1話5分で読めるギリシャ神話

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ギリシャ神話ホームハーデース|【冥界の2人】オルフェウスの最後

【冥界の2人】オルフェウスの最後

(更新日:2022.01.23)

冥界から地上に近づいた時、オルフェウスが振り返ったため、エウリュディケーが冥界に戻ってしまったことはよく知られています。でも、その後オルフェウスがどうなったかご存知ですか? あっと驚く結末です。
また、オルフェウスには幻想的な絵画が多く、代表的な絵画はここにあげたルドンとモロー。ルドンの〈オルフェウス〉は色彩豊かでとても優しさに溢れています。モローの絵画は、まるでダ・ヴィンチのような雰囲気で描かれています。

オルフェウス
ルドン〈オルフェウス〉クリーブランド美術館

「さようなら、これが最後のお別れです...」

地上までもう少しでたどり着こうとした時、オルフェウスは冥界の王の条件を忘れ、妻が付いてきているか心配で振り返ってしまったのです。すると、エウリュディケーはたちまち後ろへ引き戻されていきました。二人は手を伸ばしましたが、もはや触れることはできません。
「さようなら、これが最後のお別れです...」

「なぜ、振り返ってしまったのか...」

オルフェウスは、7日間スティクス河のほとりで過ごしました。もう、食事も睡眠もとることはできません。毎日、彼は冥界の無慈悲さを歌にし、竪琴の調べにのせて歌いました。生き物や山々は、みな涙を流します。

酒神ディオニュソスの祭日の悲劇

そんなオルフェウスに、トラキアの娘たちは優しく声を何度もかけてきました。しかし、彼はエウリュディケー以外の女には見向きもしません。娘たちにつれない態度をとっていたのです。娘たちも、しばらくは彼の仕打ちに我慢をしていました。

ところが、酒神ディオニュソスの祭日に悲劇が起こりました。酔った娘たちは気が大きくなり、我慢の限界を超えると、とうとう興奮して叫びはじめました。

オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘
モロー〈オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘〉

「あそこに、私たちを侮辱した男がいる!」

娘たちは、手にした槍をオルフェウスに投げつけました。しかし、彼の竪琴が響くと、槍は彼の手前で落ちてしまいます。石を投げても同じです。

すると、娘たちはいっせいに大声を出して、竪琴の音を消しさりました。その瞬間、槍はオルフェウスの胸を貫きます。さらに興奮した娘たちは、彼の体を八つ裂きにして、頭と竪琴をヘブロス河に投げ入れました。竪琴の上に頭だけのオルフェウス、それでも唄い続けていたということです。

ムーサイ(学芸の女神たち)は、オルフェウスの体を集め、レイペートラに葬りました。それで、この地ではナイチンゲールがとても美しく鳴くのだそうです。また、竪琴はゼウスによって天にあげられ、琴座となりました。

ところで、オルフェウスの魂はどうなったのでしょうか?

黄泉の国に行ったオルフェウスは、エウリュディケーを探し出すとしっかり抱きしめました。もう振り返っても消えることのない彼女をいつも見つめながら、幸せに暮らしているということです。その二人の姿が、次の絵です。場所は冥界の中にあるとも言われるエーリュシオン(楽園)です。

冥府のオルフェウス
J=B.カミーユ・コロー〈冥府のオルフェウス〉

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