オルフェウスのその後
冥界から現世に近づいた時、オルフェウスが振り返ったため、エウリディケーが冥界に戻ってしまったことはよく知っていると思います。
しかし、その後オルフェウスがどうなったかご存知ですか?あっと驚く結末です。
〈オルフェウス〉には、幻想的な絵画が多いです。代表的な絵画では、ここにあげたルドンとモロー。
ルドンの絵画はモノクロの不気味な石版画が多いですが、ここにあげた〈オルフェウス〉は色彩豊かでとても優しさに溢れています。
モローの絵画は、まるでダ=ヴィンチのような雰囲気で描かれています。
ルドン〈オルフェウス〉クリーブランド美術館
「さようなら、これが最後のお別れ...」
地上まであと10メートルもないところ。
オルフェウスとエウリディケーは、おたがいに手を伸ばしました。その手はけっして触れあうことはありませんでした。
彼は急いで引き返しましたが、黄泉の国スティクス河の渡し守カローンはその願いをきいてはくれません。
「なぜ、振り返ってしまったのか......」
オルフェウスは、7日間スティクス河のほとりで過ごしました。もう、食事も睡眠もとることはできません。
オルフェウスは、冥界の無慈悲を歌にし、竪琴の音にのせて唄いました。山々や生き物はみな涙を流します。
ところで、スティクス河の渡し守カローンは最初のときとは違い、どうしてオルフェウスを舟に乗せてはくれなかったのでしょうか?
じつは、冥界の王ハーデースに、カローンは耳に栓をしているよう命じられていたのです。
モロー〈オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘〉オルセー美術館
トラキアの娘たちとディオニソス祭の日
そんなオルフェウスに、トラキアの娘たちは優しく声をかけてきました。が、彼はエウリディケー以外の女には見向きもしません。娘たちにつれない態度をとっていました。娘たちも、しばらくは彼の仕打ちに我慢をしていました。
ディオニソス(酒)の祭りの日ことです。酔った娘たちは、とうとう興奮して叫びはじめました。
「あそこに、私たちを侮辱した男がいる!」
手にした槍をオルフェウスに投げつけました。が、彼の竪琴の音に、槍は彼の手前で落ちてしまいます。石を投げても同じです。
すると、娘たちはいっせいに大声を出して、竪琴の音を消してしまいました。とうとう、槍はオルフェウスの胸を貫きました。さらに興奮した娘たちは、彼の体を八つ裂きにして、頭と竪琴をヘプロス河に投げ入れました。頭だけになっても、彼は唄っていたということです。
ムーサ(音楽の女神)たちは、オルフェウスの体を集め、レイペートラに葬ってやりました。それで、この地ではナイチンゲールがとても美しく鳴くのです。
また、竪琴はゼウスによって天にあげられ、琴座となりました。
ところで、オルフェウスの魂はどうなったのでしょうか?
死んだ彼は黄泉の国に行き、もう振り返っても消えることのないエウリディケーと幸せに暮らしているということです。その二人の姿が、次の絵です。
J=B.カミーユ・コロー〈冥府のオルフェウス〉ヒューストン美術館