アポローンの残虐 マルシュアスとの勝負
(更新日:2019.08.12)
ホメロスは『イリアス』(トロイア戦争)でアポローンをこう描写しています。
「怒れる神の肩の上では、動きにつれて矢がカラカラと鳴り、降りゆく神の姿は夜の闇の如くに見えた」と。こうして、アポローンは、ギリシャの兵士を次々に射殺した。
また、アポローンの妹アルテミスも、兄と同じように冷酷に人を殺します。
ホセ・デ・リベーラ〈マルシュアスの皮を剥ぐアポローン〉アポローンの顔を見よ!
アテーナが作った笛
サチュロスのマルシュアスは山野を散策中、アテーナが作ったアウロスというダブルリード(二本管の木管楽器)を見つけました。女神アテーナが発明した笛です。女神は笛をふく時、ほほが膨らみ変顔になるので捨てたのです。
いつしか、マルシュアスは持ち前の器用さから、この笛の名手になり、仲間のサチュロスやニンフに喝采をあびるようになりました。
自分は世界一の音楽家で、
自分の笛は、アポローンの竪琴より素晴らしい!
と、言うようにまでなっていました。
アポローンとマルシュアスの音楽勝負
マルシュアスの自慢を聞いたアポローンは激怒し、彼と音楽勝負をすることになりました。
ルールは、「勝者は敗者に何をしても構わない」
「なにをしても構わない」というのは、情欲の強いサチュロスのマルシュアスとしては、性的な意味にとりました。このことが、マルシュアスを悲劇的な結果に向かわせたのです。
サミュエル・ウッドフォード〈パルナッソス山にあるアポローンとムーサたち〉
審判はアポローンの従者のムーサたちであったので、マルシュアスにはもともと不利な勝負です。なぜなら、ムーサは、アポローンの従者と言ってもいいからです。結果は、アポローンの圧倒的な勝利でした。
しかし、この時ただ一人、マルシュアスの勝ちを主張したのが、あの『王様の耳はロバの耳』のミダス王でした。
【王様の耳はロバの耳】参照
アポローンの残虐
「何をしても構わない」
アポローンは、このルールから残酷な罰をマルシュアスに与えました。松の木に逆さに吊るすと、生きたまま皮を剥いたのです。マルシュアスは号泣し、許しを乞いましたが、アポローンは無表情のまま皮を剥いでいき、全部剥ぐと吊るしたまま放置しました。
マルシュアスは、そのまま絶命......
まわりで見ていたサチュロスの仲間やニンフは、マルシュアスの苦しみを思い、涙を流しました。大地はその涙でぬれ、泉となり、川となりました。これがフリュギアの地(トルコ中西部)で、もっとも水が澄んだマルシュアス川のできたいわれです。
アポローンと妹アルテミスの残虐行為は、こちらも参照してください。
【ニオベーの悲哀】
ジャック=ルイ・ダヴィッド〈ニオべ〉アルテミスの顔を見よ!
【ギリシャ神話の本を集めました】 | ||||