1話5分で読めるギリシャ神話

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冥界にて、オデュッセウスとテイレシアス

冥界にて、オデュッセウスとテイレシアス
〈冥界にて、オデュッセウスとテイレシアス〉出典

(オデュッセイア 第十一歌)

オデュッセウスは、パイエケスの王アルキノウスとその妃アレテに、冥界行きのことを語った。

オデュッセウス一行は、黒塗りの船に犠牲の羊を積んで冥界に向かった。船はやがて、オケアノス河の涯、呪わしい闇が頭上を覆っている、キルケが教えてくれた冥界の場所に着いた。そこで下船すると、オデュッセウスは穴を掘り、乳と蜜を混ぜたもの、甘美の酒、水を注ぎ、願をかけ、羊の首を切り、血を穴に注いだ。

すると、亡者が集まってきた。しかし、オデュッセウスは剣を抜き、亡者が血に近づくのを許さなかった。部下たちには羊の肉を焼き、冥王とその妻に捧げるよう命じる。そして、テーバイの預言者テイレシアスが来るのをじっと待っていた。

最初に近づいてきた亡霊は、酔って魔女キルケの家の屋根から落ちて死んだ部下エルペノルだった。彼を埋葬せず出航してきたので、彼はアイアイエの島に戻った時、埋葬してほしいとオデュッセウスに頼んだ。
「そなたの願いは、果たしてやるぞ」オデュッセウスは答えた。

次に近づいてきたのは、母アンティクレイアの亡霊であった。オデュッセウスは、涙した。トロイアに出征した時には、まだ母は存命であった。しかし、テイレシアスが来るまでは血に近づけなかった。

テーバイの預言者テイレシアスは、オデュッセウスに気づき近づいてきた。

「ラエルテスが一子、智謀に富めるオデュッセウスよ、血を飲んで真実を話すから、その剣を引いてくださらぬか」
オデュッセウスが退くと、血を飲んだテイレシアスは語り始めた。

「オデュッセウスよ、そなたは帰国を求めているのであろう。が、かつて目を潰したキュクロプスの父ポセイドーンが、苦難の旅にしているのだ。トリナキエの島で、陽の神エエリオスの牛と羊については注意せよ。そなたと部下たちが気持ちを制御できれば、帰国の望みはある。
もし、牛と羊に危害を加えなければ、そなたの一行はイタケに全員で帰れる。危害を加えれば、船と部下はすべて失われる。そなたは救われるが、他国の船で帰ることになろう。

屋敷に帰っても、さまざまな災厄にあう。館でそなたの妻の求婚者たちが、そなたの家の貯えを食いつぶし、狼藉を働いているからだ。その者どもを討ち果たした後、船の櫂をもって陸地を旅することになろう。道行く男が、その櫂を「殻竿(からざお)」と言ったなら、その時こそ大地にその櫂を突き刺しなさい。そして、ポセイドーンに、牡牛、牡羊、牡豚を捧げ、国に帰ったら神々のすべてに百牛を捧げなさい。そなたは幸福な最期を迎え、そなたの国の民もまた栄えるであろう。これがそなたに語る真実だ」

オデュッセウスは、最後に母のことをテイレシアスに尋ねた。
「あそこにいる母の亡霊に、私だとわかってもらうにはどうしたらよいでしょうか」
「そなたが血に近づくことを許せば、どの亡者も真実を話す、拒まれた亡者は引き下がってしまう」
こう言うと、預言者は冥界の館に帰っていった。

母アンティクレイアの死の理由

母はオデュッセウスに気づくと泣きながら、
「せがれよ、まだ生きているのに、どのようにこの闇の世界に降りてきたのですか。いまだイタケに帰らず、妻の顔も見ていないのですか」
「母上、テイレシアスの予言を聞くために、ここへ来なければならなかったのです。それはそれで、母上を襲った死の運命がどのようなものであったのですか。父上、息子、妻、わが王権のことなどお話しください」

母は、妻、息子、王権の無事、そして父上が田舎に引きこもり、ぶどう畑の中で寝起きしながら帰りを待っていることを話してから自身のことを話した。
「わたしの命を奪ったのは、帰ってこぬそなたを待ちわびる辛い気持ちであった」
この言葉に、オデュッセウスは三たび駆け寄り三たび母を抱きしめようとしたが、影のように彼の手をすり抜けてしまう。
「せがれよ、人間は一度死ねば、こうなるのが定め、魂は夢のごとく飛び去って、ひらひらと虚空を舞うばかり。一刻も早く光の世界に帰り、妻に話せるよう、しっかりこの冥界を見ていきなさい」

次に、オデュッセウスはさまざまな女の亡霊に会った。高貴な生まれチュロ、アソポスの娘アンティオペ、ヘラクレスの母アルクメネ、オイディプスの母イオカステ、ネーレウスの美人妻クロリス、チュンダレオスの妃レダ、アロエウスの妻イピメデイア、ミーノースの娘アリアドネなどなど。

アガメムノン、アキレウスのトロイア戦争の勇者とヘラクレスの亡霊

次に現れたアガメムノンの亡霊は、妻クリュタイムネストレとアイギストスにカッサンドラ、家来共々殺されたことを話した。また、息子オレステスの生死をオデュッセウスに尋ねたが、彼は知っていることはないと答えた。アガメムノンは自身の災難を考え、くれぐれも故郷に帰ったら、人目に立たぬよう、女には信をおいてはいけないと注意した。

アキレウスの亡霊は、親友パトロクロス、アンティロコス、テレモンの子アイアスとともに現れた。彼は父ペレウスと自分が死んだ後の息子ネオプトレモスのことを尋ねた。オデュッセウスは、ペレウスについては何も知らないと話し、あの木馬の中でのネオプトレモスの様子--他の武将が震えていたり、青ざめていたり、涙をぬぐっていたのに、彼は平然としていたと話した。また、彼は立派に戦い、生きて故郷に帰ったとも伝えた。

次に、オデュッセウスは、テラモンの子アイアスの亡霊と話そうとしたが、彼は去っていった。アキレウスの死後その鎧兜をオデュッセウスとアイアスが争い、アイアスは負けて憤り自害したからだ。

最後にヘラクレスの亡霊が現れた。が、本来の彼は天界でヘーラーの娘へべを妻にし神として暮らしている。ここにいるヘラクレスは、半分の人間の質が死んだものであった。彼はかつて、10の功業の時、この冥界にケルベロスを連れに来たことを語った。

オデュッセウスは、テセウスとペイトリオスにも会えるかと思ったが、それは叶わなかった。テセウスとペイトリオスは、かつて冥界の王の妃ペルセポネーを奪いにここに来たのであった。その時、二人とも魔法の椅子にとらわれていた。ヘラクレスがケルベロスを連れに来た時、テセウスのみは助け出したとされている。

オデュッセウス一行は、オケアノス河から現生に戻っていった。