〈アスカラポスをミミズクに変身させるペルセポネ〉
ミミズクに変身させられるアスカラポス
大神ゼウスはデメテルが娘ペルセポネを天界に連れ戻す条件をあげました。
「冥界の食べ物を口にしていない、という条件がある。これは運命女神のとりきめで、この大神ゼウスさえどうすることもできぬ」
それでも豊饒の女神は、娘ペルセポネを冥界から連れ戻すつもりでした。しかし、それはかなわぬことでした。すでにペルセポネは、冥界のザクロの実7粒を食べていたのです。
それを見ていたのが、若者アスカラポスでした。冥界の名高い妖精オルプネと冥界の河神アケローンの子です。この若者がペルセポネがザクロの実を食べていたのを告げ口したのです。
怒っていたペルセポネが「火の河」の水をアスカラポスにふりかけると、クチバシ、羽毛が生じ、頭は大きくなり、目も丸く大きくなりました。
こうして、アスカラポスは不幸を予告する忌まわしいミミズクになったのです。
ペルセポネの元女友達セイレーン
セイレーンたちは河神アケロオスの娘。絵画では、セイレーンは若い女性の姿で描かれていますが、元来は上の絵のように、顔だけが乙女で、羽があり、全身羽毛が生えていて、鳥の足をしています。
セイレーンたちはペルセポネがハデスに略奪されたときに一緒に河辺にいました。そして、その後は彼女たちも豊饒の女神デメテルと同じように地上を探し回っていたです。
しかし、セイレーンたちはもはやペルセポネは地上にはいないと思い、今度は海を探すことにしました。そのために、波の上を飛べるように翼を願ったのです。神々はこの願いを聞き入れました。
すると、彼女たちの体には羽毛が生え、金色の翼も生えてきました。また、彼女たちは歌がうまかったので、乙女の顔と口は残されたのです。
そんなセイレーンたちが、なぜ海の怪物となったのかはわかりません。『オデュッセイア』第12歌で、彼女たちはオデュッセウスたちを誘惑します。
1年を2つに分けるユピテルの配慮
大神ゼウスは冥王ハデスと悲しみに沈んだ豊饒の女神デメテルの間を調停して、ペルセポネが半年は冥界で、半年は天界で暮らせるようにしました。
こうして、デメテルとペルセポネの母娘に明るさが戻ってきたのです。そして、世界はふたたび豊饒の女神の実りを受けられるようになりました。