1話5分で読めるギリシャ神話

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第二十歌:神々の参戦

ギリシャ勢が不利な状況にある中、アキレウスはようやく戦いに参加した。ここに至って、ゼウスはようやくテティスの願いを叶えことになった。ゼウスにしては、肩の荷が下りたということである。
そこで、ゼウスは高みの見物を決め込んだ。あとは、アキレウスが生きているうちにトロイアが陥落せぬよう、神々の小競り合いを期待し参戦を促した。

ギリシャ側の神々
〈ギリシャ側の神々〉

ゼウス、神々を招集する。

ついに、アキレウスは戦場に立つ。それを見届けると、ゼウスは女神テミスに全ての神々をオリュンポスに召集させた。河神オケアノスをのぞいて、全ての神々がゼウスの館に集まってきた。

いち早く、ポセイドンが口を開いた。
「雷光の神ゼウスよ、なぜ、われわれを集めたのか?」
「ポセイドンよ、わしの意図は察しがついているだろう。もはや、わしは動かず、見物することにした。だから、そなたたちはトロイア側だろうが、ギリシャ側だろうが思うようにすれば良い。アキレウスが立ち上がったとなれば、このままでは運命に逆らって、トロイアを陥落するやもしれん。それは断じてならぬ事と決まっているからな」

トロイア側の神々 vs ギリシャ側の神々

かくして、トロイア側についた主な神々は、軍神アレス、アポロンとその妹アルテミス、その二人の母レト、アフロディテなど。
ギリシャ側についた主な神々は、ヘレ、アテネ、ポセイドン、ヘルメス、ヘパイストスなど。
神々は両軍を鼓舞して戦わせるとともに、自らも戦いに参加しようとした。

トロイア側の神々
〈トロイア側の神々〉

アポロン、アイネイアスをそそのかす。

早速、アポロンが動いた。神はプリアモス王の息子リュカオンとなって、アイネイアスに言った。
「アイネイアスよ、かつてアキレウスと一騎打ちの勝負をすると言った豪気はどこへ行った。今こそ、その時ではないか」
「なにゆえ、そなたは私とアキレウスを戦わせようとする。私は一度、彼に追われたことがあるのだ。幸い、その時はゼウスに救われたがな。アキレウスの前には、いつもアテネがいるのだ。女神がいなければ、私とて簡単に引き下がるつもりはない」

「アイネイアスよ、おぬしの母はオリュンポス十二神の一人アフロディテ。それに対して、アキレウスの母は海の老人ネレウスの娘テティスではないか。身分の違いは天と地ほどある」
アポロンはこう言って、アイネイアスに勇気を吹き込んだ。

ヘレは、これを見過ごさなかった。

「ポセイドンとアテネよ、アイネイアスがアキレウスに向かっていく。アポロンがそそのかしたのだ。誰かわれらの神が行って、アキレウスが気後れせぬようにしようではないか」
ポセイドンがそれに答えた。
「ヘレよ、腹をお立てになるな。わしとしては、他の神とは戦いたくはない。アレスかアポロンがアキレウスを動けぬようにするなら、その時はわれらが戦おうではないか。向こうの神は、我らより力がないのは明白だからな」

アキレウス vs アイネイアス。

二人は接近した。
「アイネイアスよ、そなたはかつて一度私の前から逃げ出したではないか。私を倒してトロイアの王位でも継ぐつもりか。そんなことにはならぬぞ。だから、痛い目に会う前に私の前から消え失せろ。ことが済んでから、気づくのは愚か者だぞ」

「アキレウスよ、おぬしの母は海の老人ネレウスの娘テティス。わしの母はオリュンポス十二神の一人アフロディテだ。位が違いすぎるのはわかっているのか。そもそも、我が家系はぜウスの一子ダルダノスから始まっているのだ。そして、今のプリアモス王のヘクトルまで続いている。その中には、かつてゼウスが連れ去ったガニュメデス、曙の女神に愛されたティトノスなど、神にゆかりが深いのだ。でも、今はもう言い争いはやめて戦おうではないか」

こう言い終えると、アイネイアスは槍を投げつけた。槍はアキレウスの神が作った楯に刺さった。しかし、楯は青銅が二層、黄金が一層、錫が二層の五重の構造になっていて、その三層目の黄金のところで止まった。
今度はアキレウスが槍を投げると、槍は楯の周辺部に刺さり、アイネイアスが楯を持ち上げるとそのまま地上に刺さった。アキレススは太刀をとると襲いかかる。対して、アイネイアスは大きな石を持ち上げた。

ポセイドン

ポセイドンは、焦った。

「ああ、なんたることか、アイネイアスが討たれてしまう。そうなれば、彼は死を免れることになっているので、ゼウスが腹を立てるかもしれぬ。ヘラよ、トロイア陥落がなくなるかもしれぬぞ。くそ、アポロンのせいだ。われらの誰かが、彼を救ってやらねばなるまい」
ヘラは答えた。
「ポセイドンよ、そなたが救ってやれば良いではないか」

ポセイドンはすぐさま二人の戦いの場へ降りて行った。アキレウスの目には靄をかけ、アイネイアスの楯に刺さった槍を抜くと、アキレウスの足元に置いた。アイネイアスの身は宙に放り投げて、戦いの端におろした。
「アイネイアスよ、無謀にもほどがある。アキレウスとは戦うな。しかし、彼の命運が尽きて最後を遂げたら、第一線で戦うがよい」

そう言うと、ポセイドンはアキレウスのところに戻って、靄を払った。
「これはまた不思議なことだ。槍はここにあるのに狙った男の姿は見えぬ。どうやら、アイネイアスはどこぞの神に愛されているのだろう」
こういうと、アキレウスは隊列に戻り、ギリシャ勢を鼓舞した。

一方ヘクトルも同じように、トロイア勢を勇気付けた。
「アキレウスを恐れるな。確かに彼は強い。しかし、私は彼に立ち向かうつもりだ。神が助けてくれるかもしれぬからな」
しかし、アポロンはへクトルに近づくと
「今は断じて、アキレウスと戦ってはならぬ」と、釘を刺した。

アキレウス vs ヘクトル。

アキレウスはすさまじい勢いで、トロイアの将を倒していった。その中には、ヘクトルの弟ポリュドロスがいた。ヘクトルはもはや引っ込んではいられず、アキレウスの前に出てきた。
「やってきたな、我が最愛の戦友を殺したヘクトルよ、かくなる上はもはや逃げずに戦おうではないか」
すかさず、ヘクトルが槍を投げると、アテネが息を軽く吹きかけ、槍はヘクトルの足元に落ちた。今度は、アキレウスがヘクトルに襲いかかろうとすると、アポロンはいとも簡単にヘクトルをさらって隠してしまった。

「またしても、命拾いしたな、この犬め。アポロン神が救っておやりになったか。今度会うときは、必ず仕留めてやる。私にも神の助太刀があろうからな」
こういうと、アキレウスはトロイアの将をなぎ倒して行った。その姿はまさに鬼神の如し、大地は血の海となった。

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