1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。姉妹サイト〈絵画で分かりやすい旧約聖書・新約聖書

『怖い絵』展 ウォーターハウス「キルケ」

鏡に映るオデュッセウス
ウォーターハウス〈キルケ〉鏡に映るオデュッセウス

『怖い絵』展のウォーターハウス作〈キルケ〉

出品されているのは、ジョン・W・ウォーターハウス作〈キルケ〉です。今まで気がつかなかったのですが、キルケの後ろの鏡に、男が映っています。これが、オデュッセウスだったのです。

惚れやすさと執念深さがキルケの風変わりな性格

『オデュッセイア 第十歌』では、キルケは探索に来たオデュッセウスの部下を食事に招きます。その時に出した魔法の飲み物で19人を豚に変えてしまいます。助かったのは、彼女の館に入らなかった1人だけ。ウォーターハウス作〈キルケ〉の右下にいる黒豚がオデュッセウスの部下です。

館に入らなかった1人の部下から報告を受けたオデュッセウスは、助けに向かいます。途中現れた神ヘルメースに薬草を与えられました。この薬草に守られているオデュッセウスには、キルケの魔法の飲み物は利きません。負けを認めたキルケは、豚を人間に戻し、オデュッセウスを自分から床に誘い抱かれます。その後、二人には子供も生まれています。

キルケ
ウォーターハウス〈キルケ〉

フランツ・フォン・シュトゥック作〈キルケ〉には、魔法の飲み物をすすめている彼女の恐ろしさがよく出ています。象徴主義のシュトゥックならではのキルケです。

ですが、『オデュッセイア 第十歌』の中では、オデュッセウスの部下たちは食事に招待されているので、アットホームな雰囲気の中、魔法の飲み物を飲んだはずです。シュトゥック作〈キルケ〉とは違っていたはずで、微笑みを浮かべた優しい顔したキルケだったでしょう。部下たちもいい気分で、飲み干したことと思います。まさか、豚に変えられるとは思ってもいなかったでしょう。

キルケの真の恐ろしさ

キルケの真の恐ろしさを忘れてはいけません。豚になった部下たちは、心も豚になって何もわからないというわけではないのです、『知らぬが仏』状態ではないのです。
心は人間のままで、自分が豚になったことが分かっているのです。これほど、怖いことはありませんよね。

【オデュッセイア】〈魔女キルケ 前編

フランツ・フォン・シュトゥック〈キルケ〉
シュトゥック〈キルケ〉

グラウコスとスキュラの場合

可憐な乙女スキュラに恋してしまうグラウコスは、何か恋心を起こさせる媚薬でも作ってもらおうとキルケを訪ねます。ところがです。「そんな女は止めて、あなたを好きになってくれる女を愛しなさい」と、暗に自分があなたにふさわしい女なのよと答えます。

「私の愛は変わらない。この愛は、スキュラだけのもの」
グラウコスの恋は一途です。

グラウコスの愛が得られないとわかると、キルケはスキュラの腰に6頭の犬を生じさせ、恐ろしい怪物にしてしまうのです。残されたグラウコスはしかたなくキルケの愛を一時受け入れますが、人間を動物に変えるキルケには愛想をつかしてしまいます。

可憐な乙女スキュラの運命が変わる直前を描いたジョン・メルヒッシュ・ストルードウィック作〈キルケとスキュラ〉。水浴にむかうスキュラと魔法の薬を水に流すキルケの対比を童話の世界のように描いています。これ以後、ギリシャ神話でも有名な怪物に変わってしまう、何も知らない可憐な乙女スキュラが哀れでなりません。

グラウコスとスキュラ

キュルケとスキュラ
ストルードウィック〈キルケとスキュラ〉