ギリシャ神話には、多くの神々や英雄が登場しますが、物語をより魅力的にする存在が「魔女」たちです。彼女たちは強力な魔術を操り、運命をも左右することができました。
中でも、イアソンを愛しながらも恐ろしい復讐を遂げたメデイア、オデュッセウスを惑わせた情深い魔女キルケ、そして人間はもちろん、大神ゼウスすら逆らえない運命の三女神モイライは、神話の中でも特に印象的な存在です。
彼女たちはどのような魔術を使い、どんな運命をたどったのでしょうか? ギリシャ神話の「魔女BEST3」の魅力と謎に迫ります。
魔女メデイア
メデイアは、良くも悪くも純粋な存在です。彼女はイアソンに一目惚れし、父に背いて黄金の羊の皮を手に入れる手助けをし、イアソンと共に逃げました。このとき、弟も一緒でした。
しかし、父の追っ手が迫ると、メデイアは弟を殺し、遺体を切り刻んで海へ投げ捨てます。追っ手が遺体を回収する間に逃げるためでした。彼女の心には、弟を殺したことへの悲しみは一切ありませんでした。
この残酷な行為は、イアソンや周囲の人々に不気味な印象を与えました。
その後、メデイアはイアソンに裏切られ、二人の子供を……
…〈メーディアに永遠の愛を誓うイアソン〉
魔女キルケ
「悪女の深情け」という言葉はありますが、「魔女の深情け」という言葉はありません!
魔女キルケは、情の深い魔女です。女神アテナに止められるまでオデュッセウスの世話をし、彼との間に子供ももうけました。
また、魔女である彼女は、自然の理や死後の世界にも精通しています。オデュッセウスが冥界で預言者テイレシアスから助言を得られるよう手配し、その手順までも詳しく教えました。
なぜ、キルケはこれほどまでにオデュッセウスを助けたのでしょうか?
それは、恋です。彼女を打ち負かした唯一の男がオデュッセウスだったからです。しかし、オデュッセウスはあらかじめヘルメスから、キルケに勝つ方法を教わっていました。
彼女ほどの魔女ならば、それを悟っていたはずですが……
>>魔女キルケに豚にされるオデュッセウスの部下[第10歌 前編]
ウォーターハウス〈魔女キルケ〉
運命の三女神モイライ
「モイラ」とは「割り当て」を意味する単数形で、複数形が「モイライ」です。
- クロトー
紡ぐ者:運命の糸を誕生から紡ぎ出す - ラケシス
運命の図柄を描く者:糸の長さや太さを決める - アトロポス
不可避のもの:最後に糸を断ち切る(死を司る)
運命の三女神が「魔女」に分類されるかどうかは議論の余地がありますが、絵画に描かれた彼女たちの姿は、まさに魔女そのものです。
また、運命の女神は、死の神秘と結びつくことから、人々の関心を集めてきました。そのため、占いに熱中する人が多いのも無理はありません。
あの大神ゼウスですら、運命の三女神には一目置いていました。ギガントマキアの戦いでテュポーンに敗れた際、ゼウスは彼女たちの助けを受けて立ち直ったのです。
ゴヤ〈運命の女神アトロポス〉
ギリシャ神話の魔女BEST3[まとめ]
ギリシャ神話に登場する魔女たちは、単なる「悪女」ではありません。彼女たちは、愛や復讐、そして運命そのものと深く関わりながら生きていました。
メデイアは愛のためにすべてを捧げ、裏切られたことで恐るべき行動に出ました。キルケは、愛する者を助けながらも、最後はオデュッセウスを手放さざるを得ませんでした。そして、運命の三女神モイライは、神々でさえ逆らえない「運命の糸」を操り続けています。
彼女たちの物語は、時に恐ろしく、時に切なく、現代の私たちにも強いインパクトを与えます。ギリシャ神話の「魔女」の魅力は、時代を超えて語り継がれていくのかもしれません。