1話5分で読めるギリシャ神話

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レートーと蛙になった農夫

リュキア人をカエルに変えるレートー
ヨハン・ゲオルク・プラッツァー〈リュキア人をカエルに変えるレートー〉ミネアポリス美術館

「この者たちがけっしてこの池を離れることなく、一生をここで送りますように!」
女神レートーは、両手を天に差しのべて叫びました。

ヘーラーの怒り
大神ゼウスの愛を受けた女神や女性は、必ず妻のヘーラーの酷い仕打ちを受けます。今度の女神はレートーです。「この世で一番美しい男神と女神を生むであろう」との予言もあり、いつもよりヘーラーの怒りは凄まじかったのです。

「日の光の下では、絶対に生ませてはならぬ」
というヘーラーの命令が出されました。もはやどこにも、出産できるところはありません。もはや、漂っている浮き島ロードス島しか残っていません。彼女はこの島に行き出産することができました。この出産後、ゼウスがしっかり海底につなぎ止めたということです。こうして生まれたのが、太陽の神アポロンと月の女神アルテミスだったのです。ヘーラーの嫉妬も納得するほどの美しい子供たちです。

リュキアの農夫の嫌がらせ
出産後もレートーは幼子二人をつれてさまよい、ある日、リュキアという村につきました。レートーはもう歩けぬほど疲れ果て、のどもカラカラです。その村には、清らかな沼がありました。沼の周りでは、農夫が柳や菅(スゲ)をかり集めていました。レートーは水際に膝をついて、その水を飲もうとしました。

すると、農夫はそれを阻みました。ヘーラーの命令だったのでしょうか?
「あなた方は、なぜ私に水を飲ませてくれないのですか?水は自然の恵みで誰が飲んでも良いはずです。私は、ここで体を洗おうとするのではないのです。ただ、のどの渇きをいやしたいだけです。一口の水でも、あの神酒、ネクタルのように思うでしょう。あなた方を命の恩人と思います。どうか、この子供たちをかわいそうだと思ってください。ほら、ふたりとも可愛い手を差しのべています」

農民の変身
こんなレートーに心痛まない人はいるでしょうか。それなのに、この愚かな農夫たちは態度を改めないばかりか、ののしり声を浴びせます。
「すぐにもここを立ち去らないと、ひどい目にあわすぞ!」
そればかりか、沼に入ると、その足で泥をかき回し、水を汚しはじめました。

とうとう、女神レートーは怒り、両手を天に差しのべて叫びました。
「この者たちがけっしてこの池を離れることなく、一生をここで送りますように!」

すると、その通りのことが起こったのです。

農夫たちは、水面から顔を出したり、ひっこめたり、泳ぎはじめたり、岸に上がったりもしました。いつも下卑た声でののしりあっています。あまりにののしりあっていたため、その口は広く裂けてしまいました。首はなくなり、頭と胴はくっつき、背中は緑色になり、腹は白くふくれあがりました。

そう、蛙になってしまったのです。

レートーと蛙になった農民
フランチェスコ Trevisani〈レートーと蛙になった農民〉

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