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ニオベの子供たちの死トロイ〈ニオベの子供たちの死〉

ニオベの誇り

ニオベの両親は、ゼウスの子タンタロスと女神ディオーネー。類まれなる美貌の彼女には、夫であるテーバイ国王アンピーオーンの名声もありました。

そして、なにより誇りにしていたのが、7人の息子と7人の娘でした。ですので、誰もがうらやむ幸福な母親になれたはずです。

しかし、彼女の誇りが、女神への不遜な態度をとらせてしまいました。

レトを祝う例年の祭りの日

黄金と宝石で光り輝く衣装を身につけたニオベは、群衆の前で言い放ちました。
「なんとばかげたことであろう! お前たちは目の前に立っている私より、まだ目にしたこともない女神レトのほうを崇めると言うのか。どうして女神などが崇拝されて、私にはなんの敬意も払わないのか?

私には7人の息子と7人の娘がいる。しかし、女神にはアポロンとアルテミス、たったの2人の子しかいないではないか。
さぁ、お前たち、こんな女神の祭りをやめて、さっさと立ち去るがよい!」

民である人々は王妃ニオベの言葉に従い、祭りを途中でやめて帰ってしまいました。

レトの怒り

それを天界から見ていたレトは憤慨して言いました。

「私は今日までお前たち2人を誇りにしてきました。大神ゼウスの妃ヘラを除いては、けっして他の女神に劣らぬと思っています。その私が、今や自分はほんとうに女神なのかと疑い始めています。

お前たちが母さんの尊厳を守ってくれないと、人間たちの崇拝をうばいとられてしまいます。あの人間の女に...」

「母上、それ以上おっしゃいますな。話は処罰を送らせるだけですから」
息子アポロンは母がそれ以上言うのをさえぎると、妹アルテミスとともにテーバイの塔の上に降り立ちました。

アポロンとアルテミスの残虐性

広場では、街の若者たちが戦争のまねをして遊んでいました。その中にニオベの息子たちもいました。

長男イスメーノスは、手綱を取り二輪戦車を駆っていましたが、
突然「あっ!」と叫び地上に倒れました。

矢に射られたのです。もうひとりの息子はそれを見て、戦車を飛ばして逃げようとしました。しかし、矢はなんなく追いついて、彼をも殺したのです。

もう2人の息子は、運動場で格闘技をしているところを、1本の矢が2人ともに貫きました。

それを見ていた2人の兄弟は、助けようと近づきましたが、彼らもまた射殺されてしまいました。
「助けてください、神々さま!」

最後に残ったイーリオネオスは、両腕を天にさしのべ叫びました。これを見たアポロンは彼を助けてやりたいと思ったのですが、矢はすでに放たれていて、どうすることもできません。

街は恐怖で混乱しましたが、二オベーには何が起こったのか分かっていました。

しかし、神がそのようなことをするとは、とても信じられません。そして、二オベーの夫アンピーオーンはこの打撃に耐えられず、自ら命を絶ってしまいました。

ニオベ「それでも、私には7人の娘がいる!」

ニオベは死んだ息子たちに接吻すると言いました。
「残酷なレトよ、私の苦悶で、お前の残忍な心を満足させるがいい。それでも、私には7人の娘がいる!」

7人の娘たちは死んだ兄弟の前に集まっていました。その時です、またもや弓の音と矢の走る音が聞こえました。

矢は、逃げようとした娘、隠れようとした娘、ただおろおろしている娘たちを次々に殺しました。こうして、娘たち6人がまたたく間に死んでいったのです。

ニオベと末娘〈ニオベと末娘〉

「この一番下の子だけは助けてください!」
ニオベは、最後に残った末っ子の娘を抱きしめたまま叫びました。

しかし、その願いもかなわず、神の放った矢は、末っ子を射抜きました。末っ子は死んだまま母の足を抱きしめていました。

夫と子供14人に死なれたニオベ。
彼女の神経は麻痺し、風が吹いても髪の毛は動かず、頬には色つやもなく、もはや生きている気配もありません。その場に立ちすくんだまま、もはや動くこともありません。

あの饒舌だった口も動かず、首は曲がらず、手足も動かず、血液も流れを止め、とうとう彼女は石になってしまいました。

しかし、その目からは涙が止めどなく流れています。
石になったニオベは、一陣の風により故郷の山の上に運ばれていきました。今でもニオベの石はそこにあり、止めどなく水が流れているということです。

アポロンの残虐性が現れたマルシュアスとの勝負

リューディア地方のシピュロス山にあるニオベの泣き岩〈リューディア地方のシピュロス山にあるニオベの泣き岩〉