1話5分で読めるギリシャ神話

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プロクネとピロメラ姉妹、蛮族の王テーレウス1

プロクネとピロメラ姉妹のこれほどの運命が、ギリシャ悲劇になっていないのが不思議です。調べてみたら、ソポクレスがこの神話に基づいた『テーレウス』 という劇を書いていました。しかし、残念ですが、失われてしまいました。ソホクレスなら、『オイディプス王』と並ぶ傑作だったことでしょう。
後編の種明かしになってしまうので、これ以上はここでは語りません。しかし、ピロメラの想像を絶する不幸と姉プロクネの決断には、アッと驚くことでしょう。

ピロメラと姉プロクネ
ウィリアム・アドルフ・ブグロー〈ピロメラと姉プロクネ〉アテナイの仲良し姉妹でしたが...

テーレウスとプロクネの不吉な結婚

アテナイ王パンディオンは、蛮族を追い払ってくれたトラキア王テーレウスと同盟を結ぶべく、娘プロクネを彼に嫁がせました。

しかし、テーレウスとプロクネの新床を祝う女神は現れず、なんと現れたのはエウメニデス(復讐の女神たち)でした。一体なんの復讐なのか、今はまだわかりません。また、屋根には、不吉なフクロウも止まっていたといいます。

それでも、トラキアではプロクネが嫁いできた日と、長男が生まれた日は祝日と定められました。

そして、5年が過ぎたある日、プロクネは夫テーレウスに甘えながら願いました。
「私を愛してくださっているなら、妹ピロメラに会いに行かせてください。それがダメなら、妹を迎えに行ってください。父は悲しみますから、すぐに妹は帰すと約束もしてきてください」

テーレウス、プロクネの妹ピロメラに恋の炎を燃やす

こうして、テーレウスはアテナイに向けて出航しました。アテナイに着くと、義父パンディオンは娘婿をもてなしました。そこで、プロクネの希望を伝えたのです。そこへ、妹のピロメラが現れました。

運命の、不幸の始まりです。

テーレウスはピロメラを見た途端、恋心を燃え上がらせました。トラキアの男は、民族の特徴として情欲が強いのです。とりわけ王であるテーレウスは、誰の意見も聞くことはなく、権勢を誇ってきました。その我の強い彼は、ピロメラへの情欲のとりこになってしまったのです。

テーレウスはピロメラの侍女や乳母にとりつくろい、プレゼントもしました。ピロメラに対しては、もはやトラキア全国土をかけてもいいと思い込んでいたほどです。また、彼は自分の妻プロクネの妹に会いたい気持ちを、義父パンディオンやピロメラに熱く語っていましたが、それは他ならぬ自分の気持ちを語っていたにすぎません。その結果、義父やピロメラは、テレウスは人情の熱い人だと思い込んでしまいました。

今や、ピロメラも姉プロクネに会いたいと、父に甘えてお願いするようになりました。テーレウスはピロメラが義父に甘えるところを見ると、自分が義父であったならばどんなに気持ちのいいことだろうと想像していました。

ピロメラ、運命の出航

テーレウスと姉プロクネ、妹ピロメラの三者の希望に、とうとう父パンディオンもピロメラのトラキア行きを認めざるをえません。
出発の朝、パンディオンはテーレウスの手を握り、何度もなんども願いました。
「どうか、神々にかけて、ピロメラを自分の娘のように守ってもらいたい。姉プロクネがいないだけで寂しい思いをしているのに、さらに妹ピロメラまでもいなくなっては、この老父には耐えられません。一刻も早く、ピロメラを帰らせてもらいたい。お願いします」
そして、娘ピロメラにも言い含めました。
「ピロメラよ、父を大切に思うならば、早く帰ってくるのだぞ」

ピロメラが船に乗り込み、陸がはるかに遠ざかると、蛮族トラキアの王テーレウスは、心の中で叫びました。
『俺は勝ったのだ。希望の品はすでに同じ船に乗っている。もはや彼女は我が掌中にある』

どんな運命がピロメラを待っているのか。知らない方が良かったとあなたは思うはずです。

テーレウスとピロメラ
〈テーレウスとピロメラ〉出典

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