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ギリシャ神話ホームイリアス|【第10歌】前編:オデュッセウス、敵の偵察へ

【第10歌】前編:オデュッセウス、敵の偵察へ

(更新日:2021.04.23)

アキレウスの怒りからの不在が、徐々にその影響が深刻化してきました。
アガメムノン、オデュッセウス、アイアスなどの武将たちは不安で夜もよく眠れません。ましてや、メネラオスはヘレネーの夫、一番責任を感じています。
そんなギリシャ軍のトップたちは不安から、ディオメデスの提案でトロイア軍の情報を探ることにしました。ディオメデスとオデュッセウスがその任に。アテナも闇夜の中をアオサギの声で導きます。

ディオメデスとオデュッセウス
〈ディオメデスとオデュッセウス〉

【イリアス 第10歌 前編】

眠れぬアガメムノンと弟メネラオス

アガメムノンは、ヘクトルの猛威の前に心は震え、眠れぬ夜を過ごしていました。
「ネストルならば、今の危機を救う策を一緒に考えてくれるかもしれぬ」
そう思うと、アガメムノンは武装を整え陣屋を出ようとしていました。

同じく不安に取り憑かれていた弟メネラオス、
「この戦いはもともと妻ヘレネーを奪還せんとトロイアに来て、それが今苦境に立たされている」
と、兄アガメムノンの陣屋にやってきて言いました。

「兄者、部下の誰かにトロイア軍の様子を探りに出すつもりか」
「メネラオスよ、どうやらゼウスは、ヘクトルの備えた生贄の方がお気に召したようだ。アイアスとイドメネウスを呼んできてくれ。わしは、ネストルを呼びに行く。あとで、警備の場所で落ち合おう」

アガメムノン、老ネストルのもとへ

「わしだ。ゼウスの神意から、わしには安らかな眠りが降りてこぬ。わが軍の苦難が心から離れぬ。心臓が飛び出し、震えが止まらぬのだ。お主もそうなら、一緒に警備の場所に来てもらいたい。いつトロイア軍が攻めてこぬとも限らぬからな。また、見張りが眠りこけていては困るからな」

老ネストルはそれに答え、
「ゼウスがヘクトルの思い通りになさるはずがない。アキレウスが激しい怒りから気持ちを変えてくれれば、今度はヘクトルが多くの悩みを持ち苦しむことになる。
アガメムノンよ、喜んでお伴しよう。オデュッセウス、ディオメデス、アイアス、イドメネウスらも起こそう。
ところで、メネラオスはどうした。彼こそ、一人ずつ訪ね、頭を下げて頼む労をとるべきであろう」

「メネラオスも眠ることができず、わしのところにやって来た。すでにアイアスとイドメネウスを呼びにやっている」
アガメムノンと老ネストルは、オデュッセウスとディオメデスの陣屋へむかいます。
こうして、名だたる武将たちが、警備の場所に集合しました。

オデュッセウスとディオメデスの侵入

老ネストルは、提案しました。
「誰か、敵情視察に出てくれぬか。ヘクトルはじめトロイア勢が今後どんな計画を立てているか知りたいと思う」
ディオメデスがそれに答えて、
「わしは、潜入したくて胸がうずいていた。しかし、一人では考えが狭く、行動の選択肢も少ない。誰か、わしと一緒に行ってくれぬか」
オデュッセウスをはじめ、多くの武将が名乗りを上げました。

ディオメデスは、知略縦横のオデュッセウスを選びました。
二人は武具に身を固めると、夜の闇に消えていきました。女神アテナはアオサギを彼らの側に飛ばし、二人を助けます。闇夜で鳥の姿が見えませんが、その声だけは二人に聞こえます。二人は女神に感謝しました。

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