【純愛と試練】エロースとプシュケー1
(更新日:2019.11.30)
女神アフロディーテの嫉妬から始まるギリシャ神話の「純愛」物語。ここには、愛、妬み、嫉妬心、親子愛、試練、支援、すなわち人生のすべてがあります。
エロースとプシュケー1「女神アフロディーテの嫉妬」エロースとプシュケー2「愛は疑いと一緒にはいられない!」エロースとプシュケー3「心にスキが生まれた瞬間に⁉︎」じっくり読んでみてください。
〈エロースとプシュケー〉
女神アフロディーテの嫉妬
ある国の王さまと王妃さまには、3人の美しい娘がおりました。なかでも末娘のプシュケーの美しさは、言葉では表せないほどです。
その美しさを一目見ようと、たくさんの人々がこの国にやってきました。そのため、美の女神アフロディーテの神殿を訪れる人も少なくなり、プシュケーは女神の嫉妬を買ってしまったのです。
「あのゼウス様さえ認めた『パリスの審判』で、
ヘーラーやアテーナに勝った私の名誉は、
あの人間の娘に奪われてしまうというのか!」
女神はいてもたってもいられず、息子のエロースをよんで、命じました。
「あの恥知らずなプシュケーに、
不細工な男を恋するようにしむけておくれ」
〈パリスの審判〉参照
2つの泉から湧きでる甘い水と苦い水
女神アフロディーテの庭には、2つの泉があります。
1つの泉からは甘い水が、もう1つの泉からは苦い水が湧き出てきます。エロースはそれぞれの水をカメにくんで、プシュケーのところに向かいました。
エロースはプシュケーの寝室に入ると、寝ている彼女の口に苦い水を数滴たらし、その脇腹を矢の先端でつつきました。目をさましたプシュケーはエロースの方を見つめましたが、人間の目には神の姿は見えません。
この時、プシュケーの美しさに驚いてしまったエロース。
ドギマギして、自分の矢じりで自分の胸を傷つけてしまいました。また、かぐわしい甘い水も彼女にふりかけてしまったのです。
これが、エロースとプシュケーの恋の始まりです。
プシュケーは、人間の誰とも結婚できぬ。
プシュケーの姉たちは、すでに結婚していました。が、彼女だけは女神アフロディーテの不興をかって、誰もが誉めたたえる美しさを持ちながらも、誰もが彼女にプロポーズするのをさけていました。プシュケーの両親は心配のあまり、アポローンの神託を願いました。厳しい神託が出ました。
プシュケーは、人間の誰とも結婚できぬ。
山の頂きに連れて行き、そこにおいてきなさい。
山の怪物が、彼女と結婚するであろう。
神託は絶対です。
両親は悲しみながらも、プシュケーに婚礼の衣装を着させました。彼女を山に連れていくと一人残して帰りました。
「私がお前の夫です。しかし、絶対に私を見てはいけません」
一人になると、プシュケーは悲嘆にくれましたが、山の美しさに癒やされ、落ちついてきました。しばらく崖の上からまわりを眺めていると、ゼフィロス(西風の神)が、プシュケーを持ち上げ、美しい森に連れて行きました。
その森には立派な宮殿と澄んだ泉がありました。プシュケーがその家に入っていくと、声だけの召使いが給仕をはじめました。
「女王さま、ここにあるものはすべてあなたのものです。
私たちはあなたの召使いです。何なりとお申し付けください。
お好きな時に、お食事と湯浴みをなさってください」
プシュケーは湯浴みのあと、おいしい夕食を食べ、その日は床につきました。すると、誰かが寝室に入ってきた気配がしました。優しい声がプシュケーに話しかけます。
「私がお前の夫です。しかし、絶対に私を見てはいけません」
その声に安心したプシュケーは、その声の主とともに幸せに暮らしはじめました。