ランドン〈ダイダロスとイカロス〉
ギリシャ神話の「イカロスの墜落」を紹介します。
イカロスと父ダイダロスは、クレタ王ミノスの怒りを買い、ラビリンス(迷宮)に閉じ込められました。それからラビリンスを脱出するダイダロスとイカロス父子です。
しかし、飛ぶことに夢中になったイカロスは、太陽にどんどん近づき、イカロスの翼のロウが溶け出します。翼はバラバラになり、イカロスは墜落してしまいます。
しかし、なぜダイダロスとイカロス父子は、ミノス王の怒りを買ってしまったのでしょうか。
目次
太陽に近づき過ぎたイカロスの翼は?
クレタ王ミノスの怒りを買い、ラビリンス(迷宮)に閉じ込められたダイダロス(「巧みな工人」を意味)とイカロス父子。2人はダイダロスが造った翼をつけて、ラビリンスから飛び立ちました。
ダイダロスはたびたび振り返り、息子イカロスがちゃんとついてきているか、確かめます。
イカロスは、はじめ父についていくことが精一杯でした。しかし、しばらくすると空を飛んでいることがだんだん楽しくなってきました。そして、いつのまにか父の注意を忘れて空高く飛んでいたのです。
イカロスの翼は太陽に近づいていくと、ロウが柔らかくなり溶け始めました。羽はバラバラになり、イカロスは海に真っ逆さまに落ちていきました。
「イカロ〜ス!イカロ〜ス!」
落ちていくイカロスに気づいたダイダロスは大声を出しましたが、もはや手遅れです。
しかし、なぜダイダロスはミノス王の怒りを買ったのでしょうか?
テセウスとアリアドネのクレタ島逃亡
アテナイから怪獣ミノタウロスへの生贄として、クレタ島に差し出されたテセウス一行(7人の少年と7人の少女)。しかし、テセウスはミノタウロスを倒して、ラビリンス(迷宮)を脱出しました。
ラビリンスを脱出できたのは、ミノス王の娘アリアドネのおかげでした。アリアドネは、クレタ島に着いたテセウスに一目惚れをしていたのです。
生贄のテセウスを助けたいと一心で、知恵があるダイダロスに相談しました。そして、ダイダロスの助言を得てテセウスに「ラビリンスからの脱出法」を教えたのです。
「テセウス様、ラビリンスの入り口にこの糸の端をくくりつけてから、糸を伸ばしながら奥に入ってください。そして、ミノタウロスを倒したら、その糸をたどって出口に戻ってください」
ダイダロスとイカロスの逃亡
ラビリンスに閉じ込められるダイダロスとイカロス父子
ミノタウロスを倒したテセウスは、アリアドネや生贄の仲間を連れてクレタ島を脱出しました。
ミノス王は、不審に思いました。
「アリアドネにそんな知恵があったのか? いや、あのダイダロスが教えたのに違いない!」
こうして、ダイダロスはミノス王の不興を買い、息子イカロスとともにラビリンスに閉じ込められてしまったのです。
しかし、ダイダロスは知恵者であり、優秀な技術者です。これまでのラビリンスの設計や多くの建築・工芸によって、ミノス王の信頼を得ていたほどです。一計を案じます。
「私は、この大空から逃げてみせよう!」
ダイダロスはラビリンスの中で、さっそく翼を造り始めました。
ダイダロス、イカロスに飛び方を教える
ダイダロスは小さい鳥の羽をロウでかため、だんだんと大きな羽を糸で結わえていきました。完成した翼をつけ、羽ばたいてみました。
すると、体が宙に浮き上がりました。ダイダロスは息子イカロスにも翼をつけさせ、飛び方を教えます。
「イカロスよ。必ず中空を飛ぶのだぞ。低すぎると海の水しぶきで羽が重くなる。反対に高く飛ぶと、太陽の熱でロウが溶けてしまう。まぁ、私についてくれば安心だ」
しかし、息子イカロスは父の言葉を忘れ、墜落してしまったのでした。
ヴァン・ダイク〈ダイダロスとイカロス〉
イカロス死後のダイダロスとミノス王
イカロスが落ちた近くの島に遺体を埋めたダイダロスは、その島をイカリア(エーゲ海にある島)と名づけました。その後、ダイダロスはシケリア(イタリアのシチリア島)に行き、ここにアポロン神殿を建て、その翼を捧げました。
一方、ダイダロスに逃げられたミノス王は、怒りでモンモンとしていました。が、ついに一計を思いつきます。
「トリトン貝(巻き貝)に糸を通した者には、賞金を与えよう」
と、近隣の国に布告したのです。〈この難問を解く者はダイダロスしかいない〉と、王は確信してしまったのです。
ミノス王の確信どおり、ダイダロスの回答を得たシケリア王から連絡が入りました。その回答とは、
「貝殻の先端に穴を開け、そこに蜂蜜をぬり、糸を付けたアリをもう片方の穴から這わせて通します」
「ふふふ、してやったり」
喜んだミノス王はシケリアに乗り込み、ダイダロスの引き渡しを迫りました。
しかし、シケリア王はダイダロスを失いたくありません。そこで、風呂に入っているミノス王に熱湯をかけ、殺してしまいました。
偉大なクレタ文明を作ったミノス王の、なんともあっけない運命でした。
まとめ
ギリシャ神話の「イカロスの墜落」を紹介しました。
このギリシャ神話の物語は、英雄テセウスとミノタウロスの物語が発端です。生贄として連れてこられた彼を一目惚れしたのは、ミノス王の娘アリアドネ王女でした。
彼女がダイダロスの助言を得て、テセウスにラビリンス(迷宮)からの脱出法を教えたのです。これに怒ったミノス王は、ダイダロスを息子イカロスと共に閉じ込めました。
そして、ダイダロスは翼を造り、イカロスと共にラビリンスを飛び立ちました。結果として、イカロスは墜落してしまったのです。
→ テセウス物語 前編 父との再会とミノタウロスの生贄に志願
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