1話5分で読めるギリシャ神話

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第二十三歌:パトロクロスの葬送(オリンピックの起源)

パトロクロスの遺体を焼く前に、アキレススはクサントス河で捕えたトロイア軍の若者12人の首を切られます。ヘクトルを討った後ずっと、アキレウスの怒りと悲しみはおさまることはことがありません。アキレウスはギリシャ一の英雄ですが、残酷です。もはや、友人の死にはどんなことも、彼の心を癒すことはできないのです。
また、アキレウスはパトロクロスを弔った後、八種の競技会を開きます。これが、ギリシャ神話におけるオリンピックの起源と言われています。

パトロクロスの葬送
ダヴィッド〈パトロクロスの葬送〉

アキレウスの凱旋

トロイアの市民が悲嘆にくれている中、アキレウスはヘクトルを戦車につないだまま自陣に帰ってきた。アキレウスとミュルミドネス勢は慟哭しながら、パトロクロスの遺体の周りを三度回った。アキレウスの母テティスもその場にいた。
「パトロクロスよ、冥王の館にあっても機嫌よく暮らしてくれ。ヘクトルは討ち取った。また、トロイアの12人の立派な若者の首も、そなたを焼く火の前で首を切ろう」

その後、アガメムノンは、アキレウスに浴びた血と砂ぼこりを落とすよう促したが、彼は拒んだ。
「パトロクロスを火葬にし、墓を築いて髪を切って弔うまでは湯水を浴びることはない。アガメムノンよ、明日になったら、葬儀の一式を揃えてもらいたい。今はまだ食事をする気も起こらないが、みなと食事を取ろう」
一同は、食事をとることにした。

パトロクロスの亡霊

食事をとると、さすがのアキレウスも今日の戦いの疲れが出て、うとうとしはじめた。すると。パトロクロスの亡霊が現れて、彼に語りかけた。
「アキレウスよ、私を忘れたのか。一刻も早く冥府の門をくぐれるよう、弔ってくれ。さもないと、亡霊たちが私を受け入れてくれないのだ。それから一つお願いがある、私の骨は、いずれ死ぬあなたの骨と一緒の壺に納めてもらいたい」
「大切な友よ、なぜそのようなことをいう。そなたの言う通りすべて執りおこなう。さあ、近くに来て語り明かそう」
そう言うと、アキレウスは手を伸ばしたが、パトロクロスの亡霊は地下に消えていった。

トロイアの若者12人の首をはねる
〈トロイアの若者12人の首をはねる〉

パトロクロスの葬儀

明け方になると、葬儀の準備はイドメネウスの従士メリオネスにより行なわれた。葬儀の場所は、アキレウスがパトロクロスといずれ自分のために塚を築く海辺であった。

薪を高く積みあげ、その上に遺体を寝かす。牛と羊の皮を剥いで、その脂身で遺体を包む。動物の死骸は彼の周りに置いた。さらに、馬4頭も並べた。パトとクロスが生前飼っていた9匹のうち2匹の犬も薪の中へ投げ入れた。そして、積まれた薪の前でトロイアの12人の若者の首を切り裂いた。それから、火をはなった。しかし、火は燃え上がらなかった。アキレウスは北風と西風に生贄を約束し、酒を献じた。

祈りを聞いた虹の神イリスは、すぐさま風神の館に伝えに行った。風神は女神を館の中に招き座るよう促したが、女神は入ることはなかった。
「座るわけにはまいりません。今アキレウスが生贄を約束し、パトロクロスを焼く薪を早く燃え上がらせて欲しいと願っています」
そう告げたイリスは、立ち去った。北風と西風はすぐさま海岸に飛んでいくと、すさまじい風を起こした。火はたちまち燃え上がる。アキレウスは燃え上がる火の周りを歩き、悲嘆にくれ呻き声を漏らしていた。

一方、ヘクトルの遺体は、アフロディテにより腐らぬよう香油を塗られ、アポロンによって鳥や野犬に食いちぎられることはなかった。

古代オリンピックの想像図
〈古代オリンピックの想像図〉

パトロクロスの葬送競技(オリンピックの起源)

しばらくして、薪も燃え尽くし、パトロクロスの骨は集められ、黄金の壺に入れられた。アキレウスはギリシャ勢を引き止め、自分の船陣からたくさんの財宝を賞品として持ってこさせた。美しい女たちも大勢連れてこられた。そこで、集会を開いて競技会を催した。

第一の競技「戦車競争」
「馬と戦車に自信のあるものは、誰でも競技に参加してもらいたい」
エウメロス、ディオメデス、メネラオス、アンティロコス、メリオネスの五人が名乗りをあげる。
エウメロスの馬はアポロンが育てたこともあり、アポロンはエウメロスに迫ってきたディオメデスの鞭をはたき落とした。このことに気づいたアテネが鞭をディオメデスに渡し、馬にも力を与えた。結果、ディオメデスが勝利を手にした。

第二の競技「拳闘」
「力優れた二人に、しっかり身構え拳で打ち合ってもらいたい」
エイペイオスの勝利。彼の一撃がエウリュアロスの頬を打つと、もはや立ってはいられなかった。

第三の競技「角技」
大アイアスとオデュッセウスが戦う。二人の戦いは壮絶で、二人とも足を絡ませ戦うが、最後は二人とも倒れてしまった。もはや、これまでとアキレウスは二人を止めた。
「二人とも、もうへとへとになるまで戦うのはやめた方がよい。賞品は両者同じものを受け取ってもらいたい」

第四の競技「徒競走」
オイレウスの子、俊足の小アイアスに続いてオデュッセウス、その後を若手の中で一番のアンティロコスが追った。オデュッセウスは、競技の終盤にアテネに祈願した。
「女神よ、どうか私の足に力を授けてください」
すると、アテネの妨害で、小アイアスが足を滑らせ砂につっぷした。結果、オデュッセウスの勝利。小アイアスはこう苦言を呈した。

「確かに、ある女神がわしの足を取られたのだ。いつもオデュッセウスに母親のようについている女神だ」
最下位のアンティロコスもからかう。
「みなさん、もうご存知のように、どうも神々は年配の人々を大切にするようですな。アイアスは私より少し上ですが、こちらの方(オデュッセウスを指す)は我らの前の世代、青いお年寄りです」

古代ギリシャの槍試合

第五の競技「槍試合」
アキレウスは、パトロクロスに討たれたトロイアの勇将サルペドンの武具を賞品にして、完全武装の槍試合を宣言した。大アイアスとディオメデスのどちらも第一級の勇者の戦いになった。二人は三たび躍りかかった。その後ディオメデスがアイアスの首を狙っているのを見て、ギリシャ勢はアイアスの身を案じ、試合を止めさせた。アキレウスはディオメデスが優勢だったと、彼に賞品を渡す。

第六の競技「鉄の塊」(円盤投?)
ポリュポイテス、レオンテウス、大アイアス、エポイオスの4人。エペイオスは笑われるほどの距離しか投げられず、レオンテウスと大アイアスはエペイオスよりはるかに遠くへ投げた。しかし、最後にポリュポイテスが上回り勝利した。

第七の競技「弓」
船の帆柱にひもで足を結わいた鳩が的である。弓の名手テウクロスが真っ先に名乗りをあげる。次にメリオネスが。まず、くじ引きでテウクロスが矢を放った。しかし、鳩には当たらず、ひもを射抜いた。鳩は空に舞い上がった。ギリシャ随一の弓の名手テウクロスがなぜ的を外したかというと、弓の神アポロンに羊の捧げ物を約束しなかったからである。テウクロスから弓をひったくると、メリオネスはまずアポロンに初子の羊の捧げ物を約束し、矢を放つと、空中高く飛んでいた鳩に見事命中させた。もちろん。アポロンの加護があってのことである。

第八の競技「槍投げ」
賞品は槍と釜。総大将アガメムノンとメリオネスが立ち上がったが、アキレウスは宣言した。
「アトレウスの子アガメムノンよ。あなたがいかに万人に優れ、力と投げ技に秀でているかみな承知している。どうか、賞品を受け取ってもらいたい。メリオネスにも槍を与えるつもりでいる」
アガメムノンにも依存はなく、受け取った賞品の槍をメリオネスに与えた。ここにアキレウスとアガメムノンの和解がなったのである。

これが、ギリシャ神話におけるオリンピックの起源です。

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