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キルケ
ウォーターハウス〈キルケ〉

浮島アイオリエに住むアイオロス

キュクロプスの難を逃れたオデュッセウスたちが、次に着いたのが浮島アイオリエでした。この島には神々の寵愛を受けて住んでいたのがアイオロス。彼は、ゼウスにより風の司に任じられています。

オデュッセウスたちは、ひと月の間歓待を受けました。オデュッセウスたちが出港に際して航海が穏やかになるように、アイオロスは吹きすさぶ様々な風を閉じ込めた革袋をオデュッセウスに渡しました。

9日間昼夜もなく、オデュッセウスたちは漕ぎに漕いで、故郷近くまでやってきました。ところが、オデュッセウスが安心から睡魔に襲われた時、部下たちが革袋を開けてしまったのです。金銀が入っていると勘違いしたからです。

凄まじい疾風が起こり嵐となり、なんとオデュッセウスたちは浮島アイオリエに逆戻りしてしまったのです。
「オデュッセウスよ、どうしてまた戻ってきたのか」

事情を話し、再度助けを乞うオデュッセウス。
「世にも忌まわしい男だな、即刻この島を立ち去ってもらいたい」
アイオロスは、もはや助けてはくれませんでした。

荒海の中、7日目に着いたのがテレピュロスの町です。ここに住むのはキュクロプスのごとき巨人ライストリュゴネス族。オデュッセウスたちは海岸でいきなり襲われるという、まさに悪夢に遭遇。捕まった部下は焼き鳥のように串刺にされて食べられてしまいました。

結果、残ったのはオデュッセウスの船一隻のみ44名になっていました。

魔女キルケのアイアイエ島

テレピュロスの町を離れ、やっとの思いでたどりついたのが魔女キルケの住むアイアイエ島。キルケはイアソンのアルゴー船の大冒険に出てくる魔女メデイアの従妹です。

オデュッセウスたちは、疲れから2日間はただただ横になっていました。3日目の朝、オデュッセウスはこの島にはどんな人間、怪物が住んでいるのか、一人探索に出かけました。見晴らしの良い岩だらけの高見に出ると、密生した木立の中に、ひとすじの煙が立っているのが見えました。

オデュッセウスは浜辺に戻ると、残った44名を半分に分け、自分とエウリュロコスを隊長にしました。そして、どちらの隊が煙を確認に行くか、くじで決めました。エウリュロコス隊22名が出発することになりました。

キルケバーカー〈キルケ〉

故郷を忘れる毒(キュルケオーン)

一行が木立の中のキルケの館までくると、館の前には狼や獅子などの凶悪な動物が徘徊していました。

一行は驚きましたが、動物は近くに来るとじゃれたりしてとても大人しいのです。それもそのはず、この動物たちはキルケに姿を変えられた人間でしたが、心は人間のままなのです。

館の中からは、機を織る美しい歌声が聞こえてきます。一行は扉を叩いて、呼びかけました。キルケは扉を開けると、一行を中に招き入れました。みんなキルケの後について生きましたが、エウリュロコスだけは何か変な予感がして中に入らず、中をうかがっていました。

キルケに豚にされたオデュッセウスの部下

キルケは一行にソファーと椅子をすすめると、チーズと小麦粉と蜂蜜をプラムモスの葡萄酒にまぜました。そして、故郷を忘れる毒(キュルケオーン)を入れたのです。この毒入りの飲み物を飲んだ一行をキルケが杖で叩くと、なんとみんな豚に変身してしまいました。

「さあ、豚小屋に行って、仲間と一緒に寝ておいで」
一部始終を驚きとともに見ていたエウリュロコス。急いでオデュッセウスの元に帰り、仲間におこった悲惨な運命を報告しました。

残っていた部下たちは悲しみましたが、オデュッセウスはすぐに助けに行こうとしました。エウリュロコスは反対しましたが、彼は「これは、頭のつとめである」と出かけて行ったのです。