1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

縛られたプロメテウス【1】岩山に拘束される

(更新日:2021.05.01)

第2作「火を運ぶプロメテウス」第3作「解放されるプロメテウス」は消失。この2作があれば、プロメテスすの全貌が明らかになります。特に第3作が残されていれば、ゼウスの秘密やヘラクレスによって開放される経緯がよくわかるのですが。
第1作『縛られたプロメテウス』は、ゼウスにもけっして屈しないその孤高の精神がよくわかります。ゼウスには、兄である海神ポセイドンも冥王ハデスでさえも逆らえません。いったい何がプロメテウスにそうさせるのか?

プロメテウス ギュスターヴ・モロー〈プロメテウス〉

アイスキュロス作『縛られたプロメテウス』【1/3】
コロス(合唱隊)=プロメテウスの叔母にあたるオケアノスの娘たち

引ったてられるプロメテウス

(ステキュアの荒野、聳え立つ岩山のふもと。権力と無言の暴力、ゼウスの子ヘパイストス、プロメテウスを引ったてて登場)

権力
ヘパイストスよ、父神の指図どおりに、勤めを果たさなければならぬ。あらゆる技の源である火の輝きを、こいつは盗んで人間どもにやったのだからな。
ヘパイストス
だが、どうにも気が進まぬ。やるしかないのはわかっているのだ。プロメテウスよ、なんとかゼウスに和解を申し出ることはできないか。一度鋼の枷(かせ)に縛られては、二度と自由にはならないぞ!
権力
何をぐずぐずしてるんです。ゼウスの仰せですぞ。ゼウスの他には、自由な者はいないのだから。
ヘパイストス
分かっている。何もしないと言っているのではない。
権力
さっさと、こいつに枷をかけてやりなさい。ぐずぐずしているのを父神が見たら大変ですぞ。
(ヘパイストス、プロメテウスの手足、胴体を岩山に枷でくくりつける)

権力
プロメテウスよ、ここで威張り返っているがいい。「先に考える男」なんてお前を呼んでいるのは、まったくデタラメなことだ。こうなる自分のことさえ、わかっていなかったのだからな。
(権力と暴力は嘲笑いながら、ヘパイストスは黙ったまま退場)

プロメテウスの独白

よく見ておいてくれ、
どのような辱めに身を切りさいなまれつつ、
永劫の歳月を私がこれから苦悩に過ごしていくかを
・・・
私は何を言っているのか
何もかも未来のことを私ははっきり知っているのに
何一つ思いがけない禍いが来るわけはないのだ
・・・
火の源を盗み取り、
ウイキョウの芯に満たして人間に渡してやった
あらゆる技術を人間に教え、多くの便利さをさずけた
その罪を、今しも私は償っているのだ
・・・
ゼウスの敵として、
あらゆる神々からも疎んじられている
あまりにも人間どもを、愛しすぎたというので
はて、高い空は、軽やかな羽ばたきの音に
ざわめきたってきて、怖い気もする

ティタン神族との戦いにゼウス側についた理由

ハールレム「ティーターンの墜落」
ハールレム〈ティタンの墜落〉

(コロス:叔母にあたるオケアノスの娘たち、空より登場)

コロス
怖いことはございません、親身な者の群れですもの。プロメテウス様、恐ろしさに、私たちの眼は涙であふれます。新しい掟でもってゼウス様が無法な力をおふるいになり、昔の偉大なティタン神族をけおとしてしまいました。
プロメテウス
私を再び必要とする時がこよう。覇者の地位を奪われるという新しい秘密を私に明かしてもらうためにだ。
コロス
あなたは本当に剛毅なお方。この苦難にも一向にめげず、自由な口をおききになります。しかし、ゼウスは宥めすかしもできない。厳しい心をお持ちゆえ、御身の上を気づかうのです。
プロメテウス
ゼウスのことは分かっている。しかし、あの秘密のために、仲直りと友愛とを私にのぞんでこよう。
コロス
その次第をすべて、私たちに打ち明けてください。
プロメテウス
クロノス派ティタン神族とゼウス派オリュポス山の神々の戦い「ティタノマキア」の時、私は最善の策を仲間(ティタン神族)に勧めたのだが......
『力で勝り、かつ暴力を振るう者より、計略で敵を制する者こそ勝利を得よう』とガイアより教わっていた。だが、ティタン神族は少しも耳をかそうとしなかった。だから、ガイアとともに私はゼウスに味方することにしたのだ。

プロメテウスが人間に火を与えた理由

フューガー「プロメーテウスと火」
フューガー〈プロメテウスと火〉

プロメテウス
ゼウスとオリュポスの神々は勝利した。ゼウスは父クロノスの王座に着くと、神々にそれぞれ褒美を与え、統治の範囲を決めてやった。また人間を滅ぼし、新たな種族を作る予定だった。そのことを気にかける神は誰一人もいなかった。だから、私は人間への哀れみを先にし、自分がこうなることを気にもかけなかったのだ。
コロス
プロメテウス様、私たちはこの有様を見ないでおけばよかった。胸を痛めるばかりですから。その他に人間にお与えになったものは?
プロメテウス
「人間には運命が見えない」ようにしてやった。
コロス
たいへん役に立つことを、人間におやりでしたこと。
プロメテウス
それに加えて、火までも人間にくれてやったのだ。
コロス
それで、ゼウス様はこのような仕打ちを。なんとか、この呵責を逃れる道をお探しなさいませ。
プロメテウス
あなた方は地に降り立って一部始終を人間に話し、私の運命を知ってもらってくれ。

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