1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

パリスの審判[トロイア戦争の原因]

(更新日:2021.09.14)

●ホメロスの『イリアス』は、トロイア戦争の10年間の最後の一年しか書かれていません。10年目の「アキレウスの怒り」から始まります。
●トロイア戦争の原因となったこの『パリスの審判』は書かれていません。また、アキレウスの死やトロイアの木馬による陥落もありません。
●『イリアス』は、10年目の「アキレウスの怒り」から始まり、ヘクトールの死と葬儀までが謳われています。

ペレウスとテティスの結婚
ヤーコプ・ヨルダーンス〈ぺーレウスとテティスの結婚〉三女神が黄金のリンゴ(中央)を争っています。武装したアテーナのすぐ前に裸のアフロディーテ、反対側にぜウスの右横にヘーラー。
なんと右端の二人がこの日の主役です。

争いを呼ぶ黄金のリンゴ

アキレウス両親ぺーレウスとテティスの結婚式の時、すべての神々が招待されました。しかし、争いの女神エリスだけはふさわしくないと、結婚式に招かれていません。怒った女神は、「一番美しい女神へ」と書いた紙とともに一個の黄金のリンゴを宴の間に投げ入れました。

ゼウスの妻ヘーラー、美の女神アフロディーテ、知恵の女神アテーナは、それぞれ「黄金のリンゴはわたしのもの」と主張。ゼウスはこの厄介な審判を自分でくだすのをさけ、イーデー山で羊飼いをしている美しいパリスに任せてしまいました。

パリスはトロイアの第二王子です。出生時、将来トロイアを滅ぼす原因になるとの不吉な予言があり、イーデー山に追放されていたのです。

三女神のパリスへの提示

アテーナは「戦場での誉れと名声」を
ヘーラーは「権力と富み」を
アフロディーテは「人間の中で一番美しい女性」を
それぞれパリスに約束し、自分に有利な審判をしてもらおうとしました。

人間なら女神たちを前に恐れおののくところです。が、パリスらしいというべきでしょうか! ためらいもせず、アフロディーテに黄金のリンゴを渡しました。

パリスの審判
フィリップ・パロット〈パリスの審判〉

ヘレネーの略奪

「人間の中で一番美しい女性」それはゼウスとレーダーの娘ヘレネー。かつて、ヘレネーにはたくさんの求婚者がいました。彼女が誰を選ぶか決める前に、求婚者の一人オデュッセウスがある提案をしました。「求婚者は結婚後も彼女をあらゆる危害から守り、必要とあれば戦いをも辞さぬ」と。

ヘレネーが夫に選んだのは、アトレウス家の次男メネラオス。長男は、トロイア戦争のギリシャ総大将アガメムノンです。

メネラオスの館に、今は王子としてトロイアに戻っていたパリスと兄へクトールが、ギリシャとの協定を結ぶためにやってきていました。

その時、女神アフロディーテの手助けもあり、パリスはヘレネーとすぐに恋に落ちます。パリスはトロイアに帰る時、ヘレネーをトロイアの船に隠し、帰途につきます。途中で気づいた誠実な兄へクトールは激怒しましたが、もう後戻りはできません。ヘクトールは、ギリシャとの戦争を覚悟しました。

パリスとへレネーの恋
ジャック・ルイ・ダヴィッド〈パリスとヘレネーの恋〉

オデュッセウスとアキレウス

怒ったメネラオスは、ギリシャ中の武将にヘレネーを取り戻すよう声をかけました。オデュッセウスの提案があったため、ほとんどの武将は参加することになりました。

その頃、オデュッセウスは、イタケーで妻ペネロペイアと幼い息子テレマコスと楽しく暮らしていました。そこに、ギリシャ総大将アガメムノンの使者パラメデスがやってきます。オデュッセウスは戦争に行くのを避けるため、狂人のふりをしていました。

『オデュッセウスは息子テレマコスをかばうに違いない』と一計を案じたパラメデス。テレマコスを牛の鋤の前に置きました。案の定、オデュッセウスは鋤を脇にどけて、息子を助けたのです。これで、彼が狂人でないことがばれてしまったのです。

オデュッセウスは、戦争になれば必ず英雄アキレウスが必要になると考え、彼を戦いに参加させようとしました。

アキレウスの母テティスは、アキレウスが戦いに行くと栄誉は得られるが、死ぬ運命にあると分かっていました。そこで、アキレウスに女装させて、ある王の館に行かせました。王の娘たちの中に隠したのです。

しかし、オデュッセウスは知恵者です。商人に化けて、様々な宝石や装身具を王の娘たちの前にひろげました。その中に、こっそり武器もまぜていたのです。王の娘たちは美しい宝石や装身具を手にしましたが、アキレウスは武器を手にしてしまったのです。

こうして、アキレウスもトロイア戦争に参加することになったのです。

トロイア戦争の始まり

二年後、ギリシャ軍はボイオティアのアウリス港に集結。総大将はメネラオスの兄アガメムノン王。しかし、彼がこの地で狩りをした際、女神アルテミスの牡鹿を殺してしまったために、女神は軍隊に疫病をはやらせ、風も止めて船隊の出発を妨げていました。

予言者カルカースの占いはこう告げたのです。「一人の処女を生け贄に捧げなければならない、しかもこの罪を犯した者の娘でなければならない」

アガメムノン王は悲嘆にくれましたが、娘イーピゲネイアをアウリス港に呼び寄せ、生け贄にささげます。彼女が殺される瞬間、不憫に思った女神アルテミス。女神は一頭の牝鹿を残し、イーピゲネイアをタリウスに連れ去り、自分の神殿の祭司にしたのです。

ここにギリシャ軍の遠征が始まり、トロイア戦争の火ぶたが切って落とされたのです。

※ギリシャ悲劇に、エウリピデス作「アウリスのイーピゲネイア」「タウリスのイーピゲネイア」があります。

イーピゲネイアの犠牲
フランソワ・ペリエ〈イーピゲネイアの犠牲〉

前のページへ 次のページへ

【ギリシャ神話の本を集めました】