1話5分で読めるギリシャ神話

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【第4歌】前編:トロイア戦争後のヘレネー

トロイア戦争の原因になったヘレネーですが、彼女はトロイア陥落時に死んだのでしょうか?いえ、生きていて元の夫メネラオスと幸せに暮らしていたのです。
戦争でたくさんの人々が死にました。特にトロイアの女たちは、戦争後は奴隷になってしまいます。ヘクトルの妻アンドロマケの悲惨さは言葉では語りつくせません。なのに、ヘレネは夫のメネラオスと幸せに暮らしています。なんか理不尽さを感じてしまいます。

ヘレネーはテレマコスを認識する
ジャン=ジャック Lagrenée〈ヘレネーはテレマコスと分かる〉

(オデュッセイア 第4歌 前編)

テレマコス、スパルタのメネラオスの屋敷へ

テレマコスと老ネストールの息子ペイシュストラオスがスパルタのメネラオスの屋敷に着きました。屋敷では、ちょうど宴の最中。メネラオスとヘレネーの娘ヘルミオネをアキレウスの息子に婚姻のために送り出すところでした。アキレウスの息子とは、トロイア戦争にも参加したネオプトレモスです。
メネラオスの従士にテレマコスたちは、メネラオスのそばの席に案内されました。テレマコスたちは、屋敷の広間の黄金、銀や象牙の飾りに驚きを隠せず、二人でこそこそ話していました。

二人の会話を耳にしたメネラオス。
「子供たちよ、知っておろうが、さる男がわしの兄を殺した。だから、このような広間にいても、心は晴れぬ。また、トロイア戦争で亡くなった戦友たちのことを思っても、涙が流れるのだ。その中でも、オデュッセウスには特別な思いがある。祖父ラエルテス、妻のペネロペイア、子のテレマコスも嘆いていることであろう」
この言葉に、テレマコスは涙を流したのです。

ヘレネー、現れる。

この若者がテレマコスであるとすでに気づいていたメネラオスは、どう語りかけようか考えていると、ヘレネーがやってきました。

ヘレネーがメネラオス王に尋ねました。
「わが君メネラオスよ、この方々はどなたですか。なんとまた、こちらの方はあの勇士オデュッセウス殿とよく似ていることか。恥知らずな私のために、トロイアまで遠征してきたあの方の面影が多くあります」
「奥よ、そなたの言うとおりだ。頭の形、髪の毛、目の配り、手といい、足といい、オデュッセウスはこの通りであった。わしのためにどれほどの苦労を彼がしてくれたことか」

ヘレネー
アントニオ・カノーヴァ〈ヘレネー〉

テレマコスの素性、明かされる。

その言葉に答えて老ネストールの息子。
「ゼウスの愛を受けたメネラオス王よ、仰せのごとくこの方はオデュッセウスのご子息です。わたしは、父ネストールの言いつけで、この方をここにお連れしました。父親が不在で、大人の助けが必要な子供には家の中の苦労があるものです。テレマコスの場合もその通りなのです」

※トロイア戦争後、オデュッセウスが10年間も行方不明で、妻ペネロペイアには街の有力者の息子たちの求婚が殺到し、オデュッセウスの家で飲み食いのし放題を続けていました。ペネロペイアは、なんとか理由をつけては求婚者の申し出を断っていたのです。また、テレマコスの立場もないがしろにされていました。

メネラオスいわく。
「ああ、なんということか。わしのために艱難辛苦をなめてくれた親友の子息がそんな苦労をしているとは。オデュッセウスが無事に帰ってきたら、このアルゴスに広大な敷地と屋敷を与え、友情を分かち合うつもりであった。が、気の毒にいまだ帰国がかなわぬどころか消息もつかめない」

その言葉に、みんな涙を流しました。

「ここはしばし悲しみを忘れて、食事にしよう。明日になったら、テレマコス殿、心ゆくまで話しあおうではないか」

メネラオスの言葉を聞いて、ヘレネーはかつて訪れたエジプトの医者から贈られた薬を酒に混ぜました。この薬はあらゆる苦悩を忘れさせる秘薬。この薬を飲むと、たとえ父母の死にあっても、目の前で兄弟や子供を殺されても、その日は頬を涙に濡らすことはなかったといいます。

それから、ヘレネーは静かに語りはじめました。

トロイア後のヘレネー 後編ヘ

ヘレネー
ギュスターブ・モロー〈ヘレネー〉

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