私とギリシャ神話との出会い―ニーチェ『悲劇の誕生』
ニーチェ『悲劇の誕生』とギリシャ悲劇
高校の時、プラトン、ソクラテスからはじまり、ニーチェまでたどりつきました。そして、ニーチェの著作『ツァラトゥストラはかく語りき』の次に『悲劇の誕生』を読みました。
ニーチェは、ギリシャ悲劇はディオニュソス的なるもの、特に音楽をベースにしてアポロン的なものを融合したものとしました。だから、ギリシャ悲劇には、合唱し、踊り、語る合唱隊=コロスが出てきます。
コロス=劇の合唱隊(ニンフ、市民、長老などのグループ)で、劇の背景や要約を伝えたり、劇中の一般大衆の気持ちを合唱やセリフで表現したりします。劇中解説の役割もあります。
ディオニュソス的なるものとは?
音楽的な情念をベースにした陶酔する世界観を持ちます。ニーチェは、ワーグナーの音楽がギリシャ悲劇を復活させようとしていると絶賛しました。
想像してみてください、あのフランシス・コッポラ監督の『アポカリプス - 地獄の黙示録』の「ワルキューレの騎行」。私にとってR.シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の不協和音から始まる冒頭が、まさにギリシャ悲劇の世界感を感じます。
アポロン的なるものとは?
美的ソクラテス主義。造形芸術の夢(イデア)・秩序の世界観で「生」を肯定します。
ギリシャ悲劇の3大作者
ギリシャ悲劇の3大作者はアイスキュロス、ソホクレス、そしてエウリピデス。私は20代初めに、ギリシャ悲劇・現存32作品をすべて読みました。
一番のおススメは、ソホクレス作『オイディプス王』。悪人は一人も出てこないのですが、王を思いやる心から悲劇になっていきます。
ところで、ニーチェは、エウリピデスがギリシャ悲劇を堕落させたと言います。
なぜなら、エウリピデス劇の最後に現れるデウス・エクス・マキナ(機械じかけの神)が原因です。登場する神が問題を解決してしまうことで、登場人物は何も考えず、成長することもなくなってしまと考えたのです。
つまり、生きること、実存を自ら考えないと。それでも、読み返してみると、神が単純に解決するわけではありません。
また、アイスキュロスの劇でも、女神アテーナが解決する劇『慈みの女神たち』があります。
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