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オデュッセウスとセイレーンたちドレイパー〈オデュッセウスとセイレーンたち〉

キルケの新たな予言

冥界にくだり予言者テイレシアスの助言をえたオデュッセウスは、キルケの島に帰ってきました。キルケは一行が帰ってきたのを知り、食べ物と赤ぶどう酒を持参しました。

「生きながら冥界にくだったとは、なんとも桁違いなお方じゃ。今夜は食事をし、ゆっくり休息をとり、朝日が昇ったら出発しなさい」
部下たちが眠りにつくと、キルケはオデュッセウスとしばらく語りあった後に新たな予言をしました。

「そなたたちは、これからセイレーンの島に行くことになります。彼女たちは草原にすわり、すき通るような声で歌い、人の心を魅惑します。しかし、彼女たちの周りには白骨と腐りゆく人間の肉が山となっています。

ここを通り抜けねばなりません。セイレーンの声を聞こえぬように、部下の耳を蜜ろうでふさぐのです。そなたがセイレーンの声を聞きたいと思うのであれば、部下に命じて帆柱に立ったまま、手足をしっかり縛らせなさい。

万が一、そなたが部下に『綱を解いてくれ〜』と、頼んだり命じたりしても、さらに綱をふやして縛らせるのです」

セイレーンに襲われるオデュッセウス一行ウォーターハウス〈セイレーンに襲われるオデュッセウスたち〉

さまよう岩か、スキュラとカリュブディスか

「セイレーンの島を無事通過できたら、さらなる難所「さまよう岩」か「スキュラとカリュブディス」の近くか、どちらかを選ばなければなりません。用心に用心をしてください」

翌朝オデュッセウスたちは出発し、キルケは森の館に帰っていきました。

「よいか皆の者、女神キルケが私に語ってくれた予言を全員承知した上で、ともに死ぬか、ともに危地を脱するかだ」
と、オデュッセウスは昨夜のキルケの言葉を部下に伝えました。自分を縛ることもつけ加えました。

キルケが送ってくれた順風で船は進んでいき、しばらくすると、セイレーンの島に近づきました。すると、今までは順風だった風がぴたりとやみました。オデュッセウスは帆を下ろし、櫂で漕ぐよう部下に命じました。

また、急いで部下の耳に蜜ろうをつめ、自分を帆柱に縛りつけさせました。

セイレーンの島

オデュッセウスたちがセイレーンの島に近づくと、彼女たちは美しい声で歌い出しました。

「世に称えられたギリシャの誇りオデュッセウスよ、船をここにつけ、私たちの蜜のような歌声をお聞き。聞かずして通り過ぎた者は誰もいないのだよ。聞いた者は心楽しく、知識も増して帰っていくのだからね」

「綱を解いてくれ〜、セイレーンの元へ行かせてくれ〜」

エウリュロコスと一人の部下がオデュッセウスから命令されていたように、さらに綱で彼を巻きつけました。こうして、一行は無事セイレーンの島を通り過ぎることがで来たのです。

次の難所は、「スキュラとカリュブディス」です。