プラッツァー〈リュキア人をカエルに変えるレートー〉
Contents
ヘーラーの怒り
大神ゼウスの愛を受けた女神や女性は、必ずゼウスの妻ヘーラーの酷い仕打ちを受けます。
今回その仕打ちを受けたのは、女神はレートーです。
「この世で一番美しい男神と女神を生むであろう」
との予言もあり、いつもよりヘーラーの怒りは凄まじかったのです。
「日の光の下では、絶対に生ませてはならぬ」
というヘーラーの命令が告示されました。レートーにとって、もはやどこにも出産できる場所はありません。
残っている場所はただ一つ、漂っている浮き島ロードス島。彼女はこのロードス島に行き出産することになりました。出産後、ゼウスがロードス島をしっかり海底につなぎ止めたということです。
こうして生まれたのが、太陽神アポローンと月の女神アルテミス。ヘーラーの嫉妬も納得するほどの美しい子供たちです。
リュキアの農夫の嫌がらせ
出産後もへーラーの告示から逃れるために、レートーは幼子二人をつれてさまよいました。
ある日、レートーたち三人はリュキアという村につきました。レートーはもう歩けぬほど疲れ果て、のどもカラカラです。
その村には、清らかな沼がありました。沼の周りでは、農夫たちが柳や菅(スゲ)をかり集めています
レートーは水際に膝をついて、その水を飲もうとしました。
すると、農夫たちはそれを妨害しました。ヘーラーの命令だったのでしょうか?
レートーは農夫たちに訴えました。
「あなた方は、なぜ私たちに水を飲ませてくれないのですか?
水は自然の恵みで誰が飲んでもいいはずです。私は、ここで体を洗おうとするのではないのです。
ただ、のどの渇きをいやしたいだけなのです。一口の水でも、あの神酒、ネクタルのように思うでしょう。あなた方を命の恩人と思います。
どうか、この子供たちをかわいそうだと思ってください。ほら、ふたりとも可愛い手を差しのべています」
農夫たちの変身
〈レートーと蛙になった農民〉
こんなレートーに心痛まない人はいるでしょうか。それなのに、この愚かな農夫たちは態度を改めないばかりか、ののしり声を親子に浴びせます。
「すぐにもここを立ち去らないと、ひどい目にあわすぞ!」
そればかりか、沼に入ると、その足で泥をかき回し、水を汚しはじめました。
とうとう、女神レートーは怒り、両手を天に差しのべて叫びました。
「この者たちがけっしてこの沼を離れることなく、一生をここで送りますように!」
すると、その通りのことが起こったのです。
農夫たちは、水面から顔を出したり、ひっこめたり、泳ぎはじめたり、岸に上がったりもしました。そして、いつも下卑た声でののしりあっています。
あまりにののしりあっていたため、その口は広く横に裂けてしまいました。首はなくなり、頭と胴はくっつき、背中は緑色になり、腹は白くふくれあがりました。
そう、蛙になってしまったのです。
→エウロペーの誘拐[ゼウスの浮気]
※ヘーラーの嫉妬の代表的なギリシャ神話