1話5分で読めるギリシャ神話

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テレマコスの帰還

テレマコスのルート
〈テレマコスのルート:ピュロスからスパルタへ、そして帰還〉

〈オデュッセイア 第十七歌〉

テレマコス、イタケに帰る

テレマコスが館に帰ってきたのに気づくと、乳母エウリュクレイアはわっと泣き出し、彼のところに駆けよってきた。他の女中も喜び、彼のまわりに集まってきた。母ペネロペイアは涙を流しながら、息子を抱きしめた。
「よく帰ってきてくれた。もはや、再び会えるとは思いませんでした。そなたは、かけがえのない光です。父上の消息について、すべて見たこと、聞いたことを話しておくれ」

「母上、求婚者の企みを逃れて帰れましたが、先にすることがあります。これから、私は帰るとき同行した客人を迎えに、集会場へまいります。ペイライオスのところで世話をしてくれるよう頼んでおいたのです」

テレマコスが集会場に行くと、求婚者たちが彼を取りまいた。が、槍の名手ペイライオスが客人とともにやってくると、テレマコスは難なく二人の元へ行き、客人を館に連れて帰ってきた。それから、母ペネロペイアが聞きたいことを語った。

メネラオス王の話

「ピュロスのネストール殿は父上の消息を知りませんでしたが、スパルタのメネラオス王を訪ねよと助言してくれました。メネラオス王に事情を説明すると、王は『無法な求婚者めが、勇者オデュッセウスの寝所に入って、夫人と寝ようなどと大それた気を起こすとは』と怒り、父上については海神ネーレウスの話をしてくれました。『オデュッセウスは、無理に引き留めている仙女カリュプソのもとにいて、船もなく船員もいないので帰る手段がないと大そう悩んでいるのを見かけた』ということでした」

ペネロペイアは夫の消息に動揺した。すかさず、客人である預言者テオクリュメノスは
「オデュッセウス王はすでに帰っておいでになる。やがて、求婚者に鉄槌を下しましょう。私は船上でかかる予兆を示す鳥を見、テレマコス殿に声をかけました」
「客人よ、どうかあなたが仰る通りになって欲しいもの。さすれば、そなたは歓待とたくさんの贈り物をわたしから受けましょう」

オデュッセウスとカリュプソ
アーノルド・ベックリン〈オデュッセウスとカリュプソ〉

性悪な山羊飼いメランティオス

その頃、豚飼いエウマイオスはオデュッセウスを連れて、街に向かっていた。街の泉で、二人は性悪な山羊飼いのメランティオスに会った。山羊飼いはすかさず嫌味を言う。
「いやはや、卑しいやつが卑しいやつを連れておる。おい、豚飼い、その豚野郎をどこに連れて行く。王の館へ行くならば、求婚者から投げられる無数の足台が飛びかい、肋骨に当たって砕け散るだろう」
こう言うと、すれ違いざまにオデュッセウスの腰を足でけった。オデュッセウスは殴り殺してやろうかと思ったが、かろうじて、はやる気持ちを抑えた。
山羊飼いメランティオスは、オデュッセウスの館に急いだ。その後、オデュッセウスと豚飼いエウマイオスも館にやってきた。

オデュッセウスの館の広場にて

館の前には、かつては俊足の老いた犬アルゴスがいた。オデュッセウスと再会すると、犬はすぐに息を引き取った。エウマイオスは、先に館の中へ入ると、テレマコスが彼を側に呼んだ。ヨボヨボ姿のオデュッセウスも中に入った。すると、つかさず、山羊飼いメランティオスがアンティノオスに進言した。
「この他国者をここに案内してきたのは、豚飼いエウマイオスです。わしゃ、その男の素性は知りません」

オデュッセウスは求婚者の間を物乞いしながら回っていた。アンティノオスのところに来ると、いつもの嘘の身の上話をした。
「一体いかなる神霊が、この厄病神を遣わされたのであろう」と、アンティノオス。
それに対して、オデュッセウスは
「あなたはその立派な風貌にふさわしい心がないのじゃな。他人の食膳につき、山ほどのご馳走が並んでいるのに、パンのひとかけらも施してくださらぬ。あなたは自分の身上からは、塩の一粒すらも与えぬだろうな」
「かかる雑言を吐くからには、もはやお前は無事にこの館から退散できぬぞ」
そう言うと、アンティノオスは足台をオデュッセウスの右肩に投げつけた。テレマコスは心中恐るべき報復を思いつつ、黙って首を振るだけであった。

賢明なペネロペイア、豚飼いを呼ぶ

広間のことを聞いたペネロペイアは、豚飼いを呼んで
「エウマイオスよ、あの他国の者にここへ来るように言っておくれ。いろいろ諸国を歩いているなら、オデュッセウスのことを何か知っているかもしれぬからな」
「客人よ、テレマコス殿の母上ペネロペイア様がおぬしを呼んでおられる。ご主人様のことをお聞きしたいそうだ」
「すぐにも、ペネロペイア様に一部始終をお話ししたい。だが、あの求婚者たちが恐ろしい。今も足台を投げつけられたからな。さらば、求婚者たちに気付かれぬ日暮れまでお待ちくださるよう伝えてくれ」
豚飼いがペネロペイアに伝えると、
「そこまで考えが回るようなら、あの他国の者は愚か者ではなさそうじゃ」

豚飼いエウマイオスはテレマコスに帰る挨拶をすませると、牧場に帰っていた。求婚者たちは、いまだ踊りと歌に興じていた。

ペネロペイア
〈ペネロペイア〉