1話5分で読めるギリシャ神話

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パエトンの姉妹 ヘリアデス

パエトンの哀愁
サンティ・ディ・ティト〈パエトンの哀愁〉

パエトンの母クリュメネー

ここに パエトンが眠っている
父なる神の 車駕をあやつり
力及ばずして 逝く
その大いなる 雄図虚しく

パエトンが死んだ時、母クリュメネーはその亡骸を求めさ迷いました。やっとエリダノスの流れに、川の精が建てたパエトンの墓を見つけました。母はわが子の墓を涙で濡らしながら、胸元を広げて抱きしめました。

パエトンの姉妹、太陽神ヘーリオスの娘たち ヘリアデス
(ヘーリオス:アポローンのローマ神話名)

彼女たちも日夜パエトンの名を叫んでは涙を流し、墓に伏します。月が四度満ちても、彼女たちは習慣のようにそうしていました。

あるとき、長女のパエトゥーサは地に伏せようとして、自分の足がこわばって動かなくなっていました。色白のラムペティエが姉のそばに駆け寄ろうとすると、これまた、動けなくなっていました。つぎの妹は、いつものように髪の毛を掻きむしろうとすると、その手は木の葉をつかんでいました。他の娘たちも、足が木の幹になっていたり、腕が木の枝になっていたりしました。

姉妹は何が何だかわからず、恐怖に囚われていました。すると、樹皮が下腹部を包み、腹部、胸部、肩、顔を覆っていきました。口が樹皮に覆われる前に、姉妹は母親に助けをもとめました。

ポプラの木に姿を変えるパエトンの姉妹たち
サンティ・ディ・ティト〈ポプラの木に姿を変えるパエトンの姉妹〉ヴェッキオ宮殿

母親クリュメネーになにができるでしょう。娘たちの間をいったりきたりし、ただおろおろしているだけです。そして、娘たちから、樹皮を引き剥がそうとしたり、木の葉をむしり取りはじめました。

痛い!やめて!お母さん、お願い。樹皮や木の葉は私たちの体の一部なの。ああ、もう......さようなら」
言ったと同時に、その口さえも樹皮に覆われてしまい、ポプラの樹々になってしまったのです。その樹皮からは、とめどなく涙が流れ落ちます。涙は日の光により固まり、琥珀(コハク)となりました。澄んだ流れの川は、この琥珀をローマへと運びました。そこで、貴婦人を飾る宝石となったのです。

キュクノス

母方の遠縁にあたるパエトンに親しいキュクノスが、ポフラの樹々とエリダノスの流れを見ていました。毎日眺めては、嘆き叫んでいました。やがて、彼の叫び声はか細くなり、頭髪は白い羽毛に変わり、首は長く伸び、口はクチバシとなりました。足の指は赤くなり、水かきがその間を埋め、腕は翼となって、とうとう、キュクノスは白鳥に変身てしまいました。白鳥は、パエトンを雷電で打ったユピテル(ゼウスのローマ神話名)には決して従うことはありませんでした。パエトンが雷火に包まれ墜落したことから、白鳥は火を嫌い、水の流れや湖を好むようになったのです。

太陽神ヘーリオスの悲しみ

パエトンの父ヘーリオスも悲嘆のあまり、太陽の車駕に乗る気も失せていました。まるで日食の時のように、世界は暗黒のままでした。
「もう、たくさんだ!世界の始まりより、休みなく終わりのない太陽の車駕の勤めはごめんだ!誰か、他のものがすれば良い。だか、誰もがそうする力がないだろう。ユピテルご本人が御すればいいだろう。そうすれば、炎のようなあの馬たちの力を存分に思い知ることになろう。その時こそ、うまく御せなかったといって、その者を雷火で死の刑罰に処すことはないであろう。ましてや、パエトンはまだ成人していない若者だったのだ!

「このまま世界を闇のままにしていていいのか、なんとか太陽の車駕に乗って、再び世界に光をもたらしてはくれないだろうか」
太陽神ヘーリオスのまわりに、神々が集まって懇願し始めました。ユピテルも今や雷火を投げたことを弁明し、その尊厳だけは保ちつつ、車駕に乗るよう促しました。

ここに至って、ヘーリオスも太陽の車駕に乗り、その鬱憤は4頭の馬たちに向けたのです。馬たちはいななき、太陽の車駕は光を放ちながら、空へと舞い上がって行きました。