1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

ニオベーの悲哀、女神レートーの怒り

(更新日:2021.02.11)

ニオベの子供たちの死
ジャン・フランソワ・ド・トロイ〈ニオベの子供たちの死〉

「この一番下の子だけは助けてください。お願いです」

ニオベーは、最後に残った末っ子の娘を抱きしめたまま叫びました。
なぜこうなってしまったのか、彼女にはわかっていました。
が、その後に起こったことにより、彼女の意識は遠のいていきました。

テーバイの王妃ニオベーの誇り

ニオベーの両親は、ゼウスの子タンタロスと女神ディオーネー。
類まれなる美貌の彼女には、夫であるテーバイ国王アンピーオーンの名声もありました。そして、なにより誇りにしていたのが、7人の息子と7人の娘でした。ですので、誰もがうらやむ幸福な母親になれたはずです。が、彼女の誇りが、女神への不遜な態度をとらせてしまいました。

女神レートーを祝う例年の祭りの日

黄金と宝石で光り輝く衣装を身につけたニオベーは、群衆の前で言い放ちました。

「なんとばかげたことであろう!
お前たちは目の前に立っている私より、まだ目にしたこともない女神レートーのほうを崇めると言うのか。
どうして女神などが崇拝されて、私にはなんの敬意も払わないのか?

私には7人の息子と7人の娘がいる。
が、女神にはアポローンとアルテミス、たったの2人の子しかいないではないか。
さぁ、お前たち、こんな女神の祭りをやめて、さっさと立ち去るがよい!」

民である人々は王妃ニオベーの言葉に従い、祭りを途中でやめて帰ってしまいました。

女神レートーの怒り

それを天界から見ていたレートーは憤慨して言いました。

「私は今日までお前たち2人を誇りにしてきました。
大神ゼウスの妃ヘーラーを除いては、けっして他の女神に劣らぬと思っています。
その私が、今や自分はほんとうに女神なのかと疑い始めています。
お前たちが母さんの尊厳を守ってくれないと、人間たちの崇拝をうばいとられてしまいます。あの人間の女に...」

「母上、それ以上おっしゃいますな。
話は処罰を送らせるだけですから」
息子アポローンは母がそれ以上言うのをさえぎると、妹アルテミスとともにテーバイの塔の上に降り立ちました。

7人の息子を射るアポローンとアルテミスの矢

広場では、街の若者たちが戦争のまねをして遊んでいました。その中にニオベーの息子たちもいました。
長男イスメーノスは、手綱を取り二輪戦車を駆っていましたが、
突然「あっ!」と叫び地上に倒れました。
矢に射られたのです。もうひとりの息子はそれを見て、戦車を飛ばして逃げようとしました。しかし、矢はなんなく追いついて、彼をも殺したのです。

もう2人の息子は、運動場で格闘技をしているところを、1本の矢が2人ともに貫きました。
それを見ていた2人の兄弟は、助けようと近づきましたが、彼らもまた射殺されてしまいました。
「助けてください、神々さま!」
最後に残ったイーリオネオスは、両腕を天にさしのべ叫びました。
これを見たアポローンは彼を助けてやりたいと思ったのですが、矢はすでに放たれていて、どうすることもできません。

街は恐怖で混乱しましたが、二オベーには何が起こったのか分かっていました。
しかし、神がそのようなことをするとは、とても信じられません。
そして、二オベーの夫アンピーオーンはこの打撃に耐えられず、自ら命を絶ってしまいました。

それでも、私には7人の娘がいる!

ニオベーは死んだ息子たちに接吻をすると言いました。
「残酷なレートーよ、私の苦悶で、お前の残忍な心を満足させるがいい。
それでも、私には7人の娘がいる!」

7人の娘たちは死んだ兄弟の前に集まっていました。その時です、またもや弓の音と矢の走る音が聞こえました。
矢は、逃げようとした娘、隠れようとした娘、ただおろおろしている娘たちを次々に殺しました。
こうして、娘たち6人がまたたく間に死んでいったのです。

ニオベーと末娘
〈ニオベーと末娘〉

「この一番下の子だけは助けてください!」

ニオベーは、最後に残った末っ子の娘を抱きしめたまま叫びました。
しかし、その願いもかなわず、神の放った矢は、末っ子を射抜きました。末っ子は死んだまま母の足を抱きしめていました。

夫と子供14人に死なれたニオベー。
彼女の神経は麻痺し、風が吹いても髪の毛は動かず、頬には色つやもなく、もはや生きている気配もありません。
その場に立ちすくんだまま、もはや動くこともありません。
あの饒舌だった口も動かず、首は曲がらず、手足も動かず、血液も流れを止め、とうとう彼女は石になってしまいました。
が、その目からは涙が止めどなく流れています。

石になったニオベーは、一陣の風により故郷の山の上に運ばれていきました。今でもニオベーの石はそこにあり、止めどなく水が流れているということです。

リューディア地方のシピュロス山にあるニオベーの泣き岩
〈リューディア地方のシピュロス山にあるニオベーの泣き岩〉

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