【死の神タナトス】夜の女神ニュクスの息子
(更新日:2018.05.06)
ヤチェク・マルチェフスキ〈死の神タナトス〉女性に見えますが?
死そのものを神格化した神
眠りの神ヒュプノスの兄弟。ヘシオドス『神統記』では、
「胸の内なる心は鉄、肝は情け容赦ない青銅で、一度捕えた人間は自分のものにする。不死なる神々にさえ憎まれる奴だ」
と、書かれています。ヒュプノスと共に大地の遥か下方のタルタロスの領域に館を構えています。ヒュプノスと共に背中に翼の生えた姿で描かれることもあります。
ホメロス『イリアス』では、タナトスとヒュプノスの兄弟が英雄サルペドンの亡骸をトロイアからリュキアへと運び、初めてタナトスは人格神として捉えられました。
後世の神話では、「死神」として臨終をむかえる人の魂を奪い去ります。
人間に割り当てられた寿命が尽きると、その人間のもとへおもむき、髪を一房切り取って冥界の王ハーデースに捧げ、それからその人物の魂を冥界に連れていきます。英雄の魂はヘルメースが、冥府へ運びます。
ヨハン・ハインリヒ・フュースリー〈サルペドンの遺体を運ぶタナトスとヒュプノス〉
ギリシャ悲劇『アルケスティス』のアポローンとタナトス
死期が迫ったテッサリア地方ペライの王アドメトス。アポローンの好意によって身代わりを出せば命が助かることとなります。王妃アルケスティスが身代わりとなって死にます。そして、ヘラクレスが彼女を救い出すというエウリピデスのギリシャ悲劇『アルケスティス』があります。
この悲劇のはじめに、アポローンが冥界の秩序を乱すと、タナトスはこぼします。
「アポローンさん、また悪さをするんですね。冥界に属する権限を差し止めて、自分のものにしたりなんかして」
【シーシュポスの岩】ゼウスの怒り、死の神タナトスを派遣する
ゼウスは、河神アーソーポスへの告げ口とテューローの誘惑に怒り、死の神タナトスにシーシュポスを捉え、タルタロス(冥界よりさらに下にある世界)に連行するよう命じた。
タナトスがやってきて、手錠をかけようした時、シーシュポスはたずねた。
「その手錠はどう使うのかね?亅
タナトスが自分の手で実際にやってみせると、まさにその時、シーシュポスはタナトスに手錠をかけて、そのまま館に幽閉してしまった。
困ったのは軍神アレースと冥界の王ハーデース。死の神タナトスがいないので、自分の管轄であった死がなくなってしまったからだ。今までは、戦いで多くの人々が死んでいった。また、病や死刑で死ぬ人間も多かった。アレースとハーデースの面目は丸つぶれ、尊厳も地に落ちた。そこで、軍神アレースはシーシュポスをとらえ、タナトスを解放したのである。解放されたタナトスが、最初に与えた死がシーシュポスであった。
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【夜の女神ニュクス】詳細へ
一般的な夜の女神ニュクスの系図:ヘスペリデスはアトラスの子と言われる異説もあります。また、神話には出てきませんが、ニュクスの子としてアパテ(欺瞞)、ピロテス(色事)、ゲーラス(老い)もいます。(ヘロドトス「神統記」より)