1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

アンティゴネ 1[ソポクレス作]テーバイ攻めの7将後

『テーバイ攻めの7将』でアンティゴネとイスメネの兄ポリュネイケスとエテオクレスは、互いに刺し違えて死にました。王座には、母方の叔父クレオンが即位。厳しい布告を出します。
町を護って戦ったエテオクレスをねんごろに弔い、攻めてきたポリュネイケスは野ざらしにして鳥獣の餌食にし、これを弔う者は死刑に処すと。アンティゴネの新たな苦難が始まります。

ポリュネイケスを弔うアンティゴネ
ニキフォロス・リトラス〈ポリュネイケスを弔うアンティゴネ〉

アンティゴネ、叔父の新王クレオンへの反逆

※テーバイに攻め寄せたアルゴス勢が去った次の日の夜明け前。
(テーバイ王宮前、アンティゴネとイスメネの姉妹登場)

アンティゴネ
私たちの兄二人が死んでしまったので、叔父のクレオンが王になって、何やら布告を出しました。イスメネ、あなたは何かご存じ。
イスメネ
お姉様、私にはわかりません。兄二人互いに刺し合い死んでしまい、敵のアルゴス勢が昨夜逃げたことしか。
アンティゴネ
よく、わかっている。それで、あなたにだけに聞かせようと思い、呼び出したの。
イスメネ
何かよくないことを、考えているのね。
アンティゴネ
布告では、エテオクレスはちゃんと弔われるけど、ポリュネイケスの亡骸は葬ってはならない、また悼んでもいけないと。布告は、きっと私に向けているのだわ。
イスメネ、亡骸を葬ることを手伝ってくれるつもりはない?
イスメネ
クレオンが禁じているのに、危ない仕事だわ。どんなことになるか考えなければいけない。それに、私たちは女。男の人と争いあうよう生まれついていない。私としては、ポリュネイケスには容赦を願って、余計なことはしたくない。
アンティゴネ
ポリュネイケスを葬って、それで私は死ねるなら本望よ。私はこれから行くから。
イスメネ
心配です。誰にも知られなければいいのですが。
(アンティゴネとイスメネ、別々に退場)

コロス、テーバイの勝利を祝う。

コロス:町の長老たち登場)
コロス
ゼウスは特に、大言壮語する人の
増上慢をことのほかお憎しみなさる。
おびただしい流れをなしてその者どもが
出かけて来るのをみそなわし、
門の上に上がり、勝どきをあげようと意気込む者へと
電撃を投げつけられた。
他の者らも、軍神アレスが片づけられた。

七つの門にそれぞれ向った七人の将、勝利を祝う。
ただ痛ましい二人以外は。
同じ父、同じ母から生まれていながら、
二本の槍を互いの身に向け、最期を遂げる運命であった。

コロスの長
ほれ、王宮からクレオン王がお出ましになったぞ。

クレオンの布告と要請

(クレオン王、王宮の扉から登場)
クレオン
市民の安寧に禍いがふりかかろうとするのを見たら、けして黙っておくまい。かつまた国の敵を自分の味方に数えもすまい。私は、このようにわが国の栄えを考えていこうと思う。されば、市民たちにオイディプスの子息らにつき、布告を回した次第なのだ。

エテオクレスはこの国を護って戦い、討ち死された方であるがゆえ、最高の死者を送るにふさわしいあらゆる儀式を執り行なおう。一方、ポリュネイケスは亡命から立ち戻った身で、国と神の社に火を放ったうえ、身内の者の血を舐めてから、他の者は奴隷として連れ去ろうとした。それゆえ彼に対しては、墓に葬ってはならぬと命を下した。さらば、その身を鷲鳥や野犬に食らわせ、見せしめに恥をかかせるつもりだ。
コロスの長
この国に敵意を抱いて来た者と、好意を抱く者とに対して、そのように処置なされると。
クレオン
されば、今の淀をとり行なう見張人になってもらいたい。
コロスの長
いや、我ら年寄りより、もっと若い者にお命じください。
クレオン
死人の番をする者どもは、もうちゃんとで決まっている。
コロスの長
では、私らに何をお命じなさろうと。
クレオン
この命令にさからう者の肩を持たないようにというのだ。
コロスの長
死刑をわざわざ求めるほど、愚かな者はおりますまい。
クレオン
いかにも、だが、金儲けへの欲は昔から絶えず、人を欲に誘い込み、身を滅ぼさせる。

布告に逆らった事件の番人の報告

(番人、左手より登場)
番人
王様、ご報告を申し上げます。実を言うと、この事件を報告したほうがよいやら。報告すれば、私が犯人と疑われはしないかと、それが気がかりでして。
クレオン
なんだ、お前を悩ませているその事件とは。
番人
けっして、私がやったのではなく、また誰がやったか、犯人も見ておりません。何か、罰でも受けるようでしたら、それはご容赦お願いいたします。
クレオン
早く申せ。なにか事件が起きたのだな。
番人
へえ、恐ろしいことなんで。
クレオン
さっさと申せ。そして、立ち去れ。
番人
ポリュネイケスの亡骸に、誰かが砂をかけて、葬いをしでかした者がいます。
クレオン
誰だ、そんな真似をしたの不届き者は。
番人
昼間の番人が、気づいたんです。それで、互いに誰がやったのか、誰それが一味ではないのか、言い争いが始まりました。それで、殴り合いになりそうでした。どうにも解決できそうもなくなって、とにかく王様にご報告するのが一番となりました。しかし、今度は誰が報告に行くのか、ともめまして。クジで、わしの役目となった次第です。
コロス
王様、これは神がなされた仕業ではないでしょうか。
クレオン
黙れ。年寄りがわきまえもなく、聞き捨てならぬことを申すでない。ポリュネイケスの死骸に対して、神々が配慮をされたなどとな。
つまりは、ずっと前からこの布告に不満をいだく輩があったということだ。その連中は、金欲しさに心を動かされたのだ。まったく、人の世の習い、金ほど人に禍いをなすものはない。また、金が人間のまともな心を迷いに導き、恥ずべき所業につかせるのだ。
だが、金を貰って、こうした所業をやりおおせた連中とて、やがてはその報いを受けることになるのだ。
(番人に)誓ってお前に言い聞かせるが、その埋葬を執り行なった犯人を見つけ出して、引っ立ててまいれ。でないと、お前が罰を受けることになるぞ。わかったか。
(クレオン、退場)

番人
ええ、ええ、何としても見つけてやりますんで。
(番人、退場)

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