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ヴィーナスの誕生ボッティチェッリ〈ヴィーナスの誕生〉

ゼウスの父であるクロノスが、自分の父ウラノスの男根を使って生まれたとされる美しい女神アフロディテ。

彼女の誕生と結ばれた相手であるヘパイストスとの結婚(まさに美女と野獣)にまつわる神話は、ギリシャ神話の奇想天外な要素と悲喜こもごものエピソードが多くあります。

湧き立つ泡からヴィーナスが誕生

ゼウスの父クロノスが、自分の父ウラノスの男根をアダマスという金属の鎌で刈り取り、大海原に投げ入れました。

落ちたところから白い泡が湧き立ち、その中から女神アフロディテ(ウェヌス:英語ヴィーナス)が誕生しました。

アフロディテは、もともと古代オリエントや小アジアの豊穣の植物神・植物を司る精霊・地母神であったと考えられています。ですから、生殖と豊穣、すなわち春の女神でもあったということです。

アフロディテは西風ゼフィロスに運ばれ、やがてキュプロス島へ。その時から、この島は女神の聖地となったのです。

アフロディテは季節の三女神(ホーライ)に美しい衣を着せられると、オリュンポスの神々の宮殿に連れられてゆきました。全ての男神はその美しさに心を奪われ、女神を妻にと望みました。

季節の三女神(ホーライ)】
ゼウスとテミスの三人の娘で、エウノミアーは秩序を、ディケーは正義を、エイレーネーは平和を司ります。

アフロディテ(ヴィーナス)の夫

アフロディテの夫ヘパイストスアフロディテの夫ヘパイストス

女神の中でも一番美しいアフロディテが、男神の中でもひときわ醜いヘパイストス(ウゥルカヌス:英語ヴァルカン)と結ばれたのです。彼は、オリュンポスの12神の一人です。

ゼウスは自分のために、ヘパイストスが一生懸命雷霆(らいてい)を鍛えあげたから、ヘパイストスをアフロディテの夫に選びました。

しかし、アフロディテとヘパイストスは、まさに美女と野獣といっていいでしょう。

ヘパイストスはゼウスと妃へラの息子で、鍛冶(かじ)と金属鋳造、火の神です。そして、オリュンポスの神々の宮殿を全てつくり上げました。

一説では、へラはゼウスが女神アテナを一人で産んだことに対抗して、一人でヘパイストスを産んだと言われています。赤子はあまりに醜く、しかも足が不自由であったため、母へラに天上から投げ捨てられました。

ヘパイストスを助けたのが海神オケアノスの娘テティス(アキレウスの母)とエウリュノメで、ヘパイストスは海底の洞窟で9年間育てられます。

『イリアス』では、テティスの頼みでアキレウスの新たな甲冑を作ります。また、スカマンドロス河の水を蒸発させて、渦に巻き込まれたアキレウスを助けます。

アフロディテ(ヴィーナス)の多くの愛人

夫が醜いことから、アフロディテに愛人には軍神アレス(マルス)をはじめ、トロイアの武将アンキセス、若いアドニスらがいます。

軍神アレス(マルス)

最大の愛人と言えるアレスは男前の戦争と戦闘の神で、その性格は荒々しく、好戦的です。一方で、アフロディテは美と愛の女神で、その優雅で魅力的な性格とは対照的です。

彼らの異なる神性が、戦争と愛の対照的な側面を象徴しているとされています。

アレスとアフロディテの有名な神話には、二人が恋におち、夫であるヘパイストスによって不倫が発覚するエピソードがあります。この愛の関係は、神話において戦争と愛の複雑なつながりを表現しているのでしょうか。

美少年アドニス

ギリシャ神話には、アドニスが狩猟中に猪に襲われ、致命傷を負って死んでしまうという悲劇的なエピソードがあります。アフロディテは彼の死に深く悲しみ、彼の血から咲いたアネモネの花が、愛と美の象徴となりました。

一説では、アドニスとアフロディテとの関係によって嫉妬したアレス(戦争の神)によって殺されたといいます。

アドニスの神話は、自然の循環や生と死のテーマを反映しており、春の再生を象徴する重要な神話の一つとされています。アドニスへの崇拝は、多くの地域で祭りや儀式として行われ、彼の美と若さに敬意を表す形となりました。

トロイアの武将アンキセス

アフロディテはイーデー山で暮らすアンキセスに一目ぼれし、恋の虜になリマした。

そして、アフロディテはアンキセスとの間にアイネイアスをもうけました。この子供がトロイアの英雄で、ローマ建国の祖となります。

トロイアが滅亡する際、アンキセスはアイネイアスに背負われてトロイアを脱出します。

アフロディテの〈ケストス〉

ケストスとはアフロディテの美しい刺繍の帯で、その帯は相手に愛情をおこさせる力を持っています。

トロイア戦争の際、ゼウスの妻ヘラがこの帯を借りて、ゼウスの心を引き止めました。ヘラはギリシャ勢に加担していたため、ゼウスの目からポセイドンや他の神々がギリシャ勢を助けるのを隠したのです。

この時、ゼウスはアキレウスの名誉のために、彼の母テティスの願いにより、一時的にトロイアを優勢にしていただけなのですが。

ゼウスとヘラ〈ケストスを身につけたヘラとゼウス〉

まとめ

アフロディテとヘパイストスの結婚は、美の女神と鍛冶の神という対照的な存在同士が結ばれるという意外性に満ちています。

また、アフロディテが持つケストスと呼ばれる美しい帯は、愛情を芽生えさせる力を秘めており、この帯がトロイア戦争のエピソードに影響を与えています。

アフロディテとヘパイストスの関係の中で、美と醜の対比、そして愛と浮気の複雑な模様がギリシャ神話のエピソードに描かれています。