1話5分で読めるギリシャ神話

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グラウコスとスキュラ

グラウコスとスキュラ
バルトロメウス・スプランヘル〈グラウコスとスキュラ〉美術史美術館(ウィーン)

「水が恋しい!水の中に入りたい」
グラウコスは、人間の漁師でした。
ある日、川にある島の草の上に魚を並べて、分けていました。すると、今までぐったりしていた魚が、生き返ったかのようにピンピン飛び跳ね、川の中に飛び込んでしまいました。

「この草に何か秘密があるのだろうか?」
グラウコスは草を引くぬくと、ムシャムシャ食べてみました。すると、髪と背はみずみずしい青色になり、腰から下は魚になってしまいました。

「あぁ、水が恋しい!水の中に入りたい」
彼は人魚のような神に変身したのです。川の神々も彼を受け入れ、海の神オケアノスとその妻テテュスも海の神々の仲間にし、残っていた人間臭さもすべて取り除いてやりました。

乙女のスキュラ
ある日、グラウコスは乙女スキュラに恋をしました。彼女は天気のよい日には、浜辺の入り江にきて水に入ったり、岩場の影で涼んだりしていました。

そこへグラウコスが近づいてきて言いました。
「お嬢さん、私は怪獣でもなければ、怪物でもありません。こう見えても、ポセイドーンの息子トリトンよりも上位の神なのです。そして...」
スキュラは最後まで聞かず、背を向けて逃げていってしまいました。

グラウコスは苦悩しました。
「そうだ、あのキルケに相談してみよう」
キルケは、オデュッセイアにも出てくる魔女です。グラウコスは、彼女に恋の薬草でも作ってもらおうと思ったのです。

魔女キルケの告白
「スキュラの愛をえたい、どうか彼女が私を愛する薬を作ってしてほしい」
キルケは、グラウコスに告白しました。
「あなたは素晴しい神なのだから、そんな逃げるような乙女はやめて、あなたを愛してくれる乙女に目をむけなさい。あなたほどの神ならば、どんな乙女も恋に落ちてしまいます。私だって...じつは、そうです。いろんな薬草を知っているからと言って、この私の火をしずめることはできません」
グラウコスは、答えてました。
「海の底に木が生えたり、海の藻が山に生えたりしても、私の愛は変わらない。この愛は、スキュラだけのもの」

怪物スキュラの誕生
キルケは腹立たしくなりましたが、恋するグラウコスには何もできません。その怒りは、スキュラに向けられました。スキュラが行く入江に毒薬をまき、不気味な呪文を8回唱えたのです。スキュラは何も知らず、いつものように入江にくると、水の中に入りました。すると、彼女の腰のまわりに凶暴な犬が6頭現れ、口をあけて彼女をおびえさせます。彼女は逃げましたが、犬たちも同じ早さで彼女を追いかけてきます。

そして、逃げているうちに、スキュラは悲しい事実に気づいたのです。
「あぁ、なんということでしょう。この犬たちは私の体の一部なんだわ」

スキュラは、もう動けなくなりました。また、心も怪物のように邪悪にかわり果てていきました。こうして、怪物スキュラが誕生したのです。そして、近くに来た船を見つけると、6頭の犬が船員6人を捕まえては食べてしまいます。後にここを通ったオデュッセウスの子分も食べられました。

その後、怪物スキュラはそのままの姿で岩に変わり、人を襲うこともないのですが、今でも船乗りたちはこの岩を恐れているということです。岩に変わったスキュラのそばを、あのアイネイアースの船も通過しました。

一方、グラウコスはキルケの愛を一時受け入れましたが、人間を怪物にかえ虐待するキルケに愛想をつかして離れていきました。

スキュラとカリュブディス〉参照
魔女キルケ〉参照
ローマ建国の祖 アイネイアース2〉参照

キーツの『エンデュミオーン』では、キルケはスキュラを溺死させました。それを知ったグラウコスはキルケから離れましたが、彼女に老人にされてしまいました。グラウコスはキルケに殺されたスキュラと人々の死体を1000年間拾い集めながら暮らすことにしました。後に眠れる若者、エンデュミオーンがスキュラや人々を生き返らせ、グラウコスも若き姿に戻してやりました。

スキュラ
〈スキュラ〉ナポリ国立考古学博物館 出典