1話5分で読めるギリシャ神話

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ゼウス談「アテーナは目に入れても痛くない」

天界の戦い
パウル・トロガー〈天界の戦いの一部〉ゴートウェイ修道院

メーティスがアテーナを身もごった時

「ゼウス様は子煩悩ですね」って、みなに言われる。
アテーナはわしの頭から生まれた子だが、実はな、母がいるのだ。それが知恵の神メーティスだ。この母親のことで、わしはアテーナに負い目がある。

「生まれんとする娘の後に、メーティスは一人の男の子を産み、その子は天空の支配者となるであろう」
大地女神ガイアが予言しておった。だから、わしはメーティスの妊娠がわかった時、彼女を飲み込んでしまったのだ。

それでも、メーティスが身もごったアテーナは、わしの頭の中で生きていたのだ。母メーティスが、鎧兜を作り彼女に着せて守っていたのだよ。だから、彼女が成長するにつれて、わしの頭は痛くなった。とうとう我慢しきれぬほどの頭痛になった。だから、プロメテウス(一説にはヘーパイストス)に斧で頭を割らせた。出てきたのが、成長したアテーナだった。

人間界には「子は目に入れても痛くない」という例えがある。アテーナは、わしの頭の中から文字通り生まれたのだ。だから、可愛くて仕方がないのだよ。

ゼウス(中央)と左にいるアテーナ
〈ゼウス(中央)と左にいるアテーナ〉出典

全裸になった乙女アテーナ

また、トロイア戦争の原因「パリスの審判」の時、わしがその審判をするのを放棄した。結果、アテーナに恥ずかしい思いをさせてしまった。まだ乙女だったアテーナを、パリスの前で全裸にさせてしまったのだ。さぞかし、恥かしかったことだろう。それ以後、アテーナは人前では絶対に裸にならない、結婚はしないと誓いを立てた。しばらく、娘はアテーナイのパルテノン神殿にこもり、わしには口も聞いてくれなんだ。

また、息子ヘーパイストスが妻アフロディーテの浮気のため、欲求不満だった頃のことだ。武器の製作を頼みに来たアテーナを、息子は無理やり犯そうとした。娘はなんとか逃げて、犯されることはなかった。

だが、ヘーパイストスの精液が、アテーナにかかりそうになった。地面に落ちた精液から、エリクトニオスが生まれた。アテーナには何の責任もなかったが、あの子は、けなげにもその子を育て、あのアテーナイ王にもした。だから、世間ではアテーナの子供と思われている。

「私には、好きな神も、人間もいない。お父様がなんと言おうと、結婚するつりもありません」
と、アテーナはわしと顔を会わせるたびに言っている。

だがな、アテーナには好きな人間がひとりいるのだ!

あのオデュッセウスだ。わしには分かる。アテーナは自分の気持ちに気付いていない。その分、恥じらいもないので、オデュッセウスのことになると、のめり込んでしまう。だから、何度でも、彼を助けるのだ。

怒った兄者ポセイドーンが、わしにたびたび苦言を言ってくる。
「オデュッセウスはわしの息子一つ目巨人のポリュペモスの目をつぶしたのだぞ。お前の娘アテーナは、どうしてあんなにもオデュッセウスを助けるんだ。おかげで、オデュッセウスはイタケに帰り、また王になってふんぞり返っている。兄者は、アテーナに甘すぎる!」

まあ、そう言われてもな、わしの態度は変わらん。
内心オデュッセウスと結ばせたいと思うこともあるが、彼にはあの誰もが認める貞淑なペネロペイアがいる。神々の王であるわしにも、何もできぬ。

アテーナは、もう誰とも結婚しないだろう。
娘の子供を、孫をなんとか見られないだろうかな...寂しい限りだ。

【オディッセイア 第十三歌】には、こうあります。

眼光輝く女神アテーナは、にっこりと笑い、手をあげて優しく彼を撫でてやると、
「あらゆる策略において、そなたを凌ぐ者があるとすれば、それは余程ずる賢い男に違いない。いや、神とてもそなたに太刀打ちできぬかも知れぬ。それにしても、不敵な男だな、オデュッセウスよ。悪知恵をめぐらし、策謀に飽くことを知らぬ。自分の国に帰ってきたというのに、欺瞞や作り話をやめようともせぬ。

そなたは知略と弁舌にかけては、人間界には他におらぬ。わたしは知恵と術策にかけては神々の中でも讃えられている。われらは似た者同士だな。そんなそなたでも、わたしの正体を見破ることはできなかった。わたしはそなたが苦境にある時は、必ず付き添い守ってやっている」
(アテーナ、なんだがうれしそうですね)

天界の戦い
パウル・トロガー〈天界の戦い〉ゴートウェイ修道院