1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

【第13歌】オデュッセウス、故国イタケに帰国

(更新日:2021.04.23)

【第13歌】で、オデュッセウスの帰国がついにかないました。しかし、その労をとったパイエケス国にポセイドンは怒ります。なぜ、オデュッセウスを殺してしまわないのでしょうか?
オデュッセウスは、女神アテナに愛されているからです。そして、アテナはゼウスにこの上なく愛されています。だから、ポセイドンといえども、オデュッセウスに危害を加えることはできないのです。

パイエケス人の島から船出するオデュッセウス
クロード・ロラン〈パイエケス人の島から船出するオデュッセウス〉出典

【オデュッセイア 第13歌】

オデュッセウスの帰国

オデュッセウスはパイエケスのアルキノオス王とアレテに別れを告げると、船に乗りそのまま眠りにつきました。

夕暮れに出発した船は、明けの明星とともにイタケの島へ。
そこは、二つの岬を持つポルキュスの入江。入り江の奥に1本の大きなオリーブの樹があり、近くにはニンフの聖域の洞窟があります。洞窟への入り口は2つ。北は人間、南は神々専用になっているのです。
パイエケスの若き漕ぎ手たちは、眠ったオデュッセウスと彼へのたくさんの土産物をこのオリーブの樹の根元におろし、帰国の途につきました。
オデュッセウスはトロイア戦争に出征してから、20年経ってやっと故国イタケに帰ってきたのです。

ポセイドンの怒り、パイエケスの船を石と化す

この頃、天界ではポセイドンがセウスに苦言を呈していました。
「私の血統から出ているパイエケス人が私を敬わず、オデュッセウスを故国イタケに送り届けた。あなたがこんなに早く帰国を許すとは! まだまだ先のことと理解していたのに。こうなってはパイエケス国の周りに高山を築いて、今後は何人たりとの交流も許さぬ」

それに答えたゼウス。
「パイエケス人が帰国した折、彼らの船を石にして見せしめにすれば良い。ただ、高山で囲むことはなかろう」
ポセイドンは、ゼウスの提言に従い、パイエケスに帰国したかれらの船を、国民が見ている前で石にしてしまいました。が、高山で国を囲むことはありませんでした。

パイエケス王アルキノオスは、語りました。
「父から遠い昔に聞かされていたポセイドンの予言が、実現されてしまった。また、予言には高い山を巡らすともあった。それを避けるために、これからは、我が国を訪れた何人たりとも人間は送り届けぬことにしよう。さあ、牡牛12頭を屠り、ポセイドンに捧げよう」

パイエケス人との別れ
〈パイエケス人との別れ〉Google Cultural Institute

目覚めるオデュッセウスと女神アテナ

そんなことになっているとは、知らないオデュッセウス。目をさますと、そこがあれほど帰りたかった故郷イタケとはよく分かりません。女神アテーナが、万が一にでもペネロペイアの求婚者たちが彼を発見できぬように、周りに靄を立ち込めていたからです。
「ああ情けない、今度はどういう人間の住む国に来たのであろう。乱暴で野蛮な者たちであろうか、それとも客を親切に迎える者たちであろうか。あのままパイエケスの国に留まっていた方が良かったのであはるまいか。ところで、贈り物の財宝は全てあるだろうか。わしが眠っている間に、彼らが持ちさっているかもしれぬ」

そこへ家柄が良さそうな若い羊飼いがやってきました。オデュッセウスは彼に問います。
「友よ、わしがこの国で最初にであった人よ、どうかわしに危害を加えたりしないで、守っていただきたい。ところで、ここはどのような者たちが住む国であろうか」
「異国の方よ、この国は穀物もブドウも良く育ち、家畜を飼うにも適した場所、その名はギリシャからトロイアまで広く知られているイタケの国です」

オデュッセウスは内心大喜びしましたが、真実を隠して話しました。
「イタケの国は良く存じている。わしはクレータの出身のイドメネウスのせがれ。トロイアで得た捕獲品をオルシロコスが奪おうとしたので、彼を殺してしまった。やむなく、すぐさまフェニキア船に乗せてもらい、オリンピアの地エリスまで亡命する手はずであった。
しかし、嵐が起きたので、船は進路を外れ、やむなくここに漂着。疲れ果てていた我らは食事もとらず、そのまま寝てしまった。フェニキア人たちは善き人たちで、わしの財宝を奪わず、ここに下ろすとそのまま出港してしまったというわけだ」

似た者同士のオデュッセウスと女神アテナ

若者はにっこり笑うと、たちまち女神アテーナの姿にもどりました。
「あらゆる策略において、そなたを凌ぐ者があるとすれば、それは余程ずる賢い男に違いない。いや、神とてもそなたに太刀打ちできぬかも知れぬ。それにしても、不敵な男だな、オデュッセウスよ。
悪知恵をめぐらし、策謀に飽くことを知らぬ。自分の国に帰ってきたというのに、欺瞞や作り話をやめようともせぬ。そなたは知略と弁舌にかけては、人間界には他におらぬ。わたしは知恵と術策にかけては神々の中でも讃えられている。われらは似た者同士だな。そんなそなたでも、わたしの正体を見破ることはできなかった」
アテナは、まるで同士でもあるかのように笑みを浮かべています。
「女神よ、いかなる俊敏な者であっても、人間の身では神を見分けるのは容易なことではありません」

女神アテナが靄を晴らすと、オデュッセウスは現れたイタケの姿に喜び、大地に口づけしました。

「これからどうするのが一番良いか、二人して思案するとしよう」
アテナはオデュッセウスの妃ペネロペイアと息子ニコマコスの近況、これから起こることを説明しました。そして、決してオデュッセウスとはわからぬように、彼をボロをまとった見すぼらしい老人に変えました。
次にオデュッセウスが行うことは、かつての忠義な豚飼いエウマイオスを訪ねることと指示し、女神自身はスパルタに父の消息を尋ねに行ったオデュッセウスの息子テレマコスに会うことにしました。

オデュッセウスの漂流経路 トロイアからイタケまで
タイトル「Port Scene with the Departure of Ulysses from the Land of the Feaci」「Feaci」は?

オデュッセウスの遍歴
〈オデュッセウスの遍歴〉出典

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