

そして、ゼウスとオリュポス山の神々は勝利し、父クロノスの王座に着くと、神々にそれぞれ褒美を与え、統治の範囲を決めてやった。だが、人間は滅し、新たな種族を作る予定だったので、誰も気にとめもしなかった。私の他には誰一人、それに反対しようとはしなかったのだ。人間への哀れみを先にし、自分がこうなることを気にもかけなかったのだ。
コロス
プロメテウス様、私たちはこの有様を見ないでおけばよかった。胸を痛めるばかりですから。
その他に人間にお与えになったものは?
プロメテウス
人間には、運命が前から見えないようにしてやった。
コロス
たいへん役に立つことを、人間におやりでしたこと。
プロメテウス
それに加えて、火までも人間にくれてやったのだ。
コロス
それで、ゼウス様は・・・。なんとか呵責を逃れる道をお探しなさいませ。
プロメテウス
あなた方は地に降り立って、一部始終を人間に、私のこれからの運命を知ってもらうよう伝えてくれ。

縛られたプロメテウス 中編