1話5分で読めるギリシャ神話

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アイアス【前編】アキレウスに次ぐ英雄の最後

トロイアのヘクトルを倒したアキレウス。そのアキレウスもパリスの矢(アポロンの矢)によってくるぶしを射られ死んでしまいます。トロイア勢からアキレウスの遺体を取り戻したのがアイアスとオデュッセウスです。
その後、神ヘーパイストスが造ったアキレウスの武具を誰に譲るかでアイアスとオデュッセウスが争い、オデュッセウスが勝ちます。ここからアイアスの悲劇が始まります。

アキレウスの遺体を運ぶアイアス
〈アキレウスの遺体を運ぶアイアス〉

ソポクレス作【アイアス】前編

女神アテナに狂わされたアイアス

(狂わされたアイアスの陣屋前。牛や羊を襲った犯人の足跡を調べてきたオデュッセウス)

アテナ
アイアスは血の滴る剣を手にして、今しがた戻ってきた。
しかし、オデュッセウスよ、なぜお前はここまできたのか。
オデュッセウス
おお、女神アテナのお声。昨夜家畜の群れが番人もろとも何者かの手によって皆殺しにされたのです。それがアイアスの仕業だという者もおりましたが、確証がないのです。それを確かめるべく、私がその任を買って出たのです。
アテナ
アイアスの仕業なのです。アキレウスの武具のことで、怒り狂ったのです。
オデュッセウス
ですが、なぜ家畜など襲ったのでしょうか。
アテナ
家畜をお前たちと思ってしたこと。アガメムノンとメネラオスの陣屋の前にいたアイアスに、私が妄想をその目に投げ込んで、家畜に向かわせたのです。アイアスは生き残った家畜を縛り上げ、陣屋の中に連れてきているのです。
アイアスよ、外に出てくるがよい。
オデュッセウス
おやめください。アイアスが中にいればそれでいいのです。
アテナ
何が怖い。お前の姿はアイアスには見えぬ。
アイアスよ、出てまいれ、味方である女神が2度も呼んでいるのだ。

(アイアス、血の滴る鞭を手にして登場)

アイアス
ゼウスの姫君、よくぞおいでくださった。今日のこの獲物のお礼として、黄金の品々を感謝の印として捧げます。
アテナ
その前に、さあ話すがよい。首尾よくアトレウスの子らの血をその剣に浸すことができたのか。
(アトレウスの子=アガメムノンとメネラオス)
アイアス
その通りです。
アテナ
では、ラエルテスの子オデュッセウスにはどんな目にあわせたのか。
アイアス
女神よ、きゃつは捕虜としてこの中にいます。鞭で背中が真っ赤になるまで叩かれて死ぬことになりましょう。

アテナ
オデュッセウスよ、おわかりか、神々の力のほどを。
オデュッセウス
いくら私を心からず思うとはいえ、私はアイアスが不憫んでなりませぬ。
アテナ
たとえアイアスのように人一倍力に恵まれていようと、思い上がってはならない。慎みをわきまえた者こそ、神々の愛を受けるのです。
(アテナ、オデュッセウス退場)

羊を虐待するアイアス
〈羊-オデュッセウス-を虐待するアイアス〉

アイアスの奴隷テクメッサの嘆き

(コロス-アイアスの部下達-歌いながら登場)

コロス
牧場を襲いしわが殿が
きらめく剣ふりかざし、家畜の群れを襲ったと
巷の声の恥ずかしさや。
これこそはオデュッセウスが伝え説きまわる噂。
今の殿なら、さもありなんと真に受けて
殿の不幸をあざ笑う。しかるに
この中傷を払おうと思うわれらに力なし。

(アイアスの奴隷プリュギアの王女テクメッサ登場)

テクメッサ
あの恐ろしくたくましいアイアス様が
心狂わす病の嵐に打たれました。
陣屋の内を見ればお分かりになりましょう。
その手にかかり殺された血まみれの犠牲。

もはや、その狂乱もお鎮まりになりました。
そして今、心たしかになられました。
が、自ら犯した不幸の有様を見つめ、あらためてお苦しみのご様子。
コロスの長
私には、そのお言葉の意味がわかりませぬ。
テクメッサ
正気になられましたアイアス様は、ご自身の身に何が起こったのかお尋ねになりました。昨夜から今までことを、残らずお話ししました。
すると、悲しみの叫びを上げてお嘆きになるのです。それからは何も食べす、何も飲まず、ご自分の剣にかけた家畜の群れの中で、じっと倒れたままでいらっしゃいます。
きっと何か不吉なことをなさるおつもりです。
コロスの長
殿はお苦しみのあまり、気がふれておしまいになった。
アイアス[陣屋の中から]おお、おお。
おお、我が子よ、我が子よ。
(我が子=テクメッサとの子でエウリュサケス)
テウクロスよ、どこにいるのだ。私はもう死にそうだ。
(テウクロス=アイアスの腹違いの弟、弓の名人)
コロスの長
では、中に入りましょう。私を見たら、お心も落ち着くかもしれません。
テクメッサ
では、開けますよ。どのような有様か、よくお分かりになりましょう。

大アイアスと小アイアス
トロイア戦争に参加したギリシャ軍には、アイアスは二人います。
テラモーン子で大アイアスはアキレウスに次ぐ英雄として知られています。もう一人は小アイアスと言い、ロクリス人。小柄でアキレウスに次ぐ駿足ですが、神を敬わない不遜な人物です。(いずれ、小アイアスのトロイア帰還時の不祥事はとりあげます)

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