1話5分で読めるギリシャ神話

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【第7歌】ヘクトルとアイアスの一騎打ち

ヘクトルとアイアスの一騎打ちを止める伝令使
〈ヘクトルとアイアスの一騎打ちを止める伝令使〉

(イリアス 第七歌)

アテネとアポロンの思惑

ヘクトルとパリスが参戦すると、ギリシャ勢は押されはじめました。
オリュンポス山から見ていたアテネは、下界へ駆け下ります。今度はそれを見ていたアポロンが女神を追いかけます。

「ゼウスの娘よ、何ゆえ急ぐのだ。ギリシャ勢を勝たせようとするつもりか。まあ、その前に私の提案、今日は戦いをやめてはどうか。後日またトロイアの命運が尽きるまで戦えば良いのだから」

「アポロンよ、そうしよう。では、どのように戦いをやめさせるのか」
「ヘクトルを奮い立たせ、ギリシャ勢の誰かと一騎打ちを挑ませよう」

これを感じ取ったプリアモス王の子で預言者ヘレノスは、兄弟のヘクトルに告げます。
「ヘクトルよ、神の声を聞いた。ギリシャ勢の誰かに一騎打ちを挑んでくれ」

喜んだヘクトルは槍を使いトロイア勢を座らせると、ギリシャ総大将のアガメムノンも兵士を座らせる。ヘクトルは挑発します。
「大神ゼウスは休戦をさせては下されなかった。いずれは、どちらかの命運が尽きることになろう。だが、今はこのヘクトルと一騎打ちをする勇気のある者はいないか」

ギリシャ勢の一騎打ちのくじ引き

すぐさまメネラオスが立ち上がったが、兄アガメムノンは、
「お前はへクトルに勝てない、座っていろ。誰か他の武将をたてる」
誰も名乗りを上げないので、老ネストルは怒り、
「なんたることか、かつてギリシャには英雄がごまんといた。それがヘクトルに挑もうとする者が誰もおらぬとは。わしがもっと若ければ......」

この言葉に、アガメムノン、ディオメデス、アイアス、イドメネウス、オデュッセウスなど9人が立ち上がる。老ネストルが、再び口を開くと、
「では、くじ引きできめよう」
アガメムノンの兜の中に、9人は自分の印をつけた木片を投げ入れます。老ネストルが兜を振ると、アイアスの木片が飛び出しました。

ギリシャ勢は歓声をあげます。
「父神ゼウスよ、願わくはアイアスに勝利を賜りますよう。もしヘクトルをも愛されるようならば、両者に同じ譽れを与えますように」

ヘクトルとアイアスの一騎打ち

アイアスは軍神アレスのごとくヘクトルの前に立つと、
「ヘクトルよ、ギリシャの豪勇はアキレウスだけではないぞ。さあ、戦おうではないか」
答えるヘクトル、
「テラモンの子アイアスよ、隙を見て打ちかかるような真似はせぬ。正々堂々と戦おう」

両雄、槍で楯を突き合い戦い始めます。ヘクトルの槍がアイアスの楯でぐにゃりと曲がると、今度はアイアスが槍をヘクトルの楯に突き刺します。すると、楯を貫いた槍は、ヘクトルの脛を傷つけました。ヘクトルは後ずさったが、戦いを止めることはありません。すかさず、大石を拾い上げると、アイアスに投げつけます。石は楯にあたり大音響がだします。今度はアイアスが大石をヘクトルに投げ返します。ヘクトルの楯は砕かれ、彼は楯の下に仰向けに倒れました。この時、アポロンがすぐ彼を立たせました。

二人の間に杖を差し入れる両軍の伝令使

「戦いは、もうお止めください。ゼウスはお二人とも愛しておられます。それに、もう夜になりました」
アイアスは
「わしはどちらでも良い。一騎打ちを申し込んだヘクトルに決めさせよう」
「アイアスよ、槍をとってはギリシャの中にお主の右に出る者はいない。よくわかった。今日は戦いをやめよう。夜になり家に帰れば、お互いの身内の喜びとなろう。ところで、今日の記念にお互い贈り物をしようではないか」

そう言うと、ヘクトルはアイアスに剣と吊り革を、アイアスはヘクトルに真紅の帯を送りました。トロイアの人々はアイアスと戦って、ヘクトルが生き帰れたことを、ギリシャの人々はアイアスの勝利を喜びました。総大将アガメムノンは5歳の牡牛を屠りゼウスに供すると、アイアスを讃えました。その後、兵士達はみな食事をとりました。

老ネストルは立ち上がり、
「明日は戦いをやめて、死んだ兵士を火葬にし、骨を持ち帰れるようにしよう。その後、船場の周りに防壁を築き、その外側に深い堀をめぐらそう」

トロイアの知者アンテノルの提言とパリスの反対

一方、トロイアの城内では、知者アンテノルが提言していました。
「トロイアの人々、来援の方々、私ははっきり申し上げたい。ここでヘレネーとその財宝をギリシャに返そうではないか。我々は先の誓約も破っているのでな」
戦いの原因パリスが、すかさず反対します。
「お主は頭がどうかしたのか。私は承服できない。妻ヘレネーを返すつもりはない。ただ、ヘレネーと一緒に持ち帰った財宝は返す。加えて、ヘレネーの代わりに我が家の財宝もつけ加えても良い」

トロイア王プリアモスがその場を収めます。
「皆の衆、今夜は食事をとって、警戒を怠らず待機してくれ。明日になったら、イダイオスを使いにアガメムノンとメネラオスにパリスの言葉を伝えさせよう。また、死んだ兵士を火葬にするため、休戦する気があるかどうかも確かめさせよう」

しばしの休戦

あくる朝、イダイオスはアガメムノンの陣屋までくると、大声で使いの言葉を述べます。
「アトレウスの子アガメムノンとメネラオス殿、また多くの大将方、プリアモス王の名により、パリスの言葉をお伝えします。ギリシャから持ち帰った財宝はお返しする。さらに、パリス自身の財宝も付け加えます。だが、トロイアの人々みなが勧めたのであるが、ヘレネーを返すのは嫌だと(ああ、その前にパリスが死んでいればよかったものを)。もう一つ、戦死した兵士を火葬するため、その間休戦しようではないか」

ギリシャの猛将ディオメデスが、それに答えて、
「パリスの財宝などいらぬ。ヘレネーも返さなくて良い。トロイアの破滅はもう決まっているからな」
この言葉に、ギリシャ勢は大歓声をあげます。そして、アガメムノン王も、
「イダイオスよ、聞いた通りだ。わしもそれで良い。しかし、兵士を火葬することに異論はない。休戦の誓約は、ゼウスに証人になっていただこう」

イダイオスは自陣に帰り、ギリシャの意向を伝えました。両軍は戦場でお互いの戦死者を識別し、火葬に付しました。その後、ギリシャ勢は老ネストルの提言の防壁と堀を築きます。その日、ギリシャ方には、あのアルゴー船のイアソンの子ヒュプシピュレの子エウネウスから多量のぶどう酒が、レムノスから運ばれてきました。

この頃、天界では、ポセイドンが腹を立てていました。なぜなら、ギリシャ勢が大きな防壁工事をするのに神々になんの相談もしなかったからです。
かつて、ポセイドンとアポロンはトロイアのラオメドン王に防壁を築いてやりました。が、その報酬は支払われませんでした。その後、ヘラクレスもラオメドン王に防壁を築きましたが、同じく報酬は支払われませんでした。ヘラクレスは、この防壁を粉砕してしまいました。

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