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オデュッセウスとキルケスプランヘル〈キルケとオデュッセウス〉

ヘルメスの忠告

キルケの館へ向かったオデュッセウスの前に神の使いヘルメスが現れました。神の使いは珍しい薬草を取り出し、忠告しました。

「キュルケオーンを調合した飲み物の毒はこの薬草が防ぐので、すぐに剣を抜いてキルケに立ち向かうこと。また、寝室に誘われても決してもすぐには応じぬこと。お前の精力を奪わないように、キルケにしっかり誓言させること」

オデュッセウスはキルケの館を訪ねると、キルケが飲み物をすすめるままに飲みほしました。
「さあ、豚小屋に行って、仲間と一緒に寝ておいで」

杖で叩いても豚にならないオデュッセウス。驚くキルケ!
すかさず、オデュッセウスは剣を抜いておどりかかります。キルケは、オデュッセウスの足元にひれ伏しました。

「そなたは、どういうお人ですか? この薬を飲んでも魔法がきかぬとは驚くばかり。その胸には魔法もかからぬ心が宿っているのであろうか。かつて、あのヘルメスが言っていたオデュッセウスに違いあるまい。剣をおさめ、さあ私の寝台にあがり、愛の契りを交わそうではないか」

しかし、オデュッセウスはヘルメスの忠告通りに言いました。
「私を裸にして、精気を抜くつもりであろう。断じてそうはせぬと誓言してくれ」
キルケが誓言すると、ふたりは寝台に上がり、愛の契りを楽しみました。

オデュッセウス、豚になった部下を人間に戻させる

キルケとオデュッセウスファン〈キルケとオデュッセウス〉

その後食事になりましたが、オデュッセウスは手を付けません。キルケは毒などは入っていないので食べるよう促しましたが、オデュッセウスは言いました。
「部下を元の人間に戻してくれ。そうでなければ、食事する気にならない」

キルケは豚小屋に行くと、部下を元の人間に戻しました。さらに驚いたことには、彼らはかつての姿より若く逞しくなっていました。

オデュッセウスは浜辺の部下のところへ一度戻り、今までのことを話し、キルケの館で食事をすることを告げました。みんな同意しましたが、エウリュロコスだけは反対しました。やむなく彼を残して出かけることになりました。

すると、彼もしぶしぶついてきました。頭であるオデュッセウスには逆らえないのです。こうして、オデュッセウスたちはキルケの館で飲み食いするようになり、たちまち一年が経ってしまったのです。

オデュッセウス、冥界への旅立つ

ある日、部下の一人がオデュッセウスに訴えました。
「このままここにいて、故郷へは帰らないのですか?」
すると、みんな故郷を思い、はらはらと泣き出しました。

このことをキルケに伝えると、キルケは一行の旅立ちを受け入れました。キルケは、旅立つオデュッセウスに忠告しました。

「冥界に行き、テーバイの予言者テイレシアスに先々なにが起こるか訊ねなさい」
そして、冥界への行き方やいけにえに捧げる牡羊と黒い牝羊それぞれ一頭もあたえました。

オデュッセウスは部下たちに冥界行きのことを伝えました。まっすぐに故郷イタケへ向かうと思っていた部下たちはがっかりしました。そのうえ、髪をかきむしり嘆く部下もいました。しかし、オデュッセウスたちは、冥界に向け旅立ったのです。