三界の妃ヘーラー、アムピトリーテー、ペルセポネー

天界ゼウスの王妃〈嫉妬深い〉ヘーラー

ヘーラーには、気の毒なくらい〈嫉妬深い〉イメージがついています。ゼウスが浮気するたびに彼女は怒ります。しかし、ヘーラーの鬱憤は、ゼウスには向けられず、浮気相手やその子供に向かいます。
エウロペー、イーオーなどは、苦難の旅をさせられます。ヘラクレスは次期ミュケーナイ王の地位を約束されていましたが、ヘーラーにより、母アルメネーへの嫉妬から王座をエウリュステウスに奪われます。
また、レートーがアポローンとアルテミスを出産する時、ヘーラーは「日の光の下では、絶対に生ませてはならぬ」という命令を全世界に布告。もはや不安定な浮き島ロードス島しか、産む場所は残っていませんでした。
このように、ヘーラーには〈嫉妬深い〉イメージが付いてしまいました。ヘーラーだって、美しい乙女の時代があったのですが......
▶︎【嫉妬するヘーラーの言い分】を読む
ヘーラーとゼウス
〈トロイア戦争時、ゼウスを誘惑するヘーラー〉

海神ポセイドーン王妃アムピトリーテー

「ポセイドーンの奥さんは、誰だか知っていますか?」
と聞かれても、答えられる人は少ないと思います。3人の妃の中では、彼女は一番ギリシャ神話に登場しません。
じつは、アムピトリーテーは「トリトンの母」なのです。手塚治虫のマンガ『海のトリトン』を覚えている方は多いでしょう。でも、ギリシャ神話に出てくるトリトーンは、可愛くありません。むしろ、怪物です。
ある日、アンドロメダの母であるエチオピアの王妃カシオペアが口を滑らせました。「私やアンドロメダの美しさには、海のニンフですらかなわないでしょう!」
海のニンフたちの父は、「海の老人」ネーレウス。彼の父がポセイドーンです。だから、孫娘を侮辱されたとして、ポセイドーンは怪物ティアマトをエチオピアに送ります。
明記されていませんが、たぶんティアマトはアムピトリーテーが飼っていた怪物でしょう。ティアマトは、ゼウスの子ペルセウスにメドゥーサの首を見せられ、石にされてしまいます。
アムピトリーテーには、ポセイドーンに求婚された神話以外はありません。しかし、彼女は絵画や彫刻には多く登場しています。
▶︎【ポセイドーンとアムピトリーテー】を読む
アムピトリーテーとポセイドーン
〈アムピトリーテーとポセイドーン〉

冥界ハーデース王妃ペルセポネー

ペルセポネーはハーデースに誘拐されたこと以外はあまり出てきません。出てきたとしても、冥王の横に座っていて無言です。オルフェウスが冥界に行った時も、彼女は一言も話すことはありません。
実はペルセポネーがハーデースに誘拐されたのは、美の女神アフロディーテの嫌がらせからなのです。
女神は息子エロースに言います。
「アテーナやアルテミスは、恋にしか関心がないと私をバカにしている。豊穣の女神の娘ペルセポネーも二人をまねして...。ああ、いまいましい! ハーデースの胸に恋狂いの矢を一本射っておやり」
こうして、エロースの矢に射られたハーデースは、ペルセポネーを誘拐します。この時の母である豊穣の女神デーメーテールの苦悩の旅は、多く語られています。
しかし、やっとかなった母娘の再会の時も、ペルセポネーは母に会えた喜びを声に出していません。手を母に差し伸べている絵画はありますが、ペルセポネーがなんと言ったか記述がないのです。
ペルセポネーが、唯一怒りを表した神話が1つありました。それが、以下です。
▶︎【ミミズクに変身したアスカラポスとセイレーンの出自】を読む
オルフェウスとハデス・ペルセポネー