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オデュッセウスの妻ペネロペイア[独白]その2

(更新日:2022.12.24)

オデュッセウスとペネロペイア
フランチェスコ・プリマティッチオ〈オデュッセウスとペネロペイア〉

まだ、心も体もついてきてないのよ

20年ぶりの夫との床入り(新婚ではありませんが)。えっ、私の顔が嬉しそうじゃないって! そうでしょうね。だって20年、しかも後半の10年間は何の連絡もなく、消息も分からなかった夫ですよ。
「もう、オデュッセウスは死んだのよ」と言う人々が多くいました。正直、わたしもそう思いはじめていました。それが、帰ってくるなんて......まだ、心も体もついてきてないのよ。

ところで、夫オデュッセウスがどんな言い訳をしたと思います?

聞いたら、あなただって呆れると思うわ。口達者な夫ですもの! 何も考えなくても、いくらでも口から出まかせが出てくるのです。

オデュッセウスの寝物語

トロイア陥落時、神をうやまわない小アイアースが不祥事を起こした。それは、女神アテーナ像にすがりついていたトロイアの姫カッサンドラーを強姦したらしいの。それを怒った女神がギリシャ軍をすんなり帰れなくした。これは、どうも本当にあったことみたい。小アイアースの船は難破し、彼がしがみついていた岩を、海神ポセイドーンが三叉の矛で砕いたと聞いたことがある。小アイアースは沈んでいき、死んだといいます。

でも、その後からオデュッセウスの奇想天外な話が始まったの。

「巨人ライストリュゴネス族には、半分の船と家来を海に沈められた。そしてヤバかったのが、一つ目巨人の島。海神ポセイドーンの息子ポリュペモスの洞窟で部下が無残にも食われ、わしも危ないところだった。でもな、わしの知略であいつの目を潰してやった。これが、ポセイドーンの怒りで、たびたび帰国の邪魔をされたというわけだ。

冥界にまで、予言者テイレシアスの助言を求めに行ったんだぞ。あのアガメムノン、妻と間男に殺された大王が『オデュッセウスよ、そなたの妻は貞淑で、本当に羨ましい!』と嘆いていたよ。悲しかったのは、母上アンティクレイアと会ったこと。冥界で会ったということは、死んでしまったことだからな」

魔女キルケ、仙女カリュプソ、女神アテーナ、ナウシカア姫

(オデュッセウスの寝物語はつづく)

魔女キルケには数年とらわれていた。仙女カリュプソは「夫になれば、不死の神にする」と約束までしてくれた。しかし、ペネロペイアよ、『妻が待っているので、早くイタケに帰りたい』と、きっぱり断ったのだ。

仙女カリュプソの島から出発した時は、やっとこれで帰れると思ったんだが、ポセイドーンの怒りで、船は木っ端微塵。かろうじて、わしだけパイエケス国の海岸に漂着。女神アテーナの計らいで、ナウシカア姫に助けられ、やっと彼らの船で帰国できたんだ.....

夫オデュッセウスの女遊びの10年間

魔女キルケや仙女カリュプソは、魅惑的な女性に違いありません。また、女神アテーナだって貴族の女、ナウシカア姫は乙女ね。10年間、たくさんの女とよろしくやっていたに違いありません。

困るのは、きっと子供もいること。いずれ「わたしは、オデュッセウスの息子です、娘です。財産分与をお願いします」と何人出てくるやら、わかったものじゃない。わたしの息子テレマコスのために、財産をしっかり確保しておかなくては......。ああ、だんだん、イライラしてきた。

ところで、この海(地中海)は荒れることもありますが、比較的穏やかな日々が多いのですよ。帰ろうと思えば、10年間のたった1ヶ月でも努力すれば帰れるはずでしょ。

一緒にトロイアに出かけた家来の誰一人帰ってきていないので、夫の話しかありません。嘘かどうかの確認のすべがない。たとえ、家来が生きて帰ってきたとしても、彼も楽しんだのに違いありません。だから、領主オデュッセウスの言うことに追従するだけしょ。真実なんて、誰にもわからない。

オデュッセウスが求婚者達を倒す
モロー〈オデュッセウスが求婚者達を倒す〉

ペネロペイアの決断

それに驚いたのは、帰ってきたと思ったら、無法者の求婚者を一人残さず、殺してしまったこと。正直、再婚してもいいかなという殿御もいました。皆殺しにすることはないのに、付き人を含めると100人以上にもなりますよ。広間は血だらけ、やっと掃除が終わったところ。

この後の床入りだもの。とても、そんな気分になれないでしょ。でも、男って人を殺すとかえって高ぶるのよね。おかげで、わたし、もうクタクタ。20年間も処女でしたから、その部分がヒリヒリして、あら恥ずかしい......

まだまだ、無法者の求婚者の一族との解決もありますし、苦労も絶えないわ。世間では〈賢明な淑女ペネロペイア〉って言われていますが、そんな評判はもうたくさん。これからは、自分のために、自由に生きてみたい。

「おやすみ、オデュッセウス。口は災いの元ですよ」
闇にまぎれて旅立つペネロペイア、自分の明るい夜明けに向かって。

ペネロペイアの独白 その1

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