〈ダフニスとクロエーの発見〉
幼子ダフニスとクロエーの発見
エーゲ海のレスボス島の町ミュティレーネー。この町から36キロ離れた資産家の荘園で、家畜の世話をしていた山羊飼いラモーン。
ある日、彼は一頭の牝山羊が育てる幼子を見つけました。立派な産衣にくるまって、上着は高価な紫染め、止め金は黄金製、象牙の柄の短刀もそばにありました。
この幼子はダフニスと名付けられ、ラモーンとその妻ミュルタレーに育てられます。
2年後、荘園の近くの羊飼いドリュアースは、群れから外れた牝羊が「ニンフの洞」にいつも通っているのに気づきました。
彼はその牝羊を群れにもどそうと洞をのぞくと、なんと牝羊は赤子に乳を飲ませていました。赤子は高価な金糸で刺繍したリボン、金箔をはった靴
黄金製の足輪などをつけていました。
赤子は女の子で、クロエー（春に萌え出た若芽）と名付けられ、ドリュアースとその妻ナペーに育てられます。
〈ラモーンとドリュアースの夢〉
ラモーンとドリュアースの夢
ダフニス15歳、クロエー13歳の時、ラモーンとドリュアースは同じ夢を見ました。
洞のニンフたちが、肩に翼のある美少年に2人を託しているのです。少年は1本の矢でふたりの体に触れると、ダフニスには山羊の世話を、クロエーには羊を世話するようにと言いつけたのです。
ラモーンとドリュアースは夢の美少年の命に従うことにし、「ニンフの洞」で生贄を捧げました。その後、ダフニスとクロエーにそれぞれ山羊と羊の飼い方を教えたのです。子供たちはは助け合い、山羊と羊を世話するようになりました。
その合間にダフニスは樫の木陰に腰をおろし、葦笛を作り吹きました。クロエーはアスフォデロスの茎で、虫かごやかごを作りました。
〈狼の落し穴〉
クロエー、ダフニスに恋をする
ある日、子持ちの牝狼があらわれ、家畜を奪っていきました。村人たちは落し穴をたくさん作りましたが、牝狼は落ちることはありません。
代わりに山羊や羊、ダフニスまでが落ちてしまったのです。クロエーが助けを呼ぶと、牛飼いがきて、クロエーが頭に巻いていた紐でダウニスをひっぱり出しました。
牛飼いに山羊をお礼に渡し、クロエーは汚れたダフニスをきれいにするため、ニンフの洞に連れていきました。衣を脱いだダフニスは、泉の水で汚れを洗いました。クロエーも洗うのを手伝います。その時、彼女にはダウニスが、とても美しく見えたのです。
次の日、クロエーはダフニスに水浴をすすめました。もう一度ダウニスの美しさを見たかったのです。クロエーは彼に恋しはじめたのです。けれでも、彼女には「恋がどういうものか」わかっていないのです。
クロエーは夜も眠れなくなりました。眠ったかと思うと飛び起き、青ざめた顔は真っ赤になっています。食事もまともに取れません。それはとても苦しいことで、羊の番もおろそかになっていきました。
ダフニスとドルコーンの恋勝負
ダフニスを助けた牛飼いは、ドルコーンといいました。彼はダフニスを助けた時から、クロエーを好きになりました。彼はクロエーとダフニスに贈り物をしました。
ドルコーンは2人と仲良くなると、ダフニスには贈り物をやめ、クロエーに新鮮なチーズ、熟したリンゴ、花輪などあげるようになりました。クロエーはドルコーンの恋心には気づかず、彼からの贈り物をダフニスに贈れるのがうれしく思っていました。
しばらくすると、ダウニスとドルコーンの間で「どちらが男前か」という口喧嘩が始まりました。クロエーが勝者を決めるのですが、そのご褒美は彼女の接吻です。
ドルコーンは主張します。
「クロエーさん、俺の方がダフニスより背が高いし、奴はチビでヒゲも生えていない。牛の方が山羊よりずっと価値があるし、それだけ俺の方が男前なんだ。ダフニスは山羊に育てられたから臭いし、色は黒いし、家は貧乏だ」
ダフニスは応えます。
「大神ゼウス様だって、山羊に育てられたんだ。山羊と変わらないパーン様だって、臭くない。色が黒いのはあの酒神ディオニュソス様だって同じ。ぼくの家には、チーズもパンもぶどう酒だってある。きみは、町の女みたいに生っ白い。接吻する時、君ならヒゲになるし、僕なら唇になる。クロエーだって、羊に育てられたが美しい」
〈ダフニス接吻するクロエー〉
ダフニス、クロエーに恋する
クロエーはダフニスに前から接吻したかったので、じっとしていられなくなり、彼に接吻しました。すると、今度はダフニスが恋に悩むようになりました。
「いったいあのクロエーの接吻は、ぼくをどうしてしまったんだろう？ くちびるは柔らかいし、ミツバチの蜜より甘い味がする。なのに、接吻がミツバチの針より痛いとはなあ。それなのに、もう一度クロエーと接吻したいと思ってしまう」
