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ヘクトル〈ヘクトル〉

防壁をめぐる戦い

大アイアスと小アイアスがギリシャ軍を叱咤激励しています。トロイア軍も一歩も引かず、激しく戦います。ゼウスは自分の子サルペドンを防壁破壊のために遣わしました。

サルペドンは、あのエウロペの子。彼は、同郷の武将に声をかけて、
「グラウコスよ、我らがリュキエ勢の力を見せつけようではないか。『さすが、リュキエの殿様は並みのお人ではない』言われよう」

二人はリュキエの大軍を率いて進みます。
彼らが向かった先は、メネステウスが守っています。彼は身震いして、両アイアスのところに援軍を頼むよう使者を送ります。

「トウテスよ、できれば両アイアスを呼んできてくれ。あの勇猛盛んなリュキエ勢が攻め寄せてきたとな。両アイアスが駄目なら、大アイアスと弓手のテウクロスだけでも呼んできてくれ」

テラモンの子である大アイアスと弓の名手テウクロスの兄弟は、すぐにメネステウスの援護に向います。そこでは、すでに激しい戦いが始まっています。

攻めるサルペドンとグラウコスのリュキエ勢。防壁を守るのは大アイアスとテウクロスとメネステウス。互角の戦いをしています。

ゼウスの神慮に導かれるヘクトル

ゼウスの神慮は、今はヘクトルに手柄を上げさせることです。

「奮起せよ、トロイア軍よ。壁を打ち破り、炎々たる猛火を船にかけよ」
ヘクトルは二人でも動かない大きな石を持ち上げると(ゼウスが軽くしてやっているのは言うまでもありません)、門扉に向かって投げつけました。

門扉の板は、破れて四方に飛び散ります。すかさず、ヘクトルは防壁の中に躍り込みました。

ヘクトルの形相は夜の如く不気味で、青銅の武具は暗く照り輝き、その手には二本の槍を持っています。鬼神のごとくヘクトルが門内に突入すれば、もはや神でさえ防ぎ止めることはできません。その眼は赤く炎のごとく燃え、トロイア軍に防壁に突入して戦えと命を下していました。

悲しいかなヘクトル、今はまさに絶頂の時!

ホメロス イリアス 上 (岩波文庫)おわり