〈アイネイアス、トゥルヌスを倒す〉
アイネイアスはラティウムに上陸し、ラティヌスの娘ラウィニアと結婚しました。彼女の元許婚であるトゥルヌスとの戦いが始まり、両軍は激しく争いました。多くの武将が命を落とし、最終的にアイネイアスが勝利しました。
戦後、アルデアは廃墟となり、「アルデア(蒼鷺:アオサギ)」という名が生まれました。
アイネイアスはラウィニウムを築き、彼の神性は神々によって認められ、彼はローマの「国つ神」として称えられ、息子ユーノスの子孫がロムレスとレムスを生んだのです。
トロイア人vsルトゥリー人
ついに、アイネイアスはラティウム(イタリア)に上陸しました。そこはティベリス川のほとりです。彼は牧神の息子ラティヌスの館を訪れ、その娘ラウィニアを妻とします。
ラウィニアはアルデアのルトゥリー人トゥルヌスの許嫁だったため、トロイア人とルトゥリー人の戦いが勃発しました。この戦いには周囲の国々も巻き込まれ、トゥルヌス側にはエトルリアから追放された僭主メーゼンティウスが加わりました。
一方、アイネイアス側にはアルカディア人を率いるパッランテウムの王エウアンデルとその息子パッラスが加わり、また僭主であったメーゼンティウスを追放したエトルリアの諸都市もアイネイアスに加担しました。
両者の間で激しい戦いが行われ、パッラスやメーゼンティウスなど多くの武将が命を落としました。
トロイア船は柔らかくなり、ニンフに変身!
トゥルヌスは松明を松材で作られたトロイア船に投げ込みました。高いマストまで燃え上がり、船はたちまち炎に包まれます。
松材はイーダー山のものであったため、女神キュベレが激怒しました。
「トゥルヌスよ、私の森で育った木々が燃え盛る炎に焼かれることを、私は決して許さないでしょう」
すると、風の兄弟たちが雷鳴を轟かせ、雨とあられが降ってきました。船という船は、皆海中深く沈みました。
すると、なんということでしょう!
船材は柔らかくなり、船という船は皆ニンフに変わってしまったのです。これを見ても、トゥルヌスは戦いをやめません。トロイア勢も同様です。
もはや、戦いの原因であった娘ラウィニアのことも忘れ、双方ともに勝利のみを望んでいます
アルデア(蒼鷺)の名の由来
最後にアイネイアスとトゥルヌスの一騎打ちが行われ、アイネイアスが勝利します。
トゥルヌスの国アルデアも廃墟となり、その灰の中からは見知らぬ鳥が羽ばたきます。その鳥は悲しい鳴き声を上げ、やせ細った体、青白い色合いで、滅んだ都にふさわしい姿となりました。
アルデア、すなわち「蒼鷺(アオサギ)」の名がこの鳥に残されたのです。
〈アオサギ〉
アイネイアスの神格化
アイネイアスはラウィニアと結婚し、新たな都市ラウィニウムを築きました。
ここにいたり、彼の武勇は全ての神々をも賞賛させました。あのトロイアを敵視していた女神ヘラさえも怒りを静めました。また、息子ユーノスも成長しています。
アイネイアスの母アフロディテは他の神々の根回しもすませ、大神ゼウスの首に手を回して嘆願します。
「息子アイネイアスのことですが、いくらかでも思し召しがあれば、あの子に神性を授けてやってください。あの冥府の河を渡るのは、一度だけで十分なはずです」
「あの男は、天界の神性に相応しい。お前の願いはかなえられた」
神々はうなずき、ヘラさえも微笑んでいます。
アフロディテはハトに引かせた車でラウレントゥムの岸にやってくると、アイネイアスの中の死すべき部分を洗い流すように河神ヌミキウスに命じます。河神は女神の命令を受け入れました。
母神は浄められた息子の体に香油を塗り、甘いネクタルをまぜたアンブロシアでその口をぬぐいます。
こうして、アイネイアスは神となりました。ローマの民は彼を「国つ神」と呼び、神殿と祭壇を建てて、彼を祀ります。彼の息子ユーノス(アスカニウス)の子孫が、ロムレスとレムスです。
〈ラティヌス宮廷のアイネイアス〉