1話5分で読めるギリシャ神話

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乙女ナウシカアの決断

ナウシカア、乙女から女へ
フレデリック・レイトンとヴィルヘルム・ティシュバイン〈ナウシカア:乙女と女〉

トロイア戦争10年、その後の漂流生活10年後、オデュッセウスは故国イタケに帰ります。彼が帰る前にいた最後の漂流池が、パイエケス国です。ナウシカアはその国の王女です。この王女をうまく操ったのが、女神アテーナ。王女にオデュッセウスを案内させ、王と王妃の親切なもてなしを受けさせました。その上、故国イタケまで、この国の船と船員に送ってもらったのです。

王女ナウシカアは、入江でオデュッセウスを見つけ、城塞の近くの果樹園まで案内します。そこで別れてから、彼女は『オデュッセイア』では、登場しません。

「やっと、見つけた!」

入り江でオデュッセウスと初めて会った時から、ナウシカアは夫となるべき男性はオデュッセウスしかいないと確信しました。確かに、国にも貴族の若者は多くいます。だか、結婚したいと思った男性は、かつて一人もいませんでした。
そこへ、神のごとき男性オデュッセウスが現れたのです。漂流後のボロ切れを腰に巻いただけのみすぼらしい姿ではありましたが、立派な家柄の出とすぐに分かりました。それもそのはず、女神アテーナがオデュッセウスの肩幅も広く、身長も大きく立派に見せていたからです。
女中たちは怖がって馬車の後ろに隠れましたが、ナウシカアだけは、オデュッセウスの前に毅然として立って入られたのも、アテーナが彼女に勇気を与えていたからです。

「この男性と結婚したい!」

オデュッセウスが助けを求めた時、彼女は思わず微笑んでいました。しかし、頭では、どうしたらこの男と結婚できるか考えていました。父アルキノオス王と母アレテにはなんと言おうか。
また、周りの貴族たちに何とも言われないようにしなくては。他人の口は何を言うか、分かったものではない。
そうだ、城砦近くの果樹園までオデュッセウスを案内し、何事もなかったように帰り、後でゆっくり会おう。

「誰かが通りましたら、アルキノオスの館をお訪ねください。知らないものはおりませんので」
ナウシカアはこう告げて、オデュッセウスと果樹園で別れました。

オデュッセウスが屋敷にやってきて、広間の宴に姿を現し、まず母親アレテに挨拶しているのを、ナウシカアはこっそりと柱の後ろで見ていました。
「わたしも、いますぐオデュッセウスと話したい」
しかし、それはかないません。娘が客人の前に出ることはなかったからです。

宴の中で、詩人がもう有名になっていたトロイア戦争の唄を奏でると、オデュッセウスは顔を隠しながら、はらはらと涙を流してしまった。それに気づいたアルキノオス王は、そっと訳を尋ねました。オデュッセウスは素性を明かし、イタケへの帰国の助けを願いました。王は船と船員もその場で決め、たくさんの土産物も用意することをオデュッセウスに約束しました。
(古代ギリシャでは、訪ねてきた旅人を親切にもてなし、送り出すときはたいそうな土産を与えるのが、しきたりであったようです)

「えっ!、帰ってしまう!」

ナウシカアは焦りました。なんとか、オデュッセウスに思いを伝えたい。
しかし、ナウシカアのオデュッセウスへの思いは、伝える機会も、ちょっとした会話すらする機会がありませんでした。

これらのことはすべて女神アテーナの計画通りだったのです。ナウシカアの役目は、オデュッセウスを館に案内して王に帰国の助けを得る機会をあたえるまでだったのです。その後、彼女は何回かオデュッセウスと会おうとしましたが、ことごとく、女神アテーナに阻止されてしまいました。女神にとって、この国でオデュッセウスが女にうつつを抜かしてもらっては、困るのです。オデュッセウスには早くイタケに帰ってもらい、ただで飲み食いしているペネロペイアへの無法な求婚者を退治してもたわなければなりません。

オデュッセウスにしても、なんとか王の助けをかりてイタケへの帰国することしか頭にはありません。また、妖艶なキルケ、カリュプソに、長年言い寄られていたので、女に辟易していましたから、ナウシカアの気持ちに気付こうともしませんでした。

しかし、一途なナウシカアが大胆な行動を起こしたのです。明け方、みな寝静まっている頃、オデュッセウスのところに彼女はしのびこみ、彼の寝所に潜り込みました。いくら女に辟易していたとしても、オデュッセウスは男ざかりの壮年です。彼女を受け入れ、自然に男女の仲になってしまいました。

この二人の密会は、さすがの女神アテーナにも気付かれることはありませんでした。女神はスパルタにいるオデュッセウスの息子テレマコスに、イタケへの帰国を促しに行っていたからです。

オデュッセウス出発の朝

ナウシカアには、オデュッセウスが起きて出て行くのをただ見ているしかありません。しかも、燃え上がった彼女の恋心には、行き場がありません。今のナウシカアはもう乙女ではなく、その目も体、女そのものです。それに比べ、百戦錬磨のオデュッセウスは、何か言わなくてはと思い、しばし足を止めました。しかし、口はもごもご動いただけで、言葉にはなりません。

女神アテーナが、もうすぐスパルタから戻ってくる頃です。

オデュッセウスとナウシカア
ヴィルヘルム・ティシュバイン〈オデュッセウスとナウシカア〉
この絵画の状況を想像して、このブログを書いてみました。