1話5分で読めるギリシャ神話

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第一歌後編:ゼウスとテティスの神慮

アガメムノンの使い
ドミニク・アングル〈アガメムノンの2人の使い〉

(イリアス 第一歌 後編)

老将ネストルの仲介

アキレウスは、アガメムノンに最後の言葉を放ちました。
「必ずや、いつの日か、全てのギリシャの兵士の胸に、このアキレウスの不在を嘆く想いが湧き起こるであろう。一騎当千のヘクトルの手にかかり、多くの兵士が殺される時、あなたがいかに心を痛めようとなんの役にも立つまい」
見かねた老将ネストルが、
「ああ。情けない!ギリシャの両英雄が争っているのが知れたら、喜ぶのはトロイアの人々だ!」
と、二人に助言しましたが無駄に終わり、軍議は終了しました。

その後、アガメムノンは二人の使いをアキレウスの陣屋に送りました。アキレウスの命で、親友で部下のパトロクロスは、悲しげなブリセイスを二人に引き渡しました。

アキレウスと母テティス

アキレウスは悶々としていました。そこへ、母テティスが現れました。
「母上よ、もしあなたにその力があるならば、どうかご自分の息子をお守りください。
かつて、ヘラ、ポセイドン、オリュンポスの神々、あのアテネまでもが買うわ割、ゼウスを縄にかようとした時、ゼウスを助けたのは神々の中で母上お一人であったとか。その時、あなたは100の手を持つ怪物を呼び寄せ、その縄を解かせ、ゼウスを守らせたとか、そのことをゼウスに思い出させて、お願いくださいませんか」

「あぁ、アキレウスよ、この戦争に参加したばかりに短命になり、さらに恥辱まで受けてしまった。お前を産んで育てたのは何のためであったろう。ゼウス一行は今、オケアノスでエチオピア人の饗宴をお受けになっている、12日後にはお帰りになるから、そなたの名誉を挽回してもらうよう願ってみよう。」
と、テティスは帰って行きました。

一方、オデュッセウスはクリュセイスを父クリュセスの元に送り、アポロン神にも生贄をささげました。アポロンの怒りは静まりました。

ゼウスとテティス
アングル〈ゼウスとテティス〉イリアスの記述と手が逆?グラネ美術館

テティス、ゼウスに息子の名誉回復を訴える

十日の遊興からゼウス一行がオリンポス山に帰ってくると、テティスはゼウスの前に現れ、左手を膝に、右手を彼の顎にふれて願いました。
「息子アキレウスは褒美の愛妾をアガメムノンに奪われ、その仕打ちに名誉を失いました。どうか息子の名誉を救ってやっていただきとうございます。しかるべき償いをして、名誉が回復するまで、トロイア方に力を与えてやっていただきたいのです」

「なんとも厄介な仕事だな、ヘレが何か言ってきそうだ、仲がまずいことになるな。まぁ、ここは頷いて見せてやろう、それがわしの与える一番確かな補償の印だ」
テティスは深海の洞窟に帰って行きました。
(顎を引き頷くのがOKの印、顎を上げて頭をそらすのがNOの印)

ゼウスとヘラの言い争い

ゼウスは自分の館に帰り、玉座に腰を下ろしました。オリュンポスの神々も周りに集まっています。

感づいたゼウスの妃ヘラは、ゼウスをなじって言いました。
「なにやら、あなたはあのテティスと内密な相談をしていましたね。何を相談していたのですか?教えてください」
「ヘラよ、わしの考えをすべて知ろうなどと思うなよ。いちいち問いただしたり、詮索してはならぬ」
「私には、アキレウスの面目を立ててやるために、トロイア勢がギリシャ勢を倒すようテティスに約束なさったような気がいたします」
「おかしなことを言うではない。そのようなことを言うと、わしの心はそなたから離れていくばかりだ。もし、わしがっそなたに雷を振るおうとして、すねての神々がわしに反旗を翻しても、わしには叶うまい」

ヘラは煮えくりかえる胸をおさえて、腰を下ろした。しかし、まわりの神々は黙ったままで、憮然としています。
「たかが人間界のことで、お二人がいがみ合うことはありません。まわりの神々も困るでしょう。父上ゼウスの御心に添われるよう進言します。辛抱です、母上」
ヘパイストスは母ヘラをとりなしてこう言うと、母ヘラに盃を渡しました。ヘラはにっこりとその盃を受け取りました。ヘパイストスは、他の神々にもネクタルを注いてまわりました。そのびっこのヘパイストスがひょこひょこ歩くのを見ると、神々が笑い出し、場が和みました。

やがて日も暮れ、宴は終わり、神々はそれぞぞれの館に帰って行きました。ゼウスは寝所で眠りにつけば、ヘラが添い寝しました。

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