1話5分で読めるギリシャ神話

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第十一歌後編:パトロクロスの運命の扉が開く!

常に戦いが気になっていたアキレウス。自分で様子を見に行くことはできす、マカオンの様子の確認にパトロクロスを派遣します。これがきっかけとなり、パトロクロスの運命が決まります。
いずれ、アキレウスの代わりに、アキレウスの甲冑を身に付け出陣します。パトロクロスとヘクトルは、悲しいかな!ゼウスによってアキレウスを有名にする踏み台にされるのです。

パトロクロス
ダヴィッド〈パトロクロス〉彼の死はまだ先ですが、この絵はそれを予感させます。

(イリアス 第十一歌 後編)

一人残されたオデュッセウス

彼はトロイア勢に囲まれてしまったが、それでも敢然と闘い続ける。すると、ソコスの槍がオデュッセウスの脇腹の肉をそぎ落とした。アテネが槍をそらさなければ、彼は死んでいたであろう。
オデュッセウスは凄い形相でソコスに言い放った。
「哀れな男よ、今日この日今ここで、お主には黒い死がやってくる」
その言葉に恐れをなしたソコスは、いきなり背を向けて逃げ出した。すかさず、オデュッセウスは槍でソコスの背から胸を貫いた。

しかし、このままトロイア勢に囲まれていては、いずれ撃たれる。オデュッセウスは、人間の力がおよぶ限りの大声を三度あげて助けを呼んだ。
その声をメネラオスは聞くと
「アイアスよ、オデュッセウスの声が聞こえた。どうやら敵に包囲されているらしい。助けに行くぞ」
二人はすぐにオデュッセウスの包囲網に近づくと、トロイア勢をなぎ倒していった。

ギリシャの軍医マカオン、傷つく。

この頃、スカマンドロス河の堤では、ヘクトルとパリス、老ネストルとイドメネウス等が戦っていた。パリスの矢は、アスクレピオスの子で軍医マカオンの右肩にあたった。イドメネウスは、叫んだ。
「ネストルよ、マカオンを車に乗せ、急ぎ船陣にむかってくれ。軍医は大切だ」

大アイアス、傷つく。

ヘクトルの御者はオデュッセウスの方を見て、
「ヘクトルよ、あそこで両軍が入り乱れている。あのアイアスがいるぞ。さあ、われらもそこへ向かおう」
ヘクトルは進んだが、一騎打ちで敗北したアイアスとの戦いはさけた。

ゼウスはこれに気付くと、アイアスの胸に恐怖の念をおこさせた。彼は心ならずも退きはじめていた。退きつつも、何度も振り返りトロイア勢と戦っていた。エウリュピュロスはアイアスを助けようと近づいたが、彼の腿をパリスの矢がつらぬいた。かれは叫んだ、
「だれか、引き返してアイアスを弓矢から守ってくれ」

戦いは、混沌としてきた。

そんな中、アキレウスは老ネレウスが傷ついたマカオンを運ぶのをみていて、
「パトロクロスよ、今こそギリシャ勢は私の足元に跪いて、懇願してくるに違いない。もはや、かれらの手には負えぬ事態だ。しかし、その前にネストルが運んでいたのはマカオンであるか、確認してきてくれ」
パトロクロスは、親友の言葉に従った。

老ネレウス、パトロクロスに父の言葉を思い出させる。

老ネレウスは、陣屋にて汗を流し、酒と食べ物でくつろいでいると、パトロクロスが戸口に現れた。彼はパトロクロスの手をとり招き入れ、座をすすめた。

「いや、座っている訳にはいかぬ。傷ついた者がマカオンか、確かめてこいと癇癪持ちの主人に言われたからな」
「傷付いた者は、アガメムノン、ディオメデス、オデュッセウス、アイアスと大勢いる。なのに、なぜ、アキレウスがマカオンだけを気遣っているのか、わしにはわからぬ。アキレウスはせっかくの武勇を自分のためにのみ使おうとしている。自軍が壊滅した後では、必ず後悔することになるぞ。

パトロクロスよ、おぬしがこの戦いに参加する時、父メイノティウスはこう言いつけたのではなかったか
『家柄ではアキレウスが上だが、年齢ではそなたが上だ。アキレウスの力はそなたを遥かに凌ぐが、そなたは理にかなった話をアキレウスに聞かせて忠告し、間違いのないよう導いてやれ』

そなたは、それを忘れている。今でも遅くはない。母テティスか神のお告げでアキレウスが動かぬならば、パトロクロスよ、おぬしがアキレウスのミュルミドネス軍を率いて出陣すれば良い。その時、アキレウスの武具をかりれば、ギリシャ軍は奮いたち、トロイア軍はひるむ。一時でもいいのだ。今は一息つければな」

パトロクロスはアキレウスの元に帰える途中、腿に矢を受け血を流して歩いているエウリュピュロスに出くわした。
「エウリュピュロスよ、言ってくれ。ギリシャ勢はヘクトルを抑えることができるか、それとも、彼の槍に撃たれるほかないのか」
「パトロクロスよ、もはや名だたる武将はみな傷ついている。トロイア勢の気勢は上がるばかりだ。このままでは......」

パトロクロスは、アキレウスから教わった薬でエウリュピュロスの介護を始めた。この薬は、ケンタウロス族ケイロンからアキレウスに伝授された薬であった。

老ネストルとエウリュピュロスの言葉に、パトロクロスの胸はざわめき始めていた。

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