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アリスタイオス、エウリュディケとオルフェウス〈アリスタイオス、エウリュディケとオルフェウス〉

ミツバチの飼育者アリスタイオス

アリスタイオスは、ミツバチの飼育を教えた人です。

ある日、彼の飼っていたミツバチが全滅してしまいました。彼は川岸に立つと、母親の水のニンフ、キュレネに助けを求めます。

「お母さん、私はこの世での誇りを奪われてしまいました。私のミツバチが全滅してしまったのです。心をこめて育てたミツバチの飼育の方法もその値打ちもなくなってしまいました。それに、お母さんもこの不幸から私を防いではくれませんでした」

河底の宮殿にいた母親は息子の声が聞こえてくると、付添いのニンフのひとりを川面に様子を見に行かせます。アリスタイオスを確認したニンフが母親に知らせると、母は彼を宮殿に連れてくるよう命じました。

河の水は二手に分かれ、渦巻く壁となって間に道をつくります。アリスタイオスはその道を通り、母の宮殿にやってくると、ニンフたちは食卓を用意。まずは海神ポセイドンヘの祈りをあげ、みんなは食事をとりました。

予言者プロテウス

母キュレネは息子にいいました。

「プロテウスという年老いた予言者がいます。ポセイドンのお気に入りで、アザラシの番をしています。この者ならば、ミツバチが全滅した理由も、その救済方法も教えてくれるはず。わたしたち水のニンフも、彼が賢人であると尊敬しています。
しかし、どんなに頼んでも、プロテウスは自分から進んで教えてくれません。

腕ずくで教えを乞いなさい。逃げられないように彼を鎖でしばって、質問しなさい。逃げたい一心から、質問に答えてくれるはずです。ただ、注意もしなさい。彼は、なんにでも変身できます。火になったり、水になったり、竜になったり、獅子になったりもします。

しかし、アリスタイオスよ、決して鎖を解いてはいけません。今からプロテウスの住む洞窟へ連れていってあげます。昼になると仕事から戻って、彼は必ずそこで昼寝をします」

母キュレネは、アリスタイオスを予言者プロテウスの洞窟に連れて行きました。彼は近くの岩陰に隠れます。

昼になると、アザラシを引き連れたプロテウスが海から現れました。彼は洞窟に入り、昼寝するために横になります。すかさず、アリスタイオスは鎖で彼を縛りあげルト、プロテウスは持ち前の術を使い、人となり、水となり、獣になったりしました。

しかし、アリスタイオスは必死で鎖をにぎりしめていました。プロテウスはあきらめて、アリスタイオスに聞きます。
「大胆な若者よ、わしに何のようだ?」

「あなたは予言者だから、私が来た理由も分かっているはずです。ミツバチがどうして全滅したか、また、その救済方法を教えてください」

エウリュディケの死の災い

予言者は厳粛な面持ちで言いました。

「おまえが、あのオルフェウスの妻エウリュディケを追いかけた時、彼女は毒蛇を踏んで足をかまれて死んでしまった。そのために、彼女の友達のニンフたちが、ミツバチに災いを送ったのだ。

災いを解くには、森の中に彼女らのために祭壇をつくり、牡牛と牝牛それぞれ四頭を生け贄にし、そのまま死骸を置いておきなさい。それから、オルフェウスとエウリュディケの供養もしなさい。九日たったら、牛の死骸に何がおこったか見に行きなさい」

アリスタイオスは、その言葉どおり実行しました。九日後、牛の死骸を調べてみると、一頭の死骸の中に多くのミツバチが巣を作って働いていたのです。

※ミツバチはこのように死骸の中や木の穴の中などに、巣を作る習性があります。